ご入社者の声からわかった職場環境
小MがB医療法人へご紹介した入社者のうち入社9か月でお一人が退職。もう一人も職場で苦労をされていた。
「2人の話から、医療現場という難しさに加えて、組織が大きくなってきたことで職員マネジメントの難易度が増しているのではないか。経営者と現場の距離が遠くなりB医療法人全体で、管理職の力量が求められるのでは?」小Mにも思い当たる節があった。ご入社されていく方は、一度現場に入ると、常務とは日々言葉を交わすことがなくなるとも聞いていた。でも小Mはいつも常務から現場環境を聞くので現場でどんなことが入社者に起きているのかわからない。
もちろん入社者にも課題はある。でも単なるミスマッチではなく、職員を育てる側、管理職のマネジメント力の影響も大きいのではないだろうか。
「常務は現状や課題について、認識はしているけど外部の人間である私に話していない、話せないこともあるのではないか。何とかして貢献したい。課題の根っこを常務の口から直接聞きたいと考えました。」 そこで、常務に話してもらえる場をつくりたいと考えて、職場ではなく食事にお誘いした。
役に立ちたい想いが常務の弱音と課題を引き出す
食事会での会話は多岐にわたった。常務が同法人へ入職し、現在に至るまでの苦労話や子育ての話。小Mがこれまでのお付き合いで感じていることなど。―次第に常務が抱えている悩みについても打ち明けていただけた。「人のことって本当に難しい。」初めて弱音を吐いてくださった瞬間だった。
「常務だけでは見えない大組織。組織経営に変えていくこと、管理職の役割が大事になりますね。」そんな話ができたことで、根っこの課題に一気に近づいていった。
「実はもっとも課題を抱えているのは老人保健施設なんです。」施設のトップが長年不在。ベテランの70代看護師長がトップを兼任する組織で施設運営をされていた。
入退職者が多く、健全な組織ではない。看護師長は看護師としての経験は豊富だが、組織マネジメントの面では課題が多い。長い間強いトップダウンで管理し続けていることで離職も増大している。
看護師としての功績や看護の指導実績。経営としても頼りにしてきた方。単純にトップを入れ替えたいわけではない。若い職員がイキイキできず疲弊した現場にメスを入れたい。社内外を探しても適任人材はおらず、トップ候補すら過去採用しても大ベテランの傍では定着しなかった。
多様な人と上手に付き合える器をもつ人材が必要
求職者を探す上で、小Mは難易度の高い条件を設定する。管理職の器以上に「あなたとだったら気持ちよくタッグを組める」と気を許せるキャラクターを兼ね備えた人ではないと務まらないと考えたからだ。
今回のポジションは、看護師長との協働でトップマネジメントができる事が一番のポイント。大先輩が気を許してもいいと思う器の大きい人。100人規模のマネジメント経験に加えて、異性、幅広い年代が多い職場での指導経験や、周囲の反対意見が多い中で、改革を成し遂げた経験など、厳しい環境に身を置いて成功させた経験や器を重視。困難を極めたが、やっと見つけたのがG氏だ。
物流センター長時代に、組織不全に陥っていた現場を、若い社員やパート社員の育成に注力して離職しない職場につくりあげた実績に注目した。
G氏は大事な時期を迎えた長男と一緒に暮らすことを何よりも優先し、後先顧みず決断。22年勤務した会社を突然退職。「父としての判断力、決断力。器の大きさに魅了され、この人しかいないという気持ちが強くなっていきました。」
地元に帰ったG氏は仕事については、人を育てる仕事がしたいと人事職や営業管理職を希望。なかなかしっくりくる求人と出会えていなかった。しかし小Mと話すことで、自分は人の育成を通じて、難題抱える現場を甦らせることにやりがいを感じる人だと気づくことができた。福祉施設は想定外でしたが事務長というポストに挑戦したいと応募につながった。
G氏が入社して4ヶ月。G事務長と看護師長が毎日食堂でランチする姿が見られる。看護師長の兼務が外れ、G氏が施設全体を見ている。「こんなに一気に職場の雰囲気が変わるとは。」人で組織は変わる事を知った常務の元気な表情は、小Mにとってたまらなく嬉しい瞬間だ。