「どんな仕事が自分に向いているのか、
わからない。
なんとなくのフリーター生活を送る日々…」

仕事を始めた20代は悩みの連続でした。やりたいことがわからない。これと言って目標もない。とりあえず知人に誘われるまま、住宅クリーニングのアルバイトへ。当時は、とにかくお金を稼げればいいやと思っていました。5年間働いた後、仕事量が減ってきたため転職。続いて建築資材会社で現場にアスファルトで防水を施すという仕事を2年、その後、タオルの商品管理や在庫をチェックする仕事に就きました。いずれもアルバイト。経済的には多少安定したものの、いつもつきまとうのが「これでいいんだろうか」という思いとこの先どうなるのかという不安。実は、もともと自分は引っ込み思案な性格で。人と接するのがどちらかというと苦手なほうだし、これまでもなるべく人とのコミュニケーションを必要としない仕事を自然と選んできました。でもこれまでのアルバイト経験を経て、本当は違うんじゃないかっていう思いが芽生え始めた。人前で自分を出すのが苦手。だけど心の奥底では人とコミュニケーションを取りたい、口下手な自分を克服したいという強い思いがあることに気がついたんです。踏み出す勇気がなくて逃げていただけ。そこで思い切って、営業へ転職。だけどここでも壁にぶち当たる。成績はよかった。でもしっくりこない。「無理に買わせているんじゃないか」「本当はいらないのに売っている？」良心の呵責にさいなまれ、自分のやりたいことと営業職は違うのかと悩む日々でした。

「人に喜んでもらえる仕事がしたい！
そう思えた時、飛び込んでみようと思った」

営業は何か違う…。人と接するだけじゃなく、ただ素直に相手に喜んでもらえる仕事がしたい。じゃあ自分のやりたいことを実現するには？仕事でのモヤモヤを抱えているころ、人力車で事業を起こした今の社長と出会う機会があったんです。もともとの知り合いで仕事の悩みを相談したところ「じゃあうちに来たら」という話になって。この仕事は自分の理想に近いかもしれない。でも自分の殻を破れるだろうか。不安を話すと「ダメだったらやめればいい。やってみなきゃわからないだろう」とひと言。その言葉に背中を押されて、入社を決意。「この仕事は自分に合う」という直感はあったものの、最初はとまどいました。お客さんが来ないときは自分から声がけをしなきゃいけない。これに抵抗があって尻込みしていました。ただね、それもお客さんを乗せて浅草を走るようになって気持ちが変わってきました。乗ってくれたお客さんはみんな、本当に喜んでくれるんですよ。人力車は目線が変わるし気分がいい。絶対に喜んでもらえる。その自信がついたとき、お客さんに声をかけるのが苦痛ではなくなりました。30歳で正社員として入社して3年。今は20人の車夫をまとめる車夫頭として現場を統括する立場に。ダメでもいいや！と自分のなりたい道へ勇気を持って踏み出せたこと。自分と向き合い、自分を変えていくということ。これができた時、ぴたりと自分の中の歯車がうまくはまった感じがしました。