「仕事の要領が悪く、周りに迷惑をかけていないか心配です…」【シゴト悩み相談室】

キャリアの構築過程においては体力的にもメンタル的にもタフな場面が多く、悩みや不安を一人で抱えてしまう人も多いようです。そんな若手ビジネスパーソンのお悩み相談を、人事歴20年、心理学にも明るい曽和利光さんが、温かくも厳しく受け止めます!

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曽和利光さん
株式会社人材研究所・代表取締役社長。1995年、京都大学教育学部教育心理学科卒業後、リクルートで人事コンサルタント、採用グループのゼネラルマネージャー等を経験。その後、ライフネット生命、オープンハウスで人事部門責任者を務める。2011年に人事・採用コンサルティングや教育研修などを手掛ける人材研究所を設立。

CASE11:「仕事の要領が悪く、周りに迷惑をかけているように感じます」(24歳女性・メーカー勤務)

<相談内容>
営業事務に就いて2年目です。どうも私は要領が悪いようで、周りに比べると一つの仕事にかかる時間が長く、迷惑をかけているように感じます。

営業事務は、営業が取ってきた仕事をサポートする重要な役割。営業数字を管理したり、見積もりを出したり、プレゼン資料作成を手伝うなど業務は多く、正確に、テキパキこなす必要があります。

でも、私はミスを起こすのが嫌で、正確さを追求するあまり、何度も書類を読み返したり、場合によっては作り直したりもします。わからないことがあると、どんなに些細なことでも上司や先輩に聞かないと先に進めません。初めは皆さんやさしく教えてくれましたが、2年目になり、上司に「正確性を追求するのはいいけれど、そろそろ効率的に仕事を進める方法を覚えたほうがいい」などと言われるように。毎日残業しているのに、業務の「量」で周りに追い付かず、情けない気持ちです。どうすれば、要領よく業務をこなせるようになるでしょうか?(電機メーカー・営業事務職)

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8,568通り、あなたはどのタイプ?

上司は、入社2年目の社員に対する能力開発目標を告げているにすぎない

 相談者は、まだ社会人になって2年目ですよね?

 仕事の正確さに長けている人に対して、「今度は効率性も追ってみよう」というのは、ごく一般的なアドバイスです。まだ2年目の若手社員に、今後の能力開発目標を伝えているにすぎません。それを「非難されている、迷惑をかけている」と捉えてしまう気の弱さに問題がある気がします。正確さという武器があるのですから、もっと自信を持って業務に臨んで下さい。くれぐれも、正確さをおろそかにしてまでスピードアップを目指さないこと。

 どうしても気になるようであれば、上司からのフィードバックの場などで「ぶっちゃけ私の働きぶりはどうでしょう?皆さんに迷惑をかけてはいませんか?」とズバリ聞いてしまいましょう。おそらく、非難されることはなく、「正確性を評価されたうえで、効率性の目標に置かれる」ことですんなり終わると思いますが…。きちんとした場でフィードバックを受けていないのに、妄想で自分を責めないことです。

 ただ、相談者の課題が「効率性」であることは間違いありません。自分を責める時間があったら、自分なりに効率性を上げる努力をしたほうがいいと思います。

8,568通り、あなたはどのタイプ?

仕事の「根本」を理解すれば、応用が効くようになる

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 相談文から想像できる相談者の問題点は、「上司や先輩からの指示の根本を理解できていない」こと。

「わからないことがあると、どんなに些細なことでも聞かないと先に進めない」とのことですが、細かい枝葉のことばかり質問しているのではないですか?例えば、プレゼン資料をどういうフォントで、どんなフォーマットで作ればいいのかというような瑣末なことを気にして、「そのプレゼンがどれぐらい重要なのか」「プレゼンで最も伝えたいことは何なのか」という大本の部分がつかめていないのではないでしょうか。だから、同じ質問を繰り返すことになり、なかなか独り立ちできないのでは?

 細かいことなら何度も確認できるのですから、その質問力を「仕事の根本」に向けましょう。「この資料作っといて」と言われたときに、「ハイ」の一言ですんなり引き受けるのではなく、どういう目的の資料なのか、この資料に何を望んでいるのかを初めに聞いてしまいましょう。「迷惑がられないかな…」などとひるまないこと。ここは相談者が乗り越えるべき壁です。それに、上司や先輩の立場から考えても、フォントやフォーマットを逐一聞かれるのは面倒くさいですが、目的や背景を聞かれたら「ちゃんと答えよう」と思うものですよ。

 仕事の根本が理解できれば、応用が効きます。「この前と同じ、コンペティターが多い重要なプレゼンの資料だから、前回のものを参考に自社の強みを前面に打ち出そう」など、周りに細かく確認しなくてもある程度は自ら動けるようになります。そうすれば、経験を積むごとに周りへの確認事項が絞られ、作成時間も短縮できるでしょう。

CPU速度を上げるのは無理。業務の可視化で無駄な時間を埋める努力を

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 相談文からは読み取れませんが、「タスク管理スキルの弱さ」も相談者の課題かもしれません。やるべきことの優先順位が付けられず、片っ端から手を付けているから、効率性が失われている可能性があります。

 例えば、カレーライスを作る時、野菜を切り、肉を炒め、カレールーを入れてぐつぐつ煮込んだ後に、お米を炊く人はいませんよね?料理を始める前に、「お米を炊くのが一番時間がかかる」と目測を立て、まず初めに米を研いで水につけ、その間に材料を切り、ご飯を炊いている最中に炒めて煮込み…とするはずです。料理人を見ていると、常にくるくる動いていて無駄な動きが一つもありませんよね。それと同じことを仕事でも目指すのです。

 今のすべてのタスクを一覧にして、かかりそうな時間や重要度などの視点で優先順位をつけ、今日1日のスケジュールを立ててみましょう。そしてその通りに業務をこなし、もし予想よりも1つの業務が早く終わったら、タスク一覧を見て「この業務ならこの空き時間にできそうだ」と隙間を埋めていくのです。

「可視化」の威力は大きいものです。タスクを一覧にして業務全体を「可視化」すれば、自分の業務量がつかめ、目の前の仕事にかかる時間もコントロールできるようになります。初めは、時間の目測を誤るかもしれません。でも、やるたびに徐々に精度が上がっていくはずです。

 仕事のスピード自体を上げるのは大変だし時間がかかります。各々の「頭のCPU速度」はある程度決まっているからです。仕事にもっと慣れ、ルーティン化できることが増えればスピードも上がるでしょうが、即効性はありません。

 だから、相談者にとっては一つひとつのタスクのアイドルタイムを減らす・なくすことが効率化への近道。是非トレーニングだと思って、挑戦してみてください。

<アドバイスまとめ>

被害妄想は止めて前向きに!
無理に仕事をスピードアップするよりも、
仕事の根本を理解し、タスク管理スキルを
上げる努力をしたほうが即効性がある

>>『シゴト悩み相談室』バックナンバー

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EDIT&WRITING:伊藤理子 PHOTO:平山諭

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