チャンスはたくさん? 東南アジアで働ける日本人とは

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私は「海外就職研究家」という謎の肩書きを名乗り、2011年ごろから海外、特に「東南アジアで働く方法」について調べています。フィリピンやカンボジアに在住しながら、海外で働く方法を調査したり、海外で働きたい人をサポートしたり……現在はカンボジアにカレー屋を作り、そこで海外に人材を送り出す日本人向けの研修プログラムを実施しています。

今回は、海外で働く日本人300人以上のインタビューや、海外で働きたい大学生・社会人100人以上の研修プログラムを行った結果分かった、海外〈主に東南アジア〉で働くことに向いている人材の傾向をお伝えします。

東南アジアで働く方法

2015年現在、海外で働く方法は多岐にわたっています。例えば「日本の会社に入り駐在員として海外を目指す方法」や、「自分で海外に渡航して現地で仕事を探す方法」です。どちらもサポートは充実しており、誰でも挑戦できる選択肢となっています。

駐在員を目指すのであれば、海外進出に積極的でありながらも社内に海外勤務を希望する人が少ないB to B企業(自動車部品会社など)に入ることが近道です。いわゆる大企業は海外勤務を目的に入社する人も多いので、海外の道が限られてしまいます。また、現地採用を目指す場合は、東南アジア各地に日系の人材会社がたくさんありますし、海外進出している現地法人のリストなどもネットで公開されているので、直接アタックすることもできます。

このように海外で働くためのサポートはここ5年で格段に充実してきており、特に東南アジアならどの国でもやる気と行動力さえあればチャレンジができるようになりました。しかし、必ずしも全ての人が海外勤務に向いているというわけではありません。明らかに向き不向きがあり、それは日本で働くのとは違った適性が存在します。

その適性はどんなものなのでしょうか? 私が調査を進める上で分かった、東南アジアで働ける日本人が「心技体で必須な9項目」を紹介します。

心〈精神面〉における3つの適性

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海外で働くことに向いている人の精神面での適性項目は、「積極性」「能動性」「折れない心」の3点です。

海外で仕事をする上で、日本の大企業との一番大きな違いは「前例がないこと」です。多くの場合、海外での事業は初めてのことだらけです。また、成長著しい東南アジアでは日々変化が起きているため、過去に事例があったとしても陳腐化して役に立たないことが多いのです。

そのときに大切なのは「積極的に新しい事を試してみること」、そして「自分で仕事を創り実行すること」です。そうやって実行する新しい事は、初めてやることなのでかなりの確率で失敗を繰り返します。しかし、失敗してもめげずに分析し、次の新しいやり方を考えなくてはなりません。日本の大企業では失敗をしないことが重視されますが、海外で働くときは失敗を避けて通ることができません。行動→失敗→反省→行動→失敗を繰り返すことができる人が海外勤務に向いています。

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例えば、私がカンボジアでカレー屋を始めた当初、“無料”でカンボジアの人たちに試食してもらいました。そのときは「美味しい」「食べたい!」と言ってくれたのですが、いざオープンしたら全然お客さんが来ない……。優しい・シャイ・新しい物を試すのが苦手という国民性から「あのときの笑顔はお世辞だった」と気付いたのは、開店一週間後でした。

じゃあどうする? ここからが、腕の見せ所です。ジャパニーズスタイルのカレーライスが「見たことがない食べ物だから」という理由で受け入れてもらえないのであれば、彼らが見たことがある食べ物に見た目を変える必要があります。街を見ていると、カンボジアの人たちはフランスパンに野菜や肉を挟んだ物を食べています(元フランスの植民地であるため、フランスパンが美味しいのです)。

「じゃあカレーもパンに挟めば、ビジュアル的に受け入れてもらえるのではないか?」

そこからサムライカレーパンというパンを開発し、1日に720本売れるヒット商品を作り上げることができたのです。カンボジアで日本のカレーを売っている人なんてほとんどいません。当初はフランスパンにカレーを挟んだカレーパンが当たるか外れるかなんて全く分からなかったのですが、「まずは積極的に売ってみる」「待っていてもお客さんは来ないから新しい事を試してみる」「失敗しても諦めない」という精神で動いたからこそ、成功を手に入れることができたわけです。

技〈業務スキル〉における3つの適性

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海外でも国内でも、その業務に関するスキルがあることは働く上で前提条件となります。例えば、自動車メーカーの工場で生産管理をするのであれば、自動車の製造に関する知識や生産管理、品質管理に関する知識が必要なのは当然です。また、英語での業務が必要であればある程度の語学力も求められます。これをクリアした上で、汎用的に必要な適性が「コミュニケーション力」「リーダーシップ」「決定力」の3つです。

まず、外国人とコミュニケーションをとるというのは語学だけではないスキルが必要になります。外国人スタッフと話をしていると、言語的には意思疎通ができていても「えっ? そんな捉え方をするの?」「そこから説明しなきゃいけないの?」と思うことが多々あります。そんなときに「だから外国人は……」とか「日本だったら……」と言ってしまうと、コミュニケーションは止まってしまいます。「自分と相手は前提となる常識が違う」という考えのもと、コミュニケーションを成立させる必要があります。

そして、東南アジアで日本人が働く場合は、管理職としてのポジションを期待されることが多いです。そこで必要となるのがリーダーシップと決定力です。日本と東南アジアの一番の違いは、末端の社員の優秀さや積極性です。東南アジアはマネジャークラスだと日本人以上に優秀な人も数多くいますが、大多数の一般スタッフは一筋縄では働いてくれません。遅刻や欠勤は日常ですし、指示通りに動いてくれる率も低いです(頼んでもやらないことも、逆に頼んでいないことをやってくれることもあります)。そんな中で、どのように指示を出し、業務をやってもらうかが腕の見せ所です。また、日本のように、なあなあの会議で何となく結論が出て動いていくということも少ないので、リーダーがやることをきちんと決定し、実行させていく管理も必要になります。

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例えば、東南アジアの人の特徴に「不要な創意工夫をしてしまう」ということがあります。お店ではカンボジアの人にカレーを作ってもらっているのですが、「この方が美味しいから」と言って、勝手にスパイスの分量などを変えてどんどん違う味にしてしまうことがありました。悪気があるどころか、やる気があり、お店を良くしよう! という気持ちの表れでこういうことをしてくれるので非常にやっかいです。

これを表立って叱ってしまうと、スタッフは心が折れて辞めてしまいます(心が折れるのも辞めるのも早いのです)。そこで、まずは「お店のために工夫してくれてありがとう」と感謝を伝え、そして「ただし、お客さんは昨日と同じ味のものが欲しいと思っているんだよ」と説明します。さらに、「いい変化なら別のメニューとして出すから、今後は新しい味付けを考えたら、まずは我々に食べさせてくれ」と明確なルールを伝えます。こんなふうに、相手の行為を尊重しつつもこちらの意向を伝えて管理していく、という粘り強いコミュニケーションとリーダーシップを発揮していくことが大切なのです。

体〈体力〉における3つの適性

実は、海外勤務で一番問題になる適性が「体力」と「精神力」です。

脂っこい食事や、暑さやほこりっぽさ。衛生状況の悪さや、空気や水や虫に起因する体調不良など、多くの日本人が健康面で悩まされています。こればっかりは個人の力ではどうしようもないところもあります。海外で頑張りたいけどジャカルタに来たらぜんそくの発作が起こってしまった、北京でシャワーを浴びたらじんましんが出たなど、世界屈指の清潔な国で育ってきた我々には、確率論でこのような健康問題が起こってしまいます。完治する場合もありますが、一度行ってみて健康に不安がある場合は、渡航先を変えた方がいいかもしれません。

また、健康問題と同じ確率で起こるのが精神的な不調です。慣れない環境、伝わらない言葉、日本からのプレッシャー……さまざまな要因が精神をむしばんでいきます。つまり、どうやっても避けることができない精神的なダメージに対して、どれだけ耐えられるかのタフネスの問題です。ボクシングで例えると、「心」における各適性が“パンチを避ける技術”であれば、「精神力」という適性は“パンチを被弾しても倒れない体力”のことです。

これは先天的なものも大きいのですが、何度も打たれ慣れてくると、段々とタフになってきます。とんでもない問題が起こったときも、まずは一息ついて「これは大変なことになったぞ」と他人事のようにつぶやき、そして悠然と対策を考えられるようになれば海外で働ける精神力を身に付けたといえます。

そして、この体力と精神力の不足を補うために必要な適性が3つ目の「休息力」です。仕事は仕事と割り切り、積極的に休んでリフレッシュすること。責任感が強い日本人が苦手なことですが、それでも休むスキルを身につけることは大切です。

最後に

さて、このような心技体9項目の中で、あなたが自信のある項目はどれくらいありましたか? 1つや2つ自信がない項目があったとしても問題ありません。私も全てがパーフェクトにそろった人など見たことがありません。

でも、自分が苦手だなと思うことを克服するために新たな仕事に挑戦してみたり、大丈夫かな? と思う項目を試すために海外に行ってみたりということを実行してみてください。悩んでないでやってみる。その積極性と能動性が、海外で働く人に一番必要な適性なのですから!

著者:森山たつを (もりぞお)

森山たつを

アジアを中心とした海外現地採用就職について研究する海外就職研究家。その内容を『もりぞお世界で生きる研究所』で発信中。また海外で活躍したい若者を育成する研修プログラム『サムライカレープロジェクト』や 、海外駐在員候補者の中から適性のある人材を選び出す『実践!グローバル人材選抜プログラム』などを企画し、海外で活動する人を支援する。

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