【シゴト悩み相談室】異動先の先輩や同僚と、反りが合わないんです…

キャリアの構築過程においては体力的にもメンタル的にもタフな場面が多く、悩みや不安を一人で抱えてしまう人も多いようです。そんな若手ビジネスパーソンのお悩み相談を、人事歴20年、心理学にも明るい曽和利光さんが、温かくも厳しく受け止めます!

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曽和利光さん
株式会社人材研究所・代表取締役社長。1995年、京都大学教育学部教育心理学科卒業後、リクルートで人事コンサルタント、採用グループのゼネラルマネージャー等を経験。その後、ライフネット生命、オープンハウスで人事部門責任者を務める。2011年に人事・採用コンサルティングや教育研修などを手掛ける人材研究所を設立。

CASE1:「異動先の先輩や同僚と反りが合わない」(27歳男性・Webサービス会社勤務)

<相談内容>
この4月に、営業部門からマーケティング部門へと異動になりました。異動は希望していたわけではないので、正直戸惑っています。

それに、配属先の同僚と、反りが合わないことも最近では悩みの種になっています。初めはよかったのですが、業務に関する質問を何回かしているうちに、なんだか周りの同僚の態度が冷たくなっていったような気がします。もちろん、自力で調べられることは調べますが、どうしてもわからない時には周りの同僚に聞くことになります。なるべく相手が忙しくないタイミングを見計らって聞くのですが、面倒くさそうな顔をされてしまいます。一度聞いただけではよくわからない時や、わからない用語が出たときにはさらに聞くことになりますが、そうするとさらに面倒くさそうな顔をされ…今では聞くことも怖くなって、仕事を進めることが難しい状況です。

この現状を上司にも相談をしたのですが、「それは自分でどうするべきか考えてみなさい」と言われてしまいました。何度もしつこく聞きすぎたかと反省し、聞き方などを工夫したりもするのですが、なかなか効果が得られず、困っています。

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 ご相談内容からは、3つの可能性が推察されます。順に挙げてみますので、どれがご自身に当てはまるかどうか考えてみてください。個人的には、3つすべてに当てはまるのではないか?と思っています。

■仮説1:あなた自身が、周りに苦手意識を持っている

 まず考えられるのは、「周りが自分に対して冷たい」のではなく、実はあなた自身が周りの人に対して嫌い、苦手などの感情を持っていて、それが相手に反映されてしまっているケースです。人は、自分に対する相手の感情(例えば期待や好意、苦手や嫌悪など)に染まっていくもの。これを心理学上では「ピグマリオン効果」と言いますが、相手に負の感情を持って臨めば、相手もあなたに負の感情を持つようになるのです。

 あなたは相手…すなわち今の部署の先輩や同僚のパーソナリティに関する情報を、どれだけ知っていますか?住んでいるところは?趣味は?お酒は飲める?カラオケの十八番は?…一つも思い浮かばないという場合は少々問題です。配属されて日が浅いのでしょうが、雑談すらできていないのでしょう。

「知る」は、愛に通じます。相手を知れば知るほど、親近感を覚えるポイントが見つかり、好きになっていきますが、知らない相手には疑心暗鬼になり、ちょっとしたことでマイナスイメージを持つようになります。今、あなたは後者の状態なのではないですか?

 まずは、相手を知りましょう。すでに関係はぎくしゃくしているようですが、まだ取り返しはつきます。
 インフォーマルな付き合いは、相手を知る上で大切。たわいのない雑談を振ってみたり、ランチや飲みに誘ったりして、相手のパーソナル情報を収集し、自分のことも伝えましょう。そうすれば、相手のいいところが見えてきてあなたの態度が徐々に好意的なものに変わり、それを受けて相手の態度も好転していくでしょう。

■仮説2:「教えてもらうのが当たり前」だと思い、努力を怠っている

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「仕事を教えてくれない」ということですが、「周りに教えてもらうのは当たり前」だと思っていませんか?

 いくら会社が決めた異動だからといって、丸腰で仕事に臨むのはいかがなものでしょう。わからないなりに自分で調べたり、本などを読んで基礎知識をつけるべきです。私は、20年の人事歴の中で、人事から人事コンサルタントに役割が変わった経験がありますが、一見関連性の高い役割と思いきや、それまでの知識の大半が活かせず一から勉強しまくりました。「新しい領域を知ろうとしたときには、関連する書籍を20冊は読まないと会話すらできない」と言われたことがありますが、まさにその通り。何十冊という本を読み知識をインプットして、ようやく先輩方の「共通言語」が理解でき、会話の内容もうっすらわかるようになりました。

 きっと周りの皆さんは、あなたの「教えてもらって当たり前」というスタンスに拒否反応を示しているのだと思います。自分で知る努力をしない人に、一から教えるなんて、こんなに気の進まない業務はありません。

 上司や先輩に頭を下げ、どんな本を読めばマーケティングの基礎知識が身に付くか聞いてみてください。そして、それらの本を買うなり借りるなりして片っ端から読みましょう。配属後の数週間、ほとんど戦力にならなかったのですから、それを挽回すべくぜひ1週間で最低でも5冊は読み切る勢いで読んでください。そうすれば、うっすらとでも先輩たちの会話が理解できるようになっているはず。「ああ、こんな初歩的なこと質問していたんだ…」との気づきも得られるでしょう。大変でしょうが、1週間で頑張って読み切ったほうが、その後が楽です。

 聞いても教えてもらえなかった、聞く勇気がない、という場合は、「一番分厚い本」から読んでみてください。皆さん、まずは薄い本を手に取りがちですが、薄い本はフレームだけが紹介されているのでマーケティングの全容はわかりません。分厚い本には、それだけ情報が網羅されています。マーケティング領域で分厚い本だと、コトラーあたりでしょうか。確か、日本語訳で1000ページぐらいあったと思いますが…。

 初めはちんぷんかんぷんかもしれません。でも、それでも読み進めていけば、少しずつでも知識が蓄積します。2冊目、3冊目と読むうちに、だんだん面白くなってくるはずですよ。

■仮説3:ギブアンドテイクの「ギブ」しかしていない

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 ギブアンドテイクの「ギブ」ばかり求めて、相手に「与える」努力をしていないのでは?「まだ仕事がわからないから、何も貢献できない」と開き直っていては、周りに好かれるはずはありません。

 人間の持つ心理の一つに「返報性の原理」があります。「他人から何らかの施しを受けたら、お返しをしないといけない」という感情を抱くことを指します。ぜひ、まずはあなたのほうから与える努力をしてみてください。そうすれば周りも、この原理に則ってあなたに「与えて」くれるようになるでしょう。

「与える」のは、どんなことだっていいのです。「仕事で貢献」がまだ難しいのであれば、誰よりも早く出社してオフィスの掃除をするとか、かかってきた電話はすべて取る努力をするとか、みんなが忙しそうなときに「ランチ買ってきましょうか?」と声をかけるとか、飲み会の時に率先して幹事を引き受けるとか。そういうことでも、「この部署のために彼なりに頑張っている」という姿勢は伝わります。今度何か聞かれたら、本腰を入れて教えてやろうかな…と思ってもらえるでしょう。

<アドバイスまとめ>

今すぐ「相手を知る努力」と「知識の底上げ努力」をすべき。戦力になれるまでは、雑務でも宴会部長でも何でも、部署のためにやれることをやりまくれ。

>>『シゴト悩み相談室』バックナンバー

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EDIT&WRITING:伊藤理子 PHOTO:平山諭

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