寺原美春さん （仮名・29歳）
	大学卒業後、Web制作会社に入社し2年間進行管理業務を担当。その後、メーカー系列の販売会社に転職し、営業事務に職種転換。約3年間務めたが、配属先の営業所閉鎖に伴う地方転勤の打診を機に9月末で退職。その後、転職活動を始めるが、一次面接から先に進めないでいた。
	・前職と同じ営業事務を目指して転職活動。約30社に応募し、書類は半数以上の確率で通過するが、一次面接でほとんど落ちてしまった。 ・このほどようやく内定を獲得。新年から出社の予定だが、面接に落ち続けた理由がどうしてもわからない。今後のためにも、理由をつかんでおきたい。

9月末に前職を退職後、2カ月以上転職活動を行い、30社以上に応募しました。昨日ようやく1社から内定をいただき、入社を決めようと思っています。

それはおめでとうございます！じゃあ今日は相談ナシ、これで終了ですね（笑）。

いやいや（笑）。実は転職活動では半数以上の会社から面接に呼んでもらったのですが、ほとんど一次面接で落ちてしまったんです。なぜ、ここまで面接に落ち続けたのか、どうしても知っておきたくて…。

なるほど。ご自身では何が原因だったと思いますか？

特に思い当たる節はないのですが、あえて言えば、退職理由がわかりづらかったのかもしれません。正直にお伝えしたのですが、皆さんポカンとされていて、「そんなことあるの？」と言われることが多かったので。

具体的に、教えていただけますか？

今まで2社を経験しました。1社目は、Web制作会社。Webデザインがやりたくて選んだのですが、入社後に任されたのは進行管理業務。面接時に「デザインを任せる」と言ってくれた取締役は、私が入社してすぐ辞めてしまったため、仕方なく進行管理の仕事を手掛けるようになりました。始めてしまえば進行管理の仕事も面白かったのですが、定時になっても来ない社員が多かったり、深夜まで働かないと仕事が回らないのに残業代が出なかったり、評価制度が機能していなかったり…と「会社としてどうなの？」と思うところが多く、2年で退職しました。

なるほど。（応募書類を見ながら）2社目では大幅にキャリアチェンジされているのですね。

はい。1社目が残業続きで激務だったものですから、もっとプライベートも充実させたい、定時で帰れるような環境がいいと思い始めて、友人に勧められて営業事務の仕事を探し、あるメーカー系列の販売会社に就職しました。都内の営業所に配属となったのですが、今度は仕事が暇すぎて…。営業担当は直行直帰が基本で、週に1〜2回、会議に来るだけ。普段は営業事務の同僚と2人きりという場面が多く、かつ仕事も少ないので、1日の半分以上は同僚と営業所の掃除や、古い資料の整理などをしていました。やることがなさすぎて、PCを解体して内部も掃除したほどです。でも、私が辞める半年前に同僚が退職し、大半の時間がほぼ1人きりという状態になってしまって…。そして、この秋に営業所の閉鎖が決まり、関西への異動を打診されたのを機に退職したんです。

今お話しいただいたようなことを、面接でもお話になったのですか？

はい。ネガティブなことは排除し、ある程度整理してお話しましたが、概ねこのような内容です。2社ともあまり大きな会社ではなかったのですが、面接を受けた会社はどこも中規模以上。「そんなに管理がずさんな会社があるの？」「営業事務1人だけに営業所を任せるなんてあり得るの？」など、どの会社の人事も信じられないみたいで…。あまり正直に言うべきではなかったのでしょうか？

その前に、いくつか質問させてください。1社目で「評価制度が機能していない」とおっしゃっていましたが、どのような評価体系だったのですか？

…いや、具体的にはわからないのですが、上司との面談もないし、目標設定もないし、給与が変動することもなかったので。そもそも、上司が誰かもあいまいで、辞めてから「Aさんが上司だったんだよ」と聞かされて驚きました。

2社目は、ものすごく暇で、営業所も閉鎖になったということですが、応募書類を拝見すると都心にある事務所ですよね？営業成績はよくなかったのですか？営業担当者たちの達成率は？

そうですねえ…私はわからなかったのですが、あれだけ暇で、閉鎖になるぐらいですから、営業成績は悪かったのだと思います。

なるほど…。

僕なりの率直な感想をお伝えしますね。寺原さんのお話からは、ビジネスパーソンとして幼い印象を受けます。

でも、情報を自ら取りに行くことはできたはずです。評価制度に不満があるならば、自分で調べて「ちゃんとこのように評価してほしい」と直談判することもできましたよね。遅く来る社員がいるから、時間厳守を徹底しましょうと働きかけてもよかったはず。2社目も、それだけ暇だったら不安になりませんでしたか？多くの人は、うちの営業所は大丈夫だろうか、会社の経営は大丈夫なんだろうか…？と不安に感じ、営業担当者に状況を聞いてみたり、「自分には何ができるか？」と聞いて行動するのではないでしょうか。

確かに…おっしゃる通りです。

面接でやり取りをした面接官は、言葉の端々から寺原さんの「当事者意識のなさ」を感じ、頼りなさを覚えのではないかな。29歳といえば、リーダークラスの働きを期待されます。新人の育成も任せたいけれど、この人には難しいかな…と判断され、落ちてしまっていたのだと思いますよ。

そうですか…。

寺原さんは、たまたま出会った会社が2社とも特殊だったのだと思います。ここから巻き返していきましょう。新しい勤務先では、自分の仕事が周りにどんな影響を与えるのか、自分の役割が会社全体の何を担っているのか、当事者意識を持って取り組んでください。自分以外の仕事にも興味を持って、チーム、部署、ひいては会社全体がもっと良くなるには自分がどう行動すればいいのか、考える癖をつけてください。言われたことばかりをこなしてきた受け身の自分から、一歩踏み出してみましょう。そうすれば自分が何にやりがいを感じるのか、自分の得意分野は何か、見えてくるはず。組織の一員としての醍醐味も、もっと感じられるはずです。

わかりました。次の環境では、頭を切り替えて頑張ってみます！

ぜひ。次の職場は、機械商社なのですね。PCを分解して掃除してしまう寺原さんにはきっと向いているはず（笑）。新しい環境で、イキイキ活躍してくださいね。

EDIT

伊藤理子

DESIGN

マグスター

ILLUST

もりいくすお

PHOTO

平山諭

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