出世する人がやっている「ラクして速く」成果を上げる方法

一生懸命働いているのに、なかなか評価してもらえない。そんな悩みや不満を抱えている人はいませんか?

PwCやマーサージャパン、アクセンチュアといった世界的な外資系コンサルティング会社で、国内外600社以上のコンサルティングを行ってきた松本利明さんは、「真面目にコツコツ一生懸命やる人は、いい人と褒められても評価はされない。実際に活躍しているのは、涼しい顔でサクサク仕事を進めている人」と断言しています。

そんな松本さんが先ごろ、『ラクして速いが一番すごい』という書籍を出版。「ラクに早く仕事をする方が、結果が出て、さらに人生の選択肢も増える」と説いています。「ラク」=手抜きをする、適当にやるという意味ではなく、力の入れどころと抜きどころを押さえ、ムダな仕事を減らすということだとか。

本書では、ムダな努力を排除し、「ラクして速い」に変える方法がさまざま紹介されています。今回はその中の一部を抜粋し、ご紹介します。

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「ムダな努力」を「ラクして速く」に変えるノウハウとは?

 著者によると、「ムダな努力」とは以下の5パターンに分類できるとのこと。

<陥りがちな“ムダな努力”のパターン>
1.一生懸命頑張るけれども、やり直しが多い
2.すべてに全力投球で、疲れ果てる
3.責任感を持ちすぎて、仕事を抱え過ぎる
4.根回しに労力と時間をかけ過ぎ、疲弊する
5.上司の指示通りにやるが、結果が伴わない

「自分に当てはまる…」と思った項目もあるのではないでしょうか?著者はこれらの「ムダな努力」を「ラクして速く」に変える具体的なノウハウを紹介しています。その中からいくつかを紹介しましょう。

8,568通り、あなたはどのタイプ?

やり直しが多い→「一発で決める」

 仕事の生産性とモチベーションを一番下げるのは「やり直し」。どんなに作業スピードを上げて、自分の責任ではないところで戻りが発生したり、チェックミスがあったりしてはたまりません。

 そのために著者は、「長い1回」ではなく「短い10回」をスピーディーに行うことを勧めています。「やり直しを防ぐには、確認やチェックの回数を増やすこと。1回の長いミーティングでは一度ひっくり返されたら終わり。それよりも、5~6分の短い打ち合わせを10回行うほうがいい」のだそうです。

「確認回数を増やすと、仕事ができないやつと思われないか?」などと心配する必要はありません。どんな上司、取引先も、「私のことを大切な存在と見てくれているか」と常に不安に思っているもの。小さなことでも報告し、確認を怠らない人のほうが信頼感が高まるのだそうです。

 その際のコツは、「一つ確認ですが」と切り出すこと。これなら仮に理解の行き違いがあっても、誰かの責任になることはありません。あくまで確認なので、違っていれば修正すればいいこと。逆に「指示通りにしましたが、これでいいでしょうか?」という声掛けは、「ミスがあったら相手の責任」という印象を与えてしまい、損です。

 そもそも短い確認ならば、作業の話に集中できるので打ち合わせも効率的に進み、トータルのミーティング時間も減らすことができます。

8,568通り、あなたはどのタイプ?

すべてに全力投球→「スパッと割り切る」

 スパッと割り切り仕事を進めるには、2つのポイントがあるのだとか。

 1つは、「仕事のツボ」を押さえる。全力投球せずに、力の入れどころと抜きどころを押さえるということです。

 もう1つは、自分の持ち味に合った価値の出し方を知ること。そうすれば、自分の得意でない仕事、誰がやっても変わらない仕事が入って来なくなるそうです。

 スパッと割り切るための具体的な方法の一つとして、著者は「やりたい仕事」は捨てて、「勝てる仕事」に注力することを勧めています。

 著者は人事・戦略コンサルタントとして、6000人以上のリーダーを選抜してきましたが、いずれのリーダーたちも「やりたい仕事」を与えられてきたわけではなかったとのこと。「最初はやりたい仕事ではなかったけれど、やってみたら楽しくてうまくいった。そしてのめり込んで仕事をしているうちに、気づいていたら出世していた」というパターン。つまり、やりたい仕事よりも、「求められる仕事」で結果を出していたのです。求められる仕事とは、すなわち「向いている仕事=自分の持ち味に沿った仕事」。だからこそ、結果がすぐに出るのです。

 では自分の持ち味をどうやって知ればいいのか?著者は、「仕事上の『ありがとうの声』を知ればいい」とアドバイスしています。

 ありがとうの声が、あなたの提供価値。仕事の中で、どんな「ありがとう」を言われているか、注意して聞いてみましょう。上司や同僚、メンバー、家族や友達など、普段接している人に聞いてみるのもいいでしょう

 そして「ありがとう」の理由がわかったら、「その『ありがとう』を言ってもらえるように働きかければいい」とのこと。

 もし「いつも速く仕事をしてくれてありがとう」が多いならば、仕事が早いことがあなたの持ち味。常に早く仕事に着手して速く提出し、「あの人は速い」という評価を広げていきましょう。そして「速くやってもらいたい時には、あの人にお願いしよう」という評価が広がれば勝ちです。「遅くても正確さが求められる」という苦手で持ち味に合わない仕事は来なくなるため、全体的な評価も上がります。

責任感を持ちすぎる→「仕事を抱え込まない」

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 単に「ラクして速く仕事を進める」だけでは、本当の意味での生産性は上がりません。やりたくない仕事や他人のノルマの不足分が回ってくることもあります。仕事の決定権を持つのは上司。NOが言いにくい日本において、仕事の総量を減らすには、「自分で工夫する」「周りに働きかける」の2軸の視点が重要だと言います。

 その際、「苦手な仕事を周りに振る」人が多いと思いますが、著者は「苦手な仕事より、得意な仕事を人に振る」ことを勧めています。

 得意な仕事は、なかなか振れないもの。「私がやったほうが早い」「得意な仕事を他人に取られなくない」という意識が働くからです。しかし、思い切って手放し、手元には「自分が得意で、かつ自分にしかできない仕事」だけを手元に残しましょう。

 ただ、その前に「本当に自分でなければできないのか」「自分でなければ質を保てないのか」をじっくり検証する必要があります。

「ほかの人でもできる~自分にしかできない」「苦手~得意」の2軸でマトリクスを作り。得意な仕事を落とし込んでみると客観視できます。

●ほかの人でもできる&苦手
 →この仕事が得意な人にやってもらう

●ほかの人でもできる&得意
 →誰でもできるので、ここは手放す。その際、仕事のコツを教えることで、周りに感謝され評判も上がる

●自分にしかできない&苦手
 →自分が苦手でも、それを得意としている人は必ずいるので手放す

●自分にしかできない&得意
 →ここに注力。この仕事を通して新しい付加価値を生み出すことで評価も上がる

根回しに労力と時間をかけ過ぎる→「組織の『壁』を利用する」

 仕事は自分一人では完結しません。自分のチームだけでも完結しません。取引先や仕入れ先、他部署などと連携して前に進めていく必要があります。

 ただ、どんな組織にも「壁」があります。部署が違えば一つ壁がありますし、ましてや取引先など他社になると、より強固な「壁」が存在します。連携を取る際、どうしても組織の「壁」が意思決定を遅らせ、仕事の生産性が落とされることもあるでしょう。しかし著者は、「できる人ほど、壁を壊すことより、『いい壁』づくりに意識を向けている」と言います。

「いい壁」とは、今の仕事に集中できるように、余計な仕事や飛び込み仕事をブロックしてくれるもののことです。

<「いい壁」の例>
●役員直轄のプロジェクトに入り、仕事が入らない「出島」状態を作り守ってもらう
●根回しを行い、他部署のキーマンを味方につけ、横やりが入らないようにする
●スタッフやメンバーを味方につけ、すぐに助けてもらえる状態にしておく

 このように自分にとって都合のいいバリアが「いい壁」。仕事が辛いと思ったときこそ、目の前の「悪い壁」を壊すことばかりに意識を向けるのではなく、安全地帯を確保し、快適にしていくことを優先すべき。「余計な仕事を弾き飛ばす」「横やりを防ぐ」「周りから喜んで支援してもらえる」環境を整備しましょう。

上司の指示通りにやる→自分で「できる」ようになる

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 上司や先輩の指示に従っても、成果が出るとは限りません。そういう状態が続くと、生産性が上がらないだけでなく、モチベーションも上がりません。
 上司や先輩が「ラクして速く」仕事をしていないならば、「頼れるのは自分のみ」なのです。

 著者は、「仕事ができる人たちには共通した“立ち居振る舞い”があり、実力より先に“できる人”という認知を作ることに成功している」と指摘します。

<できる人ならではの立ち居振る舞いを真似しよう>
●真っ先に発言する
 会議やセミナーのQ&Aで最初に話すのは勇気が要ります。特に日本人は人前で恥をかくことを嫌いますが、できる人はこれを逆手に取り、真っ先に発言します。これだけで、周りから「できる人だ」と評価されるようになります。

●姿勢を正し、はっきりした声を出す
 優秀なリーダーに猫背の人はいません。みな背筋が伸び、堂々と大きな声で話します。それだけで自信があるように見えるのでぜひ真似しましょう。

●お辞儀が一番深く、長い
 周りから尊敬される人は、誰よりも腰が低くて丁寧です。壇上では堂々と力強い姿を見せても、実際に相対すると腰が低い。このギャップが魅力につながるのです。

●リアクションが早い
 優秀で本当に忙しい方ほど、びっくりするぐらい返信やお礼のリアクションが早いもの。逆に「単に忙しがっている人」は返事が遅い。メールをもらったら、1行でもいいのですぐに返信しましょう。仕事が早くて優秀という印象を与えることができます。

●朝に強い
 優秀で仕事が早い人は、必ず朝の時間を有効に使っています。仕事の横やりが入らず、脳もフレッシュな状態なので、考え事や集中する時間にぴったりです。ポイントは、前日よりが遅くても「朝に強い」こと。日中に10~15分程度の仮眠を取る人も多いようです。

●哲学と世界史を学んでいる
 日本企業のリーダー教育に徹底的に欠けているのが「リベラルアーツ」。つまり、人が持つ必要があるとされる教養・教育です。特に哲学、世界史、自国の歴史や文化に対する知見が圧倒的に欠けているので、逆にここを押さえておけば、周りから頭二つ分は抜きんでることが可能です。

「結果につながらないムダな努力」はできるだけ排除しよう

 今回ご紹介したのは、5つの「ムダな努力」を解消するためのノウハウのうちのごく一部。本書には、1つの「ムダな努力」に対して10ほどのノウハウが紹介されています。

 例えば、やり直しが多いというムダを「一発で決める」ようにするためのノウハウとしては、「100点を目指すより60点の出来で突っ込ませる」「ロジカルに話すより、『重要なことは何ですか?』と聞く」「論理的に分析するより、逆張りで考える」など。数多くの「できる人・できない人」を見続けてきた著者ならではの実践ノウハウばかりです。

 個人の作業スピードを上げたところで生産性は上がらず、上司や関係部署、取引先といった他者とのやり取りの中で生産性は決まるもの。自身をセルフブランディングしつつ、ムダなく成果につなげる方法を習得できる1冊です。

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▲参考書籍:『ラクして速いが一番すごい』/松本利明/ダイヤモンド社

EDIT&WRITING:伊藤理子

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