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リクナビNEXTジャーナル

キャリア・ビジネスの情報満載【リクナビNEXTジャーナル】

マッキンゼーから、早稲田大から、NPOへ…私が「社会起業家」という道を選んだ理由

社会をより良くしたい、社会貢献がしたいと、日々の仕事のかたわらボランティアやNPO活動に精を出すビジネスパーソンが増えている。そんな中、「国内外の社会問題を自らの手で解決したい」という高い志を持ち、自ら団体を立ち上げ活動する「社会起業家」という道を選んだ人もいる。彼らを突き動かした想いとは、何なのだろうか?社会起業家として生きるクロスフィールズ小沼さん、e-Education税所さんに取材をした。

■社員を発展途上国へ赴任させる「留職」で、仕事への熱い想いを取り戻してほしい~NPO法人クロスフィールズ代表・小沼大地さん

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(プロフィール)
1982年生まれ。一橋大学社会学部・同大学院社会学研究科修了。青年海外協力隊(中東シリア・環境教育)への参加後、マッキンゼー・アンド・カンパニーに入社。同時期より、社会貢献活動に関心を持つ社会人向けのコミュニティCompass Pointを主宰し、これまでに1000人を超す参加者を集める。2011年5月、日本企業の社員を発展途上国のNPOへと赴任させる「留職」を推進する、NPO法人クロスフィールズ創業。先ごろ、「第2回日経ソーシャルイニシアチブ大賞」新人賞を受賞する。

シリアでの社会貢献活動から戻り、「志」を失った仲間の変貌に衝撃を受ける

 学生時代は、教師を目指して勉強を続けていました。ただ、新卒ですぐに教師になるよりも、別の世界を見て、社会経験を積んでからのほうが、引き出しが多い教師になれるのではないか?と思い、大学卒業後に青年海外協力隊へと参加したんです。
 大学時代に、バックパッカーとして東南アジアの途上国を旅した経験があったため、青年海外協力隊では「自分が行ったことのない未知の場所」を希望。その結果、中東・シリアへと赴任することになりました。残念ながら今は騒乱の渦中にありますが、当時は平和でとても穏やかな国でした。
 青年海外協力隊としての約2年間の任期を経て、さまざまな学びを得て帰国しました。そして、久々に大学時代の友人たちと集まった飲み会で、衝撃的な事実を目の当たりにしたんです。

 私が協力隊に参加する前は、ちょうどみんな就職先が決まり、未来に夢を膨らませていた頃でした。まだ世の中にない新しいものを生み出したい、会社に入って自分の力で社会を変えたい…そんな熱い想いを語り合っていた仲間たちが、すっかり変わっていたのです。シリアで見聞きし、体験して来たことを熱く語る私を見て、「お前は相変わらず熱いな。でも、青臭いだけでは社会で通用しないから、早く大人になれ。だから会社に入れ」と…。愕然としました。

 社会にもまれながら働く中で、たった数年間のうちに、自分と社会とがつながっているという意識が薄れてしまい、目の前の仕事だとか、上司や先輩とのコミュニケーションだとか、出世のことなどに関心ごとが移ってしまったのだと感じました。もちろん、それも悪いことではないのですが、大事な志を失ってしまったのがどうにも残念で…。会社に入って働き始め、ビジネスパーソンとしては成長しているのだと思いますが、私には「退化」に見えてしまった。現状の企業のメカニズムでは、熱い想いを持って入ったとしてもすぐに輝きが失われてしまう。ひいては日本の力も失わせてしまう。この現状を何とか変えなければ!と思いました。

「ビジネスと社会貢献はつながる」「社会貢献で人は輝く」事実を現地で経験

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 私はシリアでの協力隊の活動でさまざまなことを学びました。一番の思い出は、現地のNPOで働いていた頃の出会いです。ドイツの経営コンサルティング会社から、数名のコンサルタントが経営改革のために赴任してきたのです。
 当時は、「NPOなのに、コンサルを入れるなんてなぜ?」と思っていました。NPOという社会貢献をする組織と、コンサルタントという営利組織が頭の中で接続できなかったからです。私のいたNPOでは、小額のお金を貧困層に貸し出し、それを元手にビジネスを行ってもらうことで、継続的に収入を得てもらうという支援を行っていました。しかし、回収ができずに貸しっぱなしで終わるケースがあるなど、回収コストが非常に高い状態が続いていました。

 しかし、コンサルタントが一つひとつの案件においてKPIを設定し、誰にどれだけ支援すればこれぐらいの成果が見込めると試算してPDCAを回すようになったことで、必要な人に、必要なお金が回るようになりました。その結果、現地の人々の生活水準が向上し、事業を運営するNPOのバランスシートも劇的によくなった。「ビジネスは、社会貢献や国際協力ともつながるんだ」と体感できたんです。

 そして、その時に気づいたのが、赴任してきたドイツ人コンサルタントの「変化」でした。
 初めは「あくまでビジネス」という姿勢を崩さなかった彼らでしたが、現地の人々の生活がどんどん変わっていくのを目の当たりにして、徐々に彼らの目は輝いていきました。そして「ありがとう!」と感謝の声を掛けられ、笑顔で応えるようになったのです。目に見えてイキイキと変化していく彼らを間近で見て、「発展途上国での活動が、彼らがそもそも持っていたけれど忘れかけていた、仕事に対する想いや情熱、やりがいを思い起こさせたのだ」と感じました。

マッキンゼーでビジネスを学び、会社とNPOをつなげる取り組みを発案

 そして帰国後、社会にもまれて輝きを失った仲間たちの姿を見て、シリアで得た「ビジネスと社会貢献の接続」、「社会貢献で人は輝く」という2つの経験を思い出し、ピンと来たんです。「この2つを組み合わせれば、『自分の働きが社会に影響を与えている』と実感して志を失った人も再び目を輝かせることができるし、そんなビジネスパーソンが増えることで日本企業の活性化も図れるのではないか?これこそが、自分の使命だ」と。
 ただ、それをビジネスモデル化するには、私のビジネス経験が圧倒的に足りませんでした。そこで、ドイツ人コンサルタントから勧められた、コンサルティング業界に飛び込むことを決意。マッキンゼーで3年の経験を積みました。

 そして2011年に、日本企業の社員を発展途上国のNPOへと赴任させる「留職」を推進するクロスフィールズを設立しました。仲間と一緒に、会社とNPOをつなげるための取り組みを考え、議論して、生まれたビジネスモデルです。設立して3年が経ちましたが、大手企業中心にリーダー育成や現地市場の理解の一環として採用をいただき、2014年度はすでに50案件が見込まれています。また、留職経験者の発案による、途上国を対象とした新規事業の芽も生まれています。
 ある大手IT企業の方が、留職プログラムから帰国後、当団体のオフィスで経験談をプレゼンテーションしてくれたことがあります。その方は「忘れかけていた新卒入社時の高い志を、留職で思い出すことができました。自分がリーダーとなって会社を変え、そして日本の社会をも変えるという覚悟を決めました」と熱く語ってくださったんです。…嬉しかったですね。その話を聞いてスタッフと一緒に涙を流したのは、最高の思い出です。

「留職」で、ビジネスパーソンの「情熱を燃やす」お手伝いをしたい

 人は、スキルと情熱で成長するものだと思っています。ただ、今の日本企業は「スキル」ばかりに偏重した人材育成を行っているのではないかと感じています。最近では、学校教育でもその傾向が強まっていると感じます。
 でも、本当に大切なのは、情熱だと思っています。これがやりたい!という強い想いがあれば、スキルは後から必ず付いてくるもの。社員一人ひとりの「これを成し遂げたい」というものを見つけたり、思い出させることが、これから日本に求められている人材育成方法。我々はこれからも、留職という方法で、より多くのビジネスパーソンの「情熱を燃やす」お手伝いをしたいと思っています。

 

■世界の教育格差をなくしたい。そのために、世界で台風の目を作り続ける~国際教育支援NGO 団体e-Education創設者・税所篤快さん

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(プロフィール)
1989年生まれの25歳。2009年にバングラデシュ・グラミン銀行のインターンに。そこで同国初の映像授業「e-Education Project」を立ち上げ、貧困層への教育支援を実施。国内最高峰のダッカ大学に、貧困地域から4年連続の合格者を出す。現在は五大陸での教育革命を起こすべく活動中。このほどe-Education代表の座を降り、ロンドン大学教育研究所(IOE)修士課程に在籍中。近著に、これまでの活動内容や想いをまとめた『「最高の授業」を世界の果てまで届けよう』(飛鳥新社)、『ゆとり世代の愛国心』(PHP新書)がある。

高校時代に感じた、地域間の教育格差。自分の手で、それを埋めたい

 そもそもの原点は、私自身が高校時代に教育格差を実感したことにあります。中学までは、都内のある学校に通っていましたが、学校は荒れ、クラスはほとんど崩壊していました。でも、近隣の学校はどこもそんな状態だったんです。
 しかし、高校に進学したところ、中学ではまずまずの成績だったのにもかかわらず、一気に落ちこぼれになってしまいました。他の中学に比べて授業が圧倒的に遅れていたようで、高校の授業についていけなかったんです。「同じ23区内なのに、ここまで差があるのか」と驚きました。

 大学受験を間近に控えた夏に、「何とか巻き返しを図りたい」と思っていた時に、出会ったのが衛星授業やDVD授業を行っていた塾でした。初めは「DVD授業だなんて」と半信半疑でしたが、試しに受けてみるとこれがとても面白い。先生たちの個性豊かな講義に引き込まれ、朝から晩までとりつかれたように勉強しました。そこから一気に巻き返し、運よく早稲田大学に合格したんです。

グラミン銀行の活動に感銘しバングラデシュに渡航、そこで教育問題に直面

 この成功体験をもとに、「自身が感じた教育格差を埋める活動がしたい」と思うようになりました。ちょうど社会起業家という存在を知り、関連するビジネス書を読みあさったんです。その中の1冊が、『グラミン銀行を知っていますか』でした。
 貧困層に無担保融資を行い、自立支援を行うという、バングラデシュのグラミン銀行の取り組みが紹介された本。グラミン銀行と、その創始者であるムハマド・ユヌス博士の生き方にしびれましたね。著者である秋田大学の教授に会いに、秋田まで夜行バスで押し掛けたほど。そこでの先生の話にさらに感激し、「グラミン銀行を直接知りたい!」という想いを止められなくなったんです。そこで、夏休みを利用してバングラデシュに渡航することを決意、インターンとしてグラミン銀行で働くことになりました。
「なぜそこまで…」と不思議に思う人もいるかもしれませんが、私としてはごく自然な行動でした。社会貢献というテーマで心から尊敬できる人のもとで修業をしよう、そうすれば将来、社会起業家として自分の手で教育格差を埋めることも可能になるのではないか…この気持ちが原動力になりました。

 バングラデシュでは、インターンとして国内さまざまな農村部に足を運び、貧困層の現状を調査するとともに、現地の子供たちに教育の現状についてインタビューするというフィールドワークを行いました。そこで気づいたのは、深刻な教員不足。どの学校でも先生の数が足りず、英語がわからない人が英語を教えていたり、理科の知識がない人が理科の講義を行っている。そのため、授業のクオリティー自体も低いことがわかりました。そこで思い出したのが、高校3年のときの成功体験です。カリスマ講師の講義をDVDに収めれば、教員不足は解消するし、クオリティーも担保できるのではないか?と思いつきました。
 そこで、現地でインターンをしながら「e-Education Project」を立ち上げることになります。2009年の8月のことでした。

「世界を変えるか、変えないか」。体裁やリスクを大きく上回る価値がある

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 初めは、迷いや不安がありました。異国の地で、果たしてNGO活動がうまくいくのだろうか?現地の人に価値を感じてもらえるだろうか?と。何より、せっかく入った大学を休学しなければなりません。
 一時帰国し、以前からお世話になっていた一橋大学の米倉誠一郎先生に相談しました。「プロジェクトを立ち上げるには、大学を休学しなければならない。成功するかわからないし、何より同級生から1年、2年と卒業が遅れるのはカッコ悪いんじゃないか」と。実は、これが最も率直な思いでした。でも、そんな私に先生は一喝、「カッコいい、悪いの問題じゃない。世界を変えるか、変えないかの問題だろう!?突き抜けるんだ!」。…この言葉に、ハッと目が覚めましたね。ともにバングラデシュに渡った仲間や、現地の仲間たちが「絶対にイノベーションになる」と後押ししてくれたのも大きな推進力になり、立ち上げを決意しました。

世界各国で、教育格差を埋めるためのイノベーションを起こしたい

 我々の活動により、バングラデシュの最高峰であるダッカ大学に、貧困地域から4年連続で合格者を出すことに成功しました。何よりも、貧困地域の子供たちが、目を輝かせて授業のDVDを食い入るように見つめ、「勉強が楽しい!」と思ってもらえるようになったのが嬉しいですね。
 その後、2012年からは「五大陸でe-Educationを成功させよう」と中東のヨルダン、ガザ、ルワンダ、ハンガリーとプロジェクトを仕掛け、現在では世界10カ国で我々の志に共鳴してくれたメンバーたちが各国の教育課題の解決に取り組んでくれています。
 次の私の目標は、アフリカにある未承認国家ソマリランドに大学院を作ること。また台風の目を作り、世界を巻き込んで行きたいと思っています。

 

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 クロスフィールズ小沼さん、e-Education税所さんは、2人とも強い情熱を持ち、グローバルな視野で社会問題と闘っている社会起業家だが、そもそもの行動の発端は「身近な出来事に対する疑問や課題感」だった。身近にある小さな問題を見過ごさず、真剣に向き合うことを躊躇しない。そして、自分の手で「解決してやろう!」と動く…。このような情熱を、あなたは果たして持っているだろうか?

EDIT&WRITING:伊藤理子 PHOTO:平山諭(小沼さん)、chisato hikita(税所さん)