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(株)リクルートキャリア 門野友彦 1985年リクルート入社。企業内教育研修などの営業、企業向け組織人事コンサルティングを担当した後、リクナビNEXTの前身であるリクナビキャリアや、スカウトシステムの開発、運営に携わる。現在は、新たな人材マッチングサービスの企画・検討に注力。転職活動カウンセリング経験も豊富。 |
2014年11月19日

![]() 楠元啓介さん |
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大学卒業後、税理士事務所に勤務しながら税理士を目指して勉強を続けていたが、今年8月の試験に落ちたことを機に断念。一般企業の経理部門への転職を志し活動を続けているが、書類は通過しても一次面接ですべて落ちてしまい、原因がわからず悩んでいる。 | |
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大学時代に簿記に出会い、「なんて面白い世界なんだ!」と感動して卒業後、税理士事務所に入所しました。現在まで6年間勤務していますが、このたび一般企業の経理部門への転職を目指しています。ただ、応募書類は通過するものの、一次面接が突破できません。今までに15社から面接に呼んでもらったものの、全滅です。
そもそも、なぜ急に一般企業に転職したいと思ったのですか?

今まで仕事のかたわら、税理士を目指して勉強を続けてきました。税理士試験に毎年のようにチャレンジし続けてきたのですが、今夏の試験も落ちてしまって…。もうすぐ30歳ですし、すっぱりと税理士の道はあきらめました。…実は、月次や年次決算、原価計算などは大好きなのですが、税理士の仕事には不可欠な相続や確定申告などの業務はあまり好きになれなくて…。これらは個人向けが多いのですが、作成する書類は数枚で済んでしまうし、手ごたえが感じられないんですよね。好きな業務に没頭するならば、一般企業の経理だ!と考えたのです。
なるほど、筋が通っていますね。面接ではどんなことを聞かれ、何と答えていますか?
退職理由は必ず聞かれますね。なぜ税理士事務所から一般企業へ?と。その際は、「税理士事務所だと、クライアント企業へのアドバイス止まりであることに物足りなさを感じています。企業の内部に入り、経理担当者として利益率を上げるために尽力したい」と答えています。
具体的には、どういうことをやりたいのですか?
今のクライアント企業は、地場の中堅・中小企業がほとんど。小さいながらも地域密着で安定しているところが多いので、利益拡大意欲が乏しいんです。でも、経理の観点から見れば、ムダがすごくあったりする。経理の努力で、企業の利益率を上げることは十分可能なんです。…こういう思いを抱えながらジリジリしているよりも、自分が入って利益に貢献したいという思いが高まったんです。できれば、今担当している企業よりも規模が大きく、かつ利益を追求している企業に入り、経理部門から会社全体を支えたいですね。数字自体が大好きなので、「大きい企業で、より大きな数字を扱い、より難しい業務に関わりたい」という想いもあります。
なるほど。楠元さんの思いの強さはわかりました。でも、先ほどの退職理由は、応募先企業にはうまく伝わっていないようですね。今までの話をうかがっていると、想いの伝え方が少々回りくどい感じがするので、もっとストレートに想いを伝えたらどうでしょう?
ええ?どういうことでしょうか?
ストレートに…とは、何を伝えればいいのでしょう?
決算や原価計算は大好きだけど、相続や確定申告などは好きではないですよね?「好きな業務に没頭したいから、企業の経理に転職したい」で、十分筋は通ります。

え?確かにそれは本心ですが…ネガティブな伝え方になり、企業に悪い印象を与えませんか?
先ほどお聞かせいただいた楠元さんの退職理由は、本心からのものなのでしょう。ただ、今まで15社の面接に落ちてしまっているならば、伝え方を変えたほうがいいということになります。…経理担当として、企業の利益を上げたいという発言は勇ましいのですが、「経理って、細かい数字に向き合い続けなければいけない根気がいる地道な仕事。ウチには合わないのではないか?」「崇高な目標だけど、きれいすぎるな。本心かな…」などと感じてしまう企業も少なくないと思いますよ。それよりは、「数字が好き!簿記が好き!」「個人向けの業務は物足りない。難しい業務、分厚い書類作成、どんとこい!」と伝えたほうがわかりやすいし、楠元さんの個性も伝わると思うのです。だって、なかなか言えないですよ、こんなセリフ(笑)。
そ、そうですか(汗)。でも、本当に経理系の仕事が大好きなんです。額が大きければ大きいほど、「よーし、やってやるぞ!」と燃えてしまう。難易度の高い原価計算なんて、もう嬉しくて、嬉しくて(笑)。
いや〜聞けば聞くほど、楠元さんの個性が伝わってきます(笑)。その想いを企業に伝えないのはもったいないですよ。書類通過率は高いということですが、応募書類の段階から、自己PRとして書いておきましょう。楠元さんの個性が文面からも伝わり、「ぜひ会ってみたい」と思う企業が増えるはず。しかも、応募書類に書いておけば面接でも「そんなに数字が好きなの?」などと突っ込まれるでしょう。そうなったら、先ほどのように話に魂が乗り、相手に想いが強く伝わります。

なるほど…。確かに、15社の面接に落ちて閉塞感を覚えていました。今までの退職理由は本心ではありますが、ちょっと飾りすぎていましたね。もっとストレートに、想いをぶつけます。
ぜひ!そして、税理士の夢をあきらめたという今のタイミングは、絶好の転職タイミングと言えます。税理士はスッパリあきらめた、物足りなさを感じつつも「キャリアに必要だから」と頑張ってきた相続や確定申告もスッパリ止め、大好きな決算業務、原価計算などに没頭できる一般企業に移りたい…と、「今」転職活動する理由が明らかです。ぜひ、この一連の流れを、応募書類の始めにサマリーとして入れてください。企業側の納得度が、さらに高まるでしょう。
わかりました!…面接に落ち続けてすっかり自信をなくしていましたが、元気が出てきました!
それはよかった。楠元さんは、辞める理由と入る理由が明確であり、筋も通っています。自信を持って想いを伝えれば、内定は近いはずですよ。原価計算がお好きなのであれば、メーカーを中心にできるだけ多くの企業にアプローチしてみてくださいね。
思わぬ問題点を指摘されて、本当にびっくりしました。「相続や確定申告は物足りない」なんて言ってはいけないことだと思っていたのに、言うことで辞める理由と入る理由に筋が通ると発見できたのは収穫でした。これからは自分の気持ちを素直に伝えることで、経理職への熱意をアピールしたいと思います。(楠元さん)

- EDIT
- 伊藤理子
- DESIGN
- マグスター
- ILLUST
- もりいくすお
- PHOTO
- 平山諭