自分の中で変化を生み出すことが、転職だ

大手ユーザー系SIerから中小企業の卸会社に転職して、ひとり情報システム部をやっている“ござ先輩”と申します。今回は、私自身のキャリアを振り返って、転職がどうあるべきかを、改めて考えます。

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私は人生で一度しか転職しておらず、おそらく30代エンジニアとしてはかなり少ないほうでしょう。20代は充実して過ごすことができましたが、30代になって「転職」という言葉が頭をよぎるようになりました。プロジェクトマネージャーから社内の管理職というキャリアパスが、魅力的に思えなくなったからです。

会社のビジネスモデル上、年次を重ねるとなかなか「現場」に出ることができない。しかし、できればITを使って新しい仕組みを作り出し、ビジネスの成長に寄与したい。ITシステムで組織が動いていくことに関わりたい。そんな思いがあり、縁あって現職の雑貨卸販売の会社に、唯一のエンジニアとして入社しました。3年ほど前のことです。

転職先での初仕事は、自分で仕事を生み出すこと

転職してみて一番困ったことが、私の仕事として「これ」というふうに決まった内容が不明確なことでした。経営に話を聞くと、ITでより良くなるポイントはいくつかあるけど、誰もそのITをどう使っていいのかわからない。会社にITのビジョンがありませんでした。

ITで解決できる経営課題を共有する

このままでは立場がありませんので、経営者と膝を交えて話し合い、一番困ってることを詳しく聞かせてもらいました。その結果、「外部倉庫とのやりとりをWeb化し、営業担当者がその在庫を携帯でも確認できるようにして、売り逃しや、売り時期を逸することをなくしたい」という経営課題が共有できたのです。さっそく、これを解決するシステムを1人で組みはじめました。

外注したらよいのではと思われるかもしれませんが、即時に改善・改良できることが最優先だったので、内製がベストでした。ソースコードが管理できていないとシステムに使われる、という側面もあります。業務と業務をつなぐようなシステムは、改善の速さが大切です。

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現場と目線を合わせて改善要望を汲み取る

システムそのものは1人でもサクっとできましたが、難しかったのが改善要望の実装です。ユーザーがこのシステムで何を判断したいのか、というニーズがうまく汲み取れず、経営や現場とぶつかりました。「求めているものと違う」と。

そこで、私もそのシステムを使って仕事をするというシンプルな方法を取り、「やりたいこと」と「必要な機能」のギャップを肌で感じるようにしました。ときには、いちから作り直したこともありました。

求めている機能が実装されると、経営や現場にも「私に何ができるのか」という知識がついてきます。そのため、さまざまな要望が出るようになり、さらにより多くの営業活動を支えることができるようになりました。

業務改善という仕事を担当している私には、明確な「これ」という仕事はありません。既存のシステムを運用しつつ、「次は何を解決すれば会社の能力がアップするのか?」を頭の片隅に入れ、会社を俯瞰的に見ながら、自分で仕事を作り出していくことの重要性を学びました。

利益の出るITを作る戦い ―― Webで顧客を作ろう

システムの改善を重ね、成長を感じていた、そんなある日のことです。

「便利にはなったけども、利益を生み出すようなシステムではないよな……」

そう、経営者が呟きました。

経営が言わんとしていることは、社内業務の改善で利便性が向上して、コストが下がることは実感できた。次には、売上を作るためにITを使うことができないものか、ということです。

売上を作るには、顧客を作ればいい。そう考えて、会社概要のみを掲載していた自社のWebサイトをWordPressでリニューアルし、顧客の目を引くサイトにしようと決めました。雑貨卸ではWebサイトをキッチリと作っている会社が少なく、チャンスでもありました。

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難関のデザインを独習しながらのオープン

リニューアルにあたり、一番の課題がデザインでした。素材を作れなかったのです。ソースコードはいくらでもサンプルがあって学習できるのですが、デザインにはそういうサンプルがありません。似たような素材を見よう見まねで作るのですが、実際にHTMLにすると「のっぺり」としてダサい。素材を作ることがこんなにも難しいとは思ってもみませんでした。

自分1人の知識では作れないので、有料の素材集をしこたま買い込みました。付属のDVDを見つつ、Photoshopのどの機能を使っているのかを勉強し、「こうやって影をつけるのか」といった知識をつけていきました。そして画像加工の技術とレイアウトデザインを独習しながらサイト構築を進め、オープンすることができました。

検索に引っかかるまで時間もかかりましたが、今では毎月必ず新規顧客から取引の申込みがあります。また、私のサイトを見た同業他社からもコーポレートサイト作成の依頼が何件かあり、取引先や顧客との関係がより深くなりました。

「出来なかったことが出来た」ことで壁を超える

これで、私は「自分の出来ないことを形に出来た」という自信がつきました。まったく門外漢だったWebサイトのデザインが実現できた経験で壁を超えた私は、未知の技術に対してとても前向きになりました。

「出来ないことが出来るようになると嬉しい。がんばろう」と思えるようになったからです。チャレンジすることを楽しめるようになりました。「利益を生み出すようなシステムではない」という、経営者の愚痴にはたいへん感謝しています(笑)

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今では、Webサイト経由の顧客開拓だけでなく、新しくメーカーロットのない卸売のサービスを提供しています。詳細は割愛しますが、これによって雑貨卸事業で安定した利益を残すことができるようになりました。

こういった成果を、経済産業省が実施している「中小企業IT経営力大賞2014」に応募したところ、「IT経営実践認定企業」に選出されました(※)。転職してからの業務改善によって、社員数が10名にも満たない弊社が、数百人規模の会社にまじって認定していただくことになったのです。

転職とは自分の中で変化を生み出すこと

今の会社に移ってからを振り返ってみると、仕事を作り出していくという意識の変化と、自分自身のスキルにも変化を生み出すこと。この両輪が重なって、所属組織にも貢献でき、自分のスキルも向上したと感じています。

転職とは、所属する会社を変えることだけを指すのではありません。自分の中で変化を生み出すことです。そして、それはキャリアを切り開く絶対条件ではないかと考えています。特にITエンジニアは時代の変化と共にスキルセットが陳腐化しないような努力を求められます。

変化を生み出したいなら「振り切れる所まで一方向に邁進する」ことが大切です。下手な自分を棚上げしてどんどんアウトプットをしていくこと。下手な自分に落ち込んで踏み出さないでいたら、できないことができるようにはなりません。チェンジを図るのですから、できないことにぶつかるのは当たり前です。

自ら変化を起こしていかなければ、状況の変化には対応できない

長年やっていれば、誰でもそれなりの技術は習得できます。しかし、確立された仕事のやり方を教えられ、そのままやり続けてしまうと、いずれ動けなくなってしまいます。

自分で考え出していく、つまり内側からの変化を普段から起こしていかなければ、外側から変化が起こった際に、どう対応してよいか分からなくなってしまいます。これは怖いことだと思いませんか?

あなたはどんな変化を起こして、仕事を楽しんでいきたいと思いますか? 仕事に悩んだり、違う環境に進みたいときには、そこから考えてみてください。

著者:ござ先輩 (id:gothedistance)

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1979年生まれ。ISPの電話サポートのアルバイトをきっかけにIT技術に興味を持ち、2003年にアイ・ティ・フロンティアに新卒で入社。SIer在籍期間からブログで「ITを使いこなしたいなら、ユーザー企業は内製すべき」と発言し、気が付けば内製化を1人で担当することに。現在は、雑貨卸のエフ・ケーコーポレーションのIT担当兼野球大好きブロガー。ブログ「GoTheDistance」でも、エンジニアのキャリアについて定期的に論考しています。

ITを使った攻めの経営戦略「中小企業IT経営力大賞2014」受賞者を決定しました(METI/経済産業省) を参照

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