【キーワードは“大家族”】国際結婚カップルが提案する“子育てもシェア”オフィスの中身がスゴイ

オフィスや打ち合わせスペースなどを共有しながら、フリーアドレスで独立して仕事を行える環境が人気を呼び、都心を中心に増え続けているコワーキングスペース。スタートアップの経営者やフリーランサーのみならず、最近では静かな環境で集中して仕事をしたり、職場以外の環境で交流の輪を広げたいという会社員がセカンドオフィスとして利用するケースも増えてきている。街づくりや社会起業目的など、コンセプチュアルなシェアオフィスが次々と生まれる中、今月「子育てのシェア」を提案する新たなシェアオフィス『Ryozan Park 大塚』がオープンした。

運営するのは、アメリカの大学院を卒業後、ローカル新聞の記者として活躍していた竹沢徳剛(のりたか)さんと、NHK Worldでレポーターを務めてきたスコットランド出身のレイチェルさんご夫妻。2011年、震災を機に帰国した徳剛さんは、パートナーであるレイチェルさんと出会い、生まれ育った巣鴨に、ジムや図書館、バー、多目的スペースなどを完備するラグジュアリーなシェアハウス『Ryozan Park 巣鴨』(以下、RZP巣鴨)をオープンさせた。

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シェアハウスのRZP巣鴨をオープンした当初は、住民同士の交流を図るため、二人が率先してイベントや食事会を計画することが多かったが、住民同士が打ち解けると、自発的にイベントを手がけるようになった。同じ建物内に暮らす徳剛さんのご両親と住民の仲もよく、徳剛さんのお母さんが揚げたから揚げを皆で食べたり、誰かが風邪を引いたら、別の部屋の住民が薬を買ってきたり、おかゆを作ったりする、大家族的なコミュニティがいつのまにか形成されるように。

「RZP巣鴨の住民は、皆、何事にも熱心で、アクティブな人ばかり。自分が口にして『おいしい』と思ったら、ほかの人にも食べさせてあげたい、誰かが何かに困っていたら『どうしたの』と声をかけるといったことが自発的に行われています。自分がよいと思うことを他人とシェアすると、その価値が2倍、3倍となって返ってくることを知っている人ばかりです」と徳剛さん。

その結果、3組ものカップルが誕生。RZP巣鴨を卒業した元住民らも、すぐ近所に住居を構えるケースが多く、「ならば、子育ても仕事もシェアしていこう!」と盛り上がり、今回オープンした『Ryozan Park 大塚』(以下、RZP大塚)の実現に至ったそうだ。ちなみに、シェアハウスのRZP巣鴨とシェアオフィスのRZP大塚は徒歩圏内にある。

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その成り立ちもユニークなら、元新聞記者と元テレビレポーターのカップルらしく、アイデアの抽出方法もウイットに富んでいる。通常なら、専門業者に委託するところ、二人は、政治家、新聞記者、近所の子どもなど、約60人の友人知人に集まってもらい、「自分ならどんなシェアオフィスを使いたいか」を紙に自由に描いてもらうワークショップを行った。そこで生まれたさまざまなアイデアが、RZP大塚にはふんだんに盛り込まれているという。

「ダイバシティの本来の意味は、人種や性別、年齢、立場などに関係なく、同じ価値を共有すること。価値を共有できる人々が集まり、コラボレーションして、また新たな価値を創出できる環境を整えた」という、個性ある3つのフロアに分かれたRZP大塚の特徴を順に見てみよう。

【RZP大塚のフロア構成】

5階『FOCUS』:2名~6名が利用可能な12室のオフィススペース

6階『CORE』:間仕切りのない166㎡のフリーアドレス形式のオフィス

7階『FAMILY』:子どもが隣室のキッズルームでスタッフと遊んでいる間に、親が安心して仕事ができるオフィススペース

“ママ”ではなく、“親”がキーワード

7階のキッズスペース付コワーキングスペースは、ママだけではなく、パパもくつろげるように、シンプルなインテリアで品よくまとめられている。

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日頃、子育てなどについて話す機会のないイクメン同士が週末に集まり、ビール片手に育児談義をしている間、ママたちは外へ羽を伸ばしに出かけられるような、パパたちのコミュニティ作りにも貢献したいとレイチェルさん。同フロアには掘りごたつ付畳スペースとセットになった、子どもたちとの対話をも考慮した対面式のキッチンがあり、自由に料理をして、複数の家族が交流をもてるスペースとなっている。

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大人も楽しい、子どもも楽しい

託児所と同施設のキッズスペース『こそだてビレッジ』の大きな違いは、託児所のように子どもを預けて外へ働きに行くのではなく、隣室で遊ぶ子どもを遊ばせながら、自分も隣のスペースで仕事をするというスタイルであり、あくまで親の自己責任で子どもたちを見ることだ。ただし、家とは違い、キッズスペースで保育士やほかの子どもたちに囲まれながら自発的に遊ぶ我が子を窓越しに眺めつつ、親は親で集中して仕事ができる環境が整っている。親子ともども、やりたいことを互いに我慢しあわなくていいのが大きな魅力だ。

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こそだてビレッジは、合同会社こどもみらい探求社がプロデュース。子どもたちが遊びながら探求心を養える玩具などを取り揃え、光や色を使い、子どもたちが自分で探求して、その世界を楽しめるような空間づくりがされている。また、子育てと働き方に悩む親たちに、働き方のサポートも行う。将来的には、遊びながら自然と英語を学べるバイリンガル教育にも力を入れていく予定だ。

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さまざまな姿勢でくつろげる

一般的にシェアオフィスといえば、しきりのあるスペースに机と椅子のみが置かれているイメージだが、RZP大塚は、立ったり座ったり、時にはうたた寝したりと、まるで自宅にいるようにさまざまな姿勢で仕事ができる環境が整えられている。

6階は通常の高さの机から、立ちながらでも仕事ができる高さの長机、横たわりたいときに使えるソファ、ちょっとしたミーティングにも使えるダイニングテーブルなどが置かれている。レイチェルさんの出身であるスコットランド調のインテリアで品よくまとめられており、高級感がある。

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また、7階は、横たわることのできる授乳スペースや、ベッドソファ、幼児用の洗面台やトイレなど、子どもと一緒にくつろげる空間づくりが特徴だ。

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コミュニティやコラボレーションを創出しやすい環境作り

屋上にはバーベキュースペースがあり、今後、ここで菜園をつくり、利用者らと一緒に野菜やハーブなども育てていく。

今後の展開として、日頃、なかなか時間の作れないビジネスパーソンたちのために、出張ネイリストや出張マッサージに来てもらうことも構想中なのだそう。

f:id:w_yuko:20141215083234j:plain 12室のオフィススペースとなっている5階のうち、一室はミーティングルームとして6階利用者も使用することが可能。フロアの真ん中は、違う部屋の利用者同士が交流できるようにテーブルが置かれている。

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レイチェルさんの出身は、スコットランドの人口約2000人程度の小さな村で、町中が顔見知りで通りすがりに挨拶を交わすという環境だった。9年前に東京へ来てからは、そういった機会もめっきり減り、子育てを協力しあえる環境とは言いがたい日本で子どもを産むことに以前は不安を感じていたという。けれど、徳剛さんやご両親、“困ったときはお互いさま”と言い合えるRZPの仲間に出会えてからは、「大家族」のような居心地のよさを感じている。RZPは、ハイエンドなセンスが光る外観となっている一方で、巣鴨や大塚特有の人情味が大きな魅力となっているのだ。

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「私たちは本気で東京に村を作りたいと思っているんです。外はクール、中は人情味あふれる、平成版のNAGAYAを構築していきたい」と徳剛さん。

人情味・国際性・ダイバシティを兼ね備えたコワーキングスペースで、今後どのような新ビジネスが生まれていくのか。期待は膨らむばかりだ。

取材・文・撮影山葵夕子  画像提供:Ryozan Park

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