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【急がば回れ】中長期的なキャリアアップのために“短期的なキャリアダウン”を受け入れる勇気

皆さま、こんにちは。私は『ktdiskのブログ』というブログで書評、キャリア論、最近引っ越したアメリカの暮らし、働きぶりなどを綴っています。今回は「中長期的にキャリアップを重ねていくには、短期的なキャリアダウンを勇気をもって受け入れ、地力を養うことが大事」、という私のキャリア観についてお話します。

■ キャリアアップとは「“働く”ことへの自由を得ること」

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Photo by Ronald Sarayudej

“キャリアアップとは何か” と聞かれたら、「専門性、収入、職位の全て、もしくはいずれかを高めて、“働く”ことへの自由を得ること」と、私は答える。専門性、収入、職位を高めることそのものは目的ではなく、仕事の内容、労働時間、働く環境などをより自由に選択できるようになることが大事だと私は考える。

■ キャリアアップのために「キャリアの踊り場」を作る

私は新卒の頃から外資系企業に勤めていたので*1、キャリアアップを志向する人が周りにたくさんいた。また、100名以上の中途採用の面接をしてきたなかで、キャリアアップを志向するいろんなタイプの人と会う機会に恵まれた。

自らもキャリアアップをしつつ、また、多くのそういった人と触れる過程で、最近強く思うことが一つある。それは、今の自分の延長線より、もう1~2段上にキャリアを押し上げていくためには、キャリアダウンを思い切って受け入れることがとても大事、ということだ。私はそういう行為を「キャリアの踊り場を作る」と呼んでいる。

逆に言うと、このキャリアダウンを受け入れることができず、「年収が下がるなら転職しない」「タイトルがマネジャーだから転職する」など、その場その場の瞬間最大風速のキャリアアップを追い求め、結果として将来の選択肢・自由度を下げてしまっている人がとても多いように思う。

そこで、私自身がどんな狙いを持って、どんなキャリアダウンを受け入れて「キャリアの踊り場」を作ってきたか紹介しながら、その重要性を説明したいと思う。

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■ コンサルタントから社内管理部門へ

30歳になったとき、米国で仕事をしながら家族と暮らしたいと思うようになり、「多少読めるが、聞きとれない、話せない」状態の英語を何とかする必要に迫られた。当時、私はコンサルティング会社で働いていた。それなりの規模のプロジェクトの責任者を任せられ、専門性も深まり脂が乗ってきた時期だった。しかし、コンサルタントを継続しながら「仕事で通用する英語」を身につけようとトライするも、お客様に高いフィーを頂きながらプロジェクトを通して英語を学ぶのは難しい、ということに気付くのに時間はかからなかった。とはいえ、多忙なコンサルタントをしながら業務外の時間のみで「仕事で通用する英語」を身につけるのは私には無理そうに思えた。

なので、即座に成果を求められるお客様に対してではなく、業務を通した人材育成が奨励されている“社内”に、英語を勉強しながらできる仕事はないか探すことにした。そして、最終的にセールス・オペレーションという社内の管理部門に異動することになった。セールス・オペレーションの仕事は、1年弱ほどそれに近いことをやったことがあったので、その仕事できちんと価値を出しながら英語もあわせて勉強する自信はあった。好きなコンサルタントの仕事から社内管理部門に行くことに抵抗はあったし、同僚のコンサルタントからは、「えっ!? セールス・オペレーション??」と疑問の目を向けられることもあった。しかし、目的に即して地力を養うことに注力することにした。

結果として、2年ほどで「仕事で通用する英語」「面接で通用する英語」を身につけることができ、今までにない専門性を高めることができた。そして、その英語力も活用して別の会社に転職をすることになる。私のキャリアのなかで、英語の勉強のために2年間の「踊り場」を作ったことは、後々キャリアの選択の自由度を高めるうえで非常に大事な判断となったと今は確信している。

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■ 年収を1割下げて、規模が1%以下の会社へ

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Photo by Dave L

社内管理部門に移って2年くらいした頃に、今の勤め先に転職をすることにした。転職前の会社は、世界に名だたるエクセレントカンパニーで素晴らしかったが、私には規模が大きすぎて自由度が低く、少し物足りなくなってきていた。また、今の勤め先はビジョンに強く共感でき、IT業界の構造にチャレンジする面白みもあったので、小さな事業会社での新たな挑戦に取り組むことにした。

日本法人の従業員規模でみれば1%以下の会社への転職となり、周囲からはあんな小さな会社に行くのだから、「よほど良いオファー(業界用語で年収が高いこと)を貰ったのだろう」、とよく言われた。しかし、実際は年収を1割ほど下げての転職となった。また、「そんな聞いたことがないような会社への転職は片道切符だからやめておけ」と諌められたりもしたが、事業の魅力や自分の責任と裁量で思いっきり仕事ができる環境に惹かれ、飛び込むことにした。

中途採用の際に、年収が今より下がることを極端に嫌う人はものすごく多い。仕事の内容、会社の雰囲気などは凄まじくフィットするのに、年収が下がってしまうという一点で入社を辞退することは少なくない。特に、成長途上の企業に入社して、そこの成長の礎を築こうとするなら、「会社が成長すればきっと給料も上がる」という発想をどうして持たないのかと私は思うのだが、そう思わない人が多いようだ。

今の会社は、入社当時は日本法人が60名程の小さな会社で、2万人規模の前職と比べると与えられる裁量が大きく、仕事の幅も広いため、いろんな経験を積むことができた。所属部署で日本にいるのは初めは私一人だったが、最終的には15名程度のチームを任せられるようになり、マネジャーとしての勉強も大いにさせてもらった。また、同じタイミングで入った社長と一丸となって成長の礎を築き、在籍した6年間で事業を3倍以上に成長させることができたのも私にとってはとてもいい経験となった。

年収を下げてより不安定な小さな規模の会社に転職をしたわけだが、「チームを率いるマネジャーとしての経験」と、そのおまけの「シニアマネジャーという職位」を得ることができた。それに伴い前職と比較して年収も3割ほど増え、結果、収入と職位のアップにつながった

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■ ヒラ社員に戻って、年収を3割下げて、米国本社へ

英語を勉強したそもそもの目的は、米国で生活・仕事をすることにあった。そして、現在の会社に転職して6年半。ようやくその夢がかない、米国本社に転籍することなった。

日本法人に勤めていた頃はシニア・マネジャーという職位だったが、転籍に伴い、いちチームメンバーとして働くことになった。結構上げてもらった年収もシニアマネジャーからヒラ社員(Individual Contributorとよく言う)になるということで、3割ほど下がることに。結構下げるな……と思ったが、「まぁいい仕事をしていれば、そのうち上がるだろう」と受け入れることにした。

外資系企業の勤務は長いが本社勤務は初めてなので、いろいろと勉強になっている。また、伸びが止まっていた英語力もゆっくりではあるが強化され、何しろ家族で米国に移住するという挑戦はやりがいがあり、とても充実した生活を送ることができている。

さらに、これまでは自分自身の仕事の品質にフォーカスできるヒラ社員生活を謳歌していたのだが、今年の頭からチームリーダーに昇格した。最近は「マネジャーになって チームを率いてくれ」と言われるようになった。アメリカ人、ブルガリア人、インド人という多様な人種のマネジャーを務めることはチャレンジングだが、任される以上は精一杯やってみようと思う。

まだ踊り場で地力を養っている最中なので結果を語るタイミングではないが、今回の渡米を通じて思うことがある。それは米国企業の本社という経営の中枢で、日本人が自分一人という状況で単なる英語力というよりも、グローバルなビジネス環境でのコミュニケーション能力を高められたことが、職位や専門性の向上につながっていること。そして、こういった全く新しい環境での様々な経験が、これまでに培った経験や専門性と融合して形になってきた感触を今は覚えている(渡米前の給与に戻るにはもう少し時間がかかりそうだが……(汗))。

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■ いかに「キャリアの踊り場」を作るか

あらためて自分でまとめてみると、やはり要所要所で目的意識を持ち、瞬間的な後退を恐れずに「キャリアの踊り場」を作ってきたことが、中長期的な自分のキャリアアップにつながったと思う。逆に、その場その場の目先のキャリアアップのみを追いかけていたらどうなっていただろう……と、ぞっとする。

言わずもがなだが、べつに短期的なキャリアダウンをすることが目的ではない。キャリアアップを持続しながら大きな成長の機会があれば、どんどんチャレンジすべきだと思う。ただし、「給料が下がる」「職位が下がる」「仕事のレベルが下がる」などの理由だけで、将来のキャリアの広がりにつながりそうな案件を即切りすべきではない、という点は強調したい。

20代後半から30代前半は、多くの人がキャリアの転換点を迎えるだろう。そのときには、ぜひ「キャリアの踊り場」を作り、地力をあげるという視点も持って、中長期的なキャリアアップのプランを考えてほしいと思う。あまりキャリア論で語られることはないが、「キャリアの踊り場」を、「何を目的に、どのタイミングで、いかに作るのか」というのはキャリア戦略上、見逃してはいけない重要な視点だと確信している。

著者:ktdisk (id:ktdisk)

ktdisk

外資系のコンサルティング会社、IT企業で働くこと約20年。現在は、アメリカの本社に転籍し、ノースカロライナ州に在住。書評、キャリア論、アメリカでの暮らし/働きぶり、その他諸々の雑感をブログで綴る。

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*1:現在は米国法人採用