退職エントリーとか古い!(あいさつ)
こんにちは、記憶力の低下にともなってガンガンにポジティブになってきているサワヤマです。いやー世間的に『退職エントリー』って流行ってますよね。あれって面白いんですけど、まあ当たり前っちゃ当たり前ですが前職の人が読んだら微妙だなと思う所もあると思うんスよね。なんで、前職がない状態で『就職エントリー』として書いたらどうなるかって感じで見切り発車してみます。
ゆーても、僕はフリーランスではありましたがエンジニアではなく編集者です。それも、スポーツ系がメインです。普通、あんま食えないと思います。実際、同じような業態でフリーやってる人はそんな多くないです(ライターさんは多い)。でもまあ、そこそこ年商(≠年収)は稼いで来ました、ぶっちゃけ。職業柄、経費がすごく多いんで所得自体はアレですが、年商を多く取ること自体は戦略をきちんと立てればそう難しくないと思います。
なので、これからフリーランスを目指そうって人に「こんな誰もしらんよーなオッサンでも、やり方工夫すれば食っていけるんだ」ってのを示せたらいいと思います。が、まあ参考になろうがなるまいが正直知ったことではありません。だってボク、5月から就職しますし(笑)。
何やってきたの?
まえがきにも書きましたが、スポーツ系の編集者です。キャリアは12年。うち会社勤めは半分ぐらいで、内訳も正社員・契約社員・常駐の業務委託とバラバラです。
ざっくり言うと、2004年2月に今や『サッカーキング』が有名な会社フロムワンさんに入社。当時はゴリゴリの出版社だったので、紙媒体の編集からキャリアを始めました。その後、携帯サイトの会社を経由してスポーツナビ、livedoorなどに所属したり(上記しましたが正社員だったりそうじゃなかったりです)、合間にフリーでライターやったり翻訳や校正やったり書籍のリライトしたり、有料メルマガを立ち上げて6年間運営したりという感じです。メディア運営の知識は一通り持ってる、と思います。
直近では2014年5月までサッカーの育成年代向けサイトの編集者をやってました。なので、会社勤めに戻るのはちょうど2年ぶりですね。
スポーツ系のフリーってどんな仕事?
ちょいちょい言われるのが「選手に会えるの?」「試合タダで見られるの?」「趣味を仕事にするって最高ですね」的なことです。まあ、そういう側面があるのは事実ですが、この仕事ってイメージと実際はだいぶギャップあります。
とにかくね、フィーが安いんですよ(苦笑)。最近こそ、それなりの額を支払ってくれる媒体も出ては来ました。しかしこの12年を振り返ると、マーケットの小ささに加えて出版不況の影響もあって、全体的には報酬は抑えめです。他ジャンルの仕事を平行して受けてきたボクは、そのギャップがよくわかります(笑)。誤解してほしくないのは、媒体側も別に悪意で低くしてるわけじゃなくて、「薄謝で申し訳ない」という姿勢です。ボク自身も、発注するときは心底そう思ってました。
それから、概ね『労働集約型』です。働いた分しかお金が入らないうえ、拘束時間は決して短くありません。
例えばJクラブを取材する番記者さんは、誤差ありますが週3回+週末の試合取材という形です。これだけで結構な拘束時間です。例えば練習取材ですが、練習場って郊外にあることが多いので自宅を7時に出て10時練習開始、12時半からコメント取り、14時ぐらいに選手・監督が全員ハケてから作業開始、16時か17時ぐらいにアップ終えるみたいなのは普通。
試合日はだいたい水曜か土日です。試合2時間前に現地着、2時間の試合を見て(試合自体は90分ですが、ハーフタイムありますから2時間です)、試合後2~3時間はコメント取りや記事執筆に費やします。自宅に戻るのは25時過ぎなんてのもザラ。拘束時間を計算すると、平日は10時間ぐらい、土日でも7~8時間ぐらいなんてこともあります。これだけで、週の総労働時間は40時間ぐらいになるかと思います。
さらに、この練習+試合取材だけで生活費を賄ってる人はほとんどいないんじゃないでしょうか。実際は、取材を通じて得た知識を様々な媒体に書き分けて収入を増やしている人が多いと思います(契約上、それができない人もいます)。
フリーランスの苦労って?
ここまでは「スポーツ系媒体で食う」特徴を書きましたが、フリーランスならではの苦労もあります。
まず、駆け出しの頃は仕事を選ぶ余裕なんてありません。独立したての頃、「オレはスポーツの仕事だけやって食っていく」と思ってましたが、割と早い段階に断念しました。前述のとおりスポーツ系のフィーは安いことが多く、それだけで食っていくボリュームを確保するのは無理でした。
さらに、名刺パワーのなさを思い知らされます。独立する前は「ぜひ取材に来てください」と言われることも珍しくなかったですが、フリーになった直後は「あんた誰」からのスタート。「●●のサワヤマです」で伝えればトントン拍子で取材アポを取れたところが、メールで取材意図から自己紹介からビッシリ書き連ねても返信が来ないことも。電話しても、地域によっては「ワシャよくわからん」とガチャ切りされた経験も何度かありました。
それなりに実績を積めば起こらないことではありますが、フリーランスは見下されることもあります。ある有名企業にMTGに行った際、自己紹介するまで「サワヤマさん」と言われたのが、フリーの名刺を渡してしばらく経つと「サワヤマくん」に謎の格下げされたことも。一応、初対面なんでくん付けはどうかと思いますが(笑)、こんな露骨なケースはまれとしても、見下されること自体はよくある話です。ボクはあんま気にしないタチなので、「そんなこともあったな」程度で振り返ってますが、過度に気にする人はフリーには向いてないかもしれません。
なんでフリー辞めるの?
直接的には、直近で仕事していた顧客との契約が切れ、そのタイミングでオファーもらったからです。ただ、その以前から「フリーでは大きな仕事はやりづらいな」と感じていたからでもあります。
やっぱりね、フリーに出す仕事って「外に出せるレベル」の仕事でもあったりするので。気楽ではありますが組織の中で大きめの予算動かして、周囲を巻き込んでグワーッとやるダイナミズムみたいなのとは違うと思います。やりがいは両方ありますが、その質が違う感はありますね。
入社する先は、WEB系のコンテンツマーケティング会社『サムライト』さんです。ボクが3月にたまたまドイツで取材をしてた時にオファーの連絡を頂戴しました。コンテンツ制作においてはまあ12年経験あるんですが、コンテンツマーケティングではまだプロではありません。様々な情報を収集し、このジャンルは伸びるなと思ったのでお世話になることを決めました。今は「3年後までに、コンテンツマーケティングのプロを自称できるレベルになる」のが目標です。
フリーランスを目指す人へ提言
上記したように、割と特殊な経歴なんでそんなアドバイスできることもないんですが、まあこれはやったほうがいいかな的なことを3つ提言します。「自前のメディアを持つ」「予想を裏切り、期待を上回る」「健康を保つ」です。1つずつ説明します。
1つ目、「自前のメディアを持つ」。上記したように『徹マガ』があったおかげで、受注に頼らなくてもある程度の収入を得られました。なので、「これはナシだなぁ」と思った仕事を断ったりできました。普通、フリーランスは全受けしないと怖いものなんですが、選択権を持てたのは精神衛生上良かったと思います(まあ、実際にそんな頻繁に交渉したり断ったりしてないんですけど)。
有料メルマガだけでなくサロンやnoteなど、今は様々な方法がありますよね。もちろん、地方でブログを炎上させて消耗しながら広告収入を得ることだって可能です(簡単とは言ってません)。あと自前メディアとして、Twitterアカウントも大事です。うまく発信できれば莫大な人数に読まれ、立派な個人メディアになります。さらに直接の収入源ではなくても、フォロワー数は発注において一定の判断材料になります。フォロワー数は、多いに越したことはないです。
2つ目、「予想を裏切り、期待を上回る」納品をし続けること。まあ、簡単なことではないです。今この原稿すら、そうなってるかは微妙です(汗)。しかし、その姿勢を持たなくなったら発注は来なくなります。ライターなら、読者に求められる水準にあることは大前提として、いかに“最初の読者”である編集者の期待を上回るか。「うお、この人の記事おもしれーな」と思ってもらえるか。数字的な結果はもちろん、目に見えない期待感みたいなのも大事です。
3つ目は、当たり前すぎて書くのもアレですが「健康であること」です。風邪をひかないよう常にマスクする、毎日アミノバイタル飲む、野菜をしっかり取る、あとはジムで筋トレをするとか。特に筋トレに関しては強く勧めたいですね。単純に、腹筋背筋を鍛えることで座り仕事が苦にならなくなりますし、代謝が上がれば勝手に脂肪が落ちます。血流が良くなればポジティブになり、失敗にクヨクヨしなくなり、納品物のクオリティに直結します。30歳を超えたフリーに関しては、筋トレをやらない理由がわからないってぐらいオススメしたいです。
まとめ
気がついたらフリーランスの厳しさメインの原稿になりましたが、フリーは気楽ですよ。満開の桜を見たいとフラッと平日に中目黒に行くことも、人が少ない平日に江ノ島に行くことも、外ごもりと称して那覇に一週間行くことも自由です。これ全部、ボクが最近やったことです(笑)。
その代わり、それが原因で仕事が飛んだりトラブルが起こっても自己責任です。すべての行動はリスクと隣り合わせです。それが楽しいと感じられるかは、もはや好みでしょうね。「うへぇ」って思った人は会社勤めを続けるほうが無難と思います。
ただ、会社員とフリーランスそれぞれ6年ずつぐらい続けた人間としていうと、双方に優劣はないと思うんですよ。「大きめの仕事をしたい」と思ったら会社員になればいいし、「気楽に働きたい」って思うならフリーランスを選べばいい。「フリーランスで一本立ちしてるのはすごい」って言われるのは悪い気はしませんが(笑)、ボクからすれば同じ勤務先で10何年もずっと勤めてる人のほうがはるかにすごいです。ボクには到底できないことです。
まとめると「フリーランスって厳しいけど気楽ですよ、でも別に会社員と比べて偉いわけでもないっすよ」ってことでしょうか。結局、プライオリティをどこに置くかだと思います。そこをハッキリしたうえでフリーランスを選択するなら、どんな状況にあっても自分の責任として受け入れられるのではないかと思います。
真面目か!って感じのまとめですが、まあ参考にならなくても知ったこっちゃありません←ご清聴ありがとうございました。
文:サワヤマダイスケ(澤山大輔)
1978年12月生まれ、編集者。フロムワン(サッカーキング運営会社)、スポーツナビ、livedoorなどを経て独立。空手有段者、中学はバスケ。15歳の時、三浦知良のセリエA挑戦をきっかけにサッカーに鞍替え、未経験者にもかかわらず書籍十数冊に関わったり、編集・プロデュースした記事がヤフートップを何回か飾ったりした。「必死より必殺」をテーマにコンテンツ展開を行なう。最新の訳書「Mourinho ジョゼ・モウリーニョ自伝 」(東邦出版)が発売中。Twitter:@diceK_sawayama
モデル:後藤ティファニー