夫婦で「ホメ合う」と“スーパーサイヤ人”になれるワケ――山口拓朗の「夫婦円満法」

今年で結婚20年目。2度の離婚危機を乗り越えて、今ではお互いが相手を認めて応援し合い、それぞれのビジネスを発展させている山口拓朗さん、朋子さんご夫婦。拓朗さんは文章の専門家として、これまでに著書を10冊以上出版。奥様の朋子さんは主婦の起業を支援するオンラインスクール「彩塾」の塾長として、これまでに600名以上の門下生を輩出。2016年から夫婦そろって中国での講演をスタートさせるほか、「夫婦コミュニケーション」をテーマにした講演活動にも力を入れています。

そんな山口拓朗さんが自身の経験から編み出した「夫婦円満法」を公開するこのコーナー。第3回は「夫婦でホメ合うとスーパーサイヤ人になれるワケ」です。

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「自己重要感」ってイッタイ何?

「自己重要感」という言葉を聞いたことはありますか?

心理学やココロの勉強をしていくと、何かしらの形で必ずたどり着くワードです。

「自己重要感」というのは、ざっくりいうと「(無条件に)自分は愛されている」「(無条件で)自分には価値がある」と感じるココロのバロメーターのようなものです。

【自己重要感の高い人が感じていること】

◆(無条件に)自分は愛されている

◆(無条件で)自分には価値がある

【自己重要感の低い人が感じていること】

◆自分は愛されていない

◆自分には価値がない

◆何かしらの条件がなければ、自分は愛されない

◆何かしらの条件がなければ、自分には価値がない

※条件の例:相手に尽くさなければ、自分は愛されない/学歴がなければ、自分には価値がない——など。

ひとつ極端な例を挙げましょう。セールスパーソンであるあなたが、なかなか成果を出せなかったとします。そのときに落ち込みやすいのは“自己重要感が低い人”で、ビクともしないのは“自己重要感が高い人”です。

なぜ、“自己重要感が高い人”は、ビクともしないのでしょうか?理由は先ほど述べたとおりです。彼らは「(無条件に)自分は愛されている」「(無条件で)自分には価値がある」と感じているからです。「無条件」ですので、状況や環境や結果に左右されることがありません。彼ら彼女らは、自分の力で、たくましく人生を切り開いていくことができます。したがって、社会的にも成功しやすいのです。

一方、“自己重要感が低い人”は、成果を出せなかったことで「やっぱり自分には価値がない」と、より強い自己否定のモードに入ります。それどころか、仮に結果を出したとしても、心の底ではモヤモヤした気持ちを引きずり続けているケースも少なくありません。「結果は出たけど、もっといい結果を出すことができたのではないか?」と考えたり、「この先、結果が落ちたら、自分はダメになるのではないか?」と不安を抱いたりするのです。

8,568通り、あなたはどのタイプ?

自己重要感の高低が、人生に与える影響は大きい

自己重要感の高低は、これまで生きてきた人生のなかでも、とくに幼少期の体験によって決まることが多いようです。たとえば、親からいつも「お前はダメだ!」と否定的な言葉を受けたり、「生まれてこなければよかったのに!」と罵倒されたりしてきた場合、子どもは「自分は愛されていない」「自分は生きている価値がない」「自分は誰からも必要とされていない」などと思ってしまうのです。そうしたトラウマや絶望感を引きずったまま大人になる人も少なからずいます。

皮肉なもので、“自己重要感が低い人”には、誰かに愛されよう、認められようとして、必要以上に頑張りすぎたり、自分を大きく見せたり、他者を攻撃したりする傾向があります。誰かにかまってもらうために、わざと引きこもったり、毒づいたりする人もいます。いずれの行為も、低い自己重要感を、なんとか埋めよう(ごまかそう)とするためのものです。ところが、こうした行為によって瞬間的にココロが満たされたとしても、時間の経過や状況の変化によって、またいつもの“自己重要感の低い”状態に戻っていきます。

一方、“自己重要感の高い人”は、いつでも前向きかつ建設的です。チャレンジ精神も旺盛で、失敗も恐れません。たとえ失敗をしたとしても、次にまた頑張ればいい、と考えます。間違っても、「自分は愛されていない」「自分には生きている価値がない」「自分は誰からも必要とされていない」などと自己否定することはありません。あったとしても、それは瞬間的で、すぐにまた本来の“自己肯定感の高い”状態に戻ることができます。「今のままの自分でOK」と思っているので(実感しているので)、必要以上に自分をよく見せることも、他人を見下すこともありません。

このように、社会的・経済的に成功するうえでも、健康的で幸せな人生を送るうえでも、「自己重要感」の高低は、非常に大きな意味をもつのです。

8,568通り、あなたはどのタイプ?

倦怠期が招く「自己重要感の危機的状態」

さて、結婚した男女の多くが、しばしの幸せライフを経て、何かしらの壁にぶつかります。いわゆる「倦怠期」に突入します。相手の嫌な点ばかりが目につき、さまざまな“戦い”に身を投じるようになります。相手のことを口撃し合う“ゲリラ戦”に入る夫婦もあれば、ひと言も口を利かない“冷戦”に入る夫婦もいます。ちなみに、筆者は両方とも経験済みです。

もちろん、そうした不仲の原因として、お互いの(あるいは、どちらか一方の)“自己重要感の低さ”が作用しているケースもあります。満たされていないココロを、さまざまな手段——「相手を見下す」「自分を大きく見せる」「相手をコントロールする」「(必要以上に)相手に依存する」など——を使って満たそうとするのです。いずれにしても、不仲のときは、相手を否定する機会が増えるので、両者の自己重要感は下がりやすくなります。長引かせるのはよくありません。

筆者夫婦も、かつてバトルをしていた時期には、「自分が正しい」「そっちが悪い(間違っている)」と、不毛な罵り合いをくり広げてきました。どうしたら相手を負かすことができるだろうか。そんなことばかりを考えていました。この状況に突入すると、相手の嫌なところばかりに目がいくため、一緒に居ることさえ辛くなります。“戦い”が泥沼化すると、もともと自己重要感が高かった人でも、そのレベルを下げてしまうこともあります。人生の伴侶であるにもかかわらず、お互いに自己重要感を傷つけ合う。本末転倒以外の何ものでもありません。

「ホメ言葉」で相手の自己重要感を高める

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筆者夫婦が、どん底までいった夫婦関係性を修復できたのは、自分たちがこの落とし穴にハマっていることに気づいたからです。

【夫婦がハマりがちな落とし穴】

気づかないうちにお互いの自己重要感を下げ合う関係になっていること

このことに気づいてから、私たちの関係性が変化しました。「このままでは自分も相手もダメになる」と思い、自己重要感を下げ合うのではなく、自己重要感を高め合う関係へと変化する決意をしたのです。 

では、夫婦でお互いの自己重要感を高め合うには、どうすればいいのでしょうか? 

ズバリ「相手をホメる」ことです。

人間というのは環境の影響を大きく受ける生き物です。毎日のようにホメられていると、自己重要感が少しずつ高まっていき、いつしか、ホメられる自分がスタンダードになります。すると、自分のなかに自信が芽生え、人間関係がうまくいきやすくなるほか、仕事でも大きな成果を出せるようになります。また、日々の生活のなかで、充実感や幸せを感じる時間も増えていきます。

【山口夫婦がよく使うホメ言葉】

すごいね/偉いね/やるね/すばらしいね/いいね/頑張ったね/さすがだね/あなたなら(君なら)できるよ!

このほかにも、筆者(男)から妻へは「かわいいね」「すてきだね」「◯◯がよく似合うね」といった、女性が言われて嬉しい言葉を意識的にかけるようになりました。一方、妻から筆者へは「頼りになるね」「カッコいいね」「尊敬している」など、男心がくすぐられる言葉が増えました。

小さいことからホメればOK!

相手の行動や言動をホメることも大切ですが、その人の存在自体をホメる言葉はより効果的です。「(無条件に)自分は愛されている」と思えるからです。そういう意味では、何かを言ったりやったりしたときではない「ごく普通のシチュエーション」で相手をホメることにも挑戦してみましょう。

もちろん、自己重要感のレベルには個人差があります。もともと“自己重要感が低い人”は、自己重要感を高めていくのに時間がかかります。慣れるまでは、ホメられることに違和感を覚えて、素直にホメ言葉を受け取れない人もいます。しかし、そこで焦ってはいけません。長いあいだ “低い自己重要感”と付き合ってきた人は、それを上げていくのにも時間がかかるものです(割り切りましょう)。たとえ相手がその言葉を素直に受け取らなくても、気にしてはいけません。

一方、ホメ言葉を言われた側は、できる限り、素直に受け取ることを心がけましょう。ココロが拒否しても、思いきって「ありがとう」と受け止めてみましょう(すべてはエクササイズです!)。どうしても難しいときは、「自分ではそう思わないけど、あなたは(君は)そう思ってくれたんだね。ありがとう」という形でもOKです。どんな形であれ、受け止める。それを続けていくうちに、ホメ言葉をもらうことへの違和感が少しずつ薄まっていくはずです。つららの雫がやがて硬い岩に穴を開けるように、ホメ言葉の効果も、ボディーブローのように高まっていきます。

現在、筆者夫婦は、どんなに小さいことでも相手をホメます。「ともちゃんって愛があるよね(筆者→妻への言葉)」「拓ちゃんのことを尊敬してるよ(妻→筆者への言葉)」という具合に、相手の存在を認めるホメ言葉はもちろん、「たくさん寝て偉いね!」「たくさん食べてスゴいじゃん!」「今日は頑張ってよく歩いたね!」など、まるで幼児に対して使うようなホメ言葉も多用しています。

はじめはどんな小さいことからでもOKです。相手の存在をホメるのがどうしてもできなければ(恥ずかしければ)、外見や行動からホメましょう。自分ができるところから始めればOKです。

ホメることで得られる自分自身への効果

パートナーをホメる効果は、意外なところからもやってきます。そのひとつが、「相手からもホメられる機会が増える」ということです。

心理学に「返報性の法則」というものがあります。通常、人は他人から何らかの施しを受けたときに「お返しをしなければならない」という感情を抱くものです。これが返報性の法則です。つまり、パートナーをホメ続けていると、当のパートナーからホメられる機会も、少しずつ増えていくのです。

もちろん、パートナーふたりともが「自己重要感を高めることの大切さ」に気づき、お互いにホメ合う関係へシフトするのがベターです(できれば、この記事も、夫婦で共有してもらいたいと願っています)。

しかし、情報共有し難い状況にある夫婦であれば、まずは自分から相手をホメ始めましょう。見返りを求めずホメ続けていれば、いつしか相手からもホメられるという形で、自分に返ってくるはずです。

それに、相手をホメることには、「自分の精神衛生を良くする効果」も含まれています。ふだんパートナーを責めたり、否定したりしている人は、決して楽しい気分ではないでしょう。なかには、相手を否定している自分自身に強い嫌悪感を抱いている人もいるはずです。そんな状況が続けば、精神衛生が悪化するのも当然です。

一方、相手をホメることは、自分の自信を取り戻す“きっかけ”になるでしょう。「自分はパートナーをホメることのできる人間なんだ」という自信。それを強く実感することができれば、相乗的に自分自身の自己重要感も高まっていくはずです。

くり返しになりますが、“自己重要感が低い人”ほど、相手をホメることに抵抗感を覚えるはずです。しかし、どうか諦めずに、チャレンジしてもらいたいと思います。自分のためにも。相手のためにも。そして、夫婦の未来のためにも。

5歳児に学ぶ「ホメ言葉」のリクエスト

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最後に、パートナーで「自己重要感の重要性」を共有できている方に、さらにその効果を高める方法をお伝えしたいと思います。

それは、自分から「ホメ言葉」をリクエストすることです。筆者夫婦の実例をシェアします(注:こんな実例を公開するメリットは筆者にはありませんが……この記事を読む人のためになるなら!)。

◆山口拓朗(夫)の「ホメ言葉」リクエスト

「今日のオレ、めちゃめちゃ仕事を頑張ったと思わない?」

「オレって、大学生みたいに若々しいよね?」

「今日の(オレの)ファッション、カッコよくない?」

「さっきお皿を洗ったよ。偉いでしょ?」

「オレの撮る写真ってうまくない?」

◆山口朋子(妻)の「ホメ言葉」リクエスト

「私が作ったごはんは、おいしいでしょ?」

「今日のこの服、かわいいでしょ?」

「ねーねー、見て、見て。このネイルきれいでしょ?」

「今日はちゃんと運動したよ。偉いでしょ?」

「部屋を片付けて偉いでしょ?」

このようなやり取りを、毎日のように(しかも、たくさん)しています。まるで、5歳児が「今日はちゃんと歯を磨いたよ。すごい?」と親に「ホメ言葉」をリクエストしているのと同じです。

一点、大事なことがあります。それは、「ホメ言葉」をリクエストされた側は、それを否定したり、茶化したりしてはいけない、ということ。返事は100%「イエス」。リクエストしてきた相手の望み通りにホメてあげましょう。予定調和でも、茶番でも、なんでも構いません。「ホメて、ホメられて」をくり返すことによって、お互いの自己重要感は高まっていきます。

さらに言えば、「ホメて!」とリクエストすること自体も、リクエストした人自身の自己重要感を高めていく行為です。“自己重要感が低い”人ほど勇気が必要となりますが、これもまたひとつのエクササイズです。相手を信頼して、小さな一歩を踏み出してみましょう。きっと自分自身の気持ちにも、いい変化が見られるはずです。

自己重要感が高まれば、“スーパーサイヤ人”になれる!

「ホメて、ホメられて」の関係は、職場や友達同士でも築けますが、夫婦で築くことに最も意義があります。なぜなら、人生のベースとなる夫婦関係では、接触回数も多く、心理的な距離も近いからです。至近距離で慣習的にホメ合う関係が作られていくと、自己重要感が高まるスピードもおのずと速まります。

冒頭でも述べましたが、自己重要感の高低は、仕事や恋愛など、私たちの人生の「あらゆるシチュエーション」に大きな影響を及ぼします。仕事を例に取るなら、“自己重要感が高い人”は、社会を生き抜く戦闘能力が高い状態にあります。超絶に高ければ「スーパーサイヤ人」です。心が折れることなく、あらゆる困難も超えていけるため、社会的・経済的に成果を出しやすくなります。

おもしろいもので、夫婦関係でホメ合う関係が定着すると、その関係性は、親と子どもの関係性にも活かされるようになります。つまり、親が子どもにかけるホメ言葉(とくに、その存在自体をホメる言葉)が増えていき、子どもの自己重要感がどんどん高まっていくのです。「(無条件に)自分は愛されている」「(無条件で)自分には価値がある」という実感は、その子の人生にとって大きな宝物、そして武器になるはずです。

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著者:山口拓朗

『「また会いたい」と思われる!会話がはずむコツ』著者。

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伝える力【話す・書く】研究所所長。「伝わる文章の書き方」や「好意と信頼を獲得するコミュニケーション術」「売れるキャッチコピー作成」等をテーマに執筆・講演活動を行う。2017年6月下旬発売の最新刊『「また会いたい」と思われる!会話がはずむコツ』(三笠書房/知的生き方文庫)や『伝わるメールが「正しく」「速く」書ける92の法則』(明日香出版社)など著書多数。起業家の妻・山口朋子と「対等な夫婦パートナーシップで幸せな人生を作る方法」など夫婦関係の築き方をテーマにした講演も行っている。『世帯年収600万円でも諦めない! 夫婦で年収5000万円になる方法』(午堂登紀雄、秋竹朋子著)にも夫婦で取り上げられている。

山口拓朗公式サイト
http://yamaguchi-takuro.com/

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