転職トップ > 転職成功ノウハウ > Dr.門野の転活悩み相談 > 1社でさまざまな業務を経験したため、何をアピールの軸にしていいのか悩む
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(株)リクルートキャリア 門野友彦 1985年リクルート入社。企業内教育研修などの営業、企業向け組織人事コンサルティングを担当した後、リクナビNEXTの前身であるリクナビキャリアや、スカウトシステムの開発、運営に携わる。現在は、新たな人材マッチングサービスの企画・検討に注力。転職活動カウンセリング経験も豊富。 |
2014年10月22日

![]() 柳沢謙一さん |
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大学卒業後、5年間の米国留学を経て、メーカーに入社。社内SEを3年務めた後、新規事業開発に3年、営業に5年間携わる。7月末で退職し、「海外」をテーマに転職先を探しているが、70社以上応募したものの書類落ちがほとんどで、面接に進んだのは数える程度。 | |
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大学卒業後、5年間アメリカの大学に留学。帰国後は中堅メーカーに就職し、この7月末まで10年超勤務しました。海外とやり取りする仕事や、海外赴任、海外出張が多い仕事など、「海外」をキーワードに求人を探していますが、ほとんど書類選考で落ちてしまいます。
なるほど。では、いくつか質問させてください。ご自身では、なぜ書類落ちが続いていると思われますか?

キャリアの「軸」がないのが原因ではないかと。前職に入社以来、社内SE、新規事業開発、営業と、ジョブローテーションでさまざまな業務を経験しました。短期間ですが、人事も兼務したことがあります。いろいろな部署を経験し、社内人脈が築けたのは私の財産ではありますが、「これが私の専門です」と自信を持って言えるものがないのです。
(職務経歴書を見ながら)…10年超の間で、海外に関するご経験はないようですね。10年以上経った今、改めて「海外に関する仕事に挑戦したい」と思ったのはなぜですか?
10年前、米国留学から帰国した時から、海外に関する仕事がしたいと思い続けていました。留学で異文化に触れたことで、自分が海外と日本のつなぎ役となって、日本のよさを海外に広めたり、逆に海外のよさを日本に取り込むような仕事ができたら…と思って就職活動をしたのですが、なかなか就職先が見つからず、前職にようやく拾ってもらったような格好です。当時の面接官だった事業部長が、「いつかは海外に進出したい」という夢を持っていたことも、前職に惹かれた要因でした。でも、今年37歳になり、40歳がそろそろ見えてきました。勤続年数10年という節目を超えたこともあり、今、チャレンジしないと絶対に後悔すると思い、踏み切ったのです。
では、7月末で退職を選んだのはなぜ?働きながら転職活動をする方法もあったかと思いますが。
実は昨年、私を採用してくれた事業部長が社長に就任しました。それを機に、いよいよ海外展開を実現させようという動きが高まり、「海外進出検討プロジェクト」が発足、私がそのプロジェクトのリーダーに抜擢されたんです。海外進出すべきかどうか、さまざまな調査をもとに一から分析したのですが、結果的に私は「今、海外進出すべきではない」というジャッジをしました。海外展開は社長の夢であり、私も関わりたいと望んでいたのですが…商品力、市場、ライバルの存在、自社の財務力…あらゆる角度から考えても、止めたほうがいいという判断しかできませんでした。「自社で海外に関する仕事に就きたい」という目標に、自ら幕を下ろした以上、ここは潔く辞めて次のステップに進むべきだと思ったんです。
なるほど…。ドラマチックなエピソードですね。何でそのエピソードを応募書類に書かないのですか?
え?海外進出したわけではなく、「海外進出の芽をつぶした」エピソードなんて、アピール材料にはなりませんよね?
そんなことありませんよ。これこそ、柳沢さんの最大の軸。ここを抜かしているから、応募先企業に柳沢さんの魅力が伝わっていないのだと思いますよ。
次のステップでは、海外に関係する仕事にどうしても就きたいのですよね?だから、覚悟を決めて前職を辞め、退路を断った。そこまでの強い「想い」が、応募書類から全く伝わってこないのです。

ど、どうすれば伝わるのでしょう…。
今教えていただいた「海外にかける想い」を、サマリーとして数行にまとめ、書類の冒頭でまとめておくことをお勧めします。…海外留学経験を機に、海外と日本との橋渡し役として、海外の魅力を輸入する、もしくは日本の魅力を海外に広める仕事に就きたいと思い続けてきたこと。前職の社長とともに、その夢を温めてきたが、いざ自分がプロジェクトリーダーとなって海外進出を本格的に検討した時に、どうしてもGOサインが出せなかったこと。前職で成し得なかった「長年の夢」をどうしても叶えたくて、初めての転職活動に臨んでいること…これらのエピソードすべてに、一本の「軸」が通っているじゃないですか。
なるほど、言われてみれば…。
企業が知りたいのは、応募者の「辞める理由」と「入る理由」、そしてその人の「個性」です。先のエピソードには、そのすべてが含まれています。海外の仕事にかける並々ならぬ想いが伝わることで、柳沢さんの個性も見えてきます。それに、社長とは同じ夢を持つ「同志」だったとはいえ、いち社員に海外進出の検討とジャッジも任せるなんて、一般的にはなかなかないことです。それだけ柳沢さんがみんなの信頼を得ていた証でしょう。「さまざまな業務を広く浅く経験してきた」ことを懸念していましたが、さまざまな業務を経験し、各部署で成果を挙げてきたからこそ、大事な決断を任されたのではありませんか?一部門しか知らない人に、会社の命運を分けるジャッジなんてさせませんよね?
そう言われれば、そうですね。社長にも「調査データを見ると、確かに難しそうだし、何より君が決断を下したのであればそれが正解なのだろう」と言っていただけました。誰の反対もありませんでしたし、それなりに信頼されていたのかな…。
もちろんですよ。この経験に自信を持って、書類の中でもしっかり説明してください。柳沢さんの魅力が伝わるエピソードですし、面接での会話のフックにもなるはずです。

改めて自分の書類を見返してみると、「海外に関連する仕事に就きたい」と言っている割には、海外に関する想いに全く触れていませんね。これでは書類選考に通るはずはないか…。応募書類の書き方見本どおりにまとめることばかりに注力して、肝心なことを見失っていました。
今の書類は、見出しが太字になっていたり、段落ごとにまとめられていたりして、デザイン的にはとても見やすいんです。でも、肝心の「柳沢さんの人となり」が見えてこないのが残念。先ほどのエピソードを少し追加するだけで、俄然見え方は変わってくるはずですよ。
ありがとうございます!書類を見た人事担当者が、「この人、面白そうだな。会ってみたいな」と思えるような、イキイキとした書類を目指します!
いいですね!その意気込みです。今の書類は、SE時代の仕様書のようなので、新規事業開発や営業の時の「企画書」や「プレゼン資料」作りを思い出して、ぜひ相手に想いが伝わる書類をまとめてみてくださいね。
自分の応募書類は、なかなか客観的に見られないものですね。Dr.門野に指摘されて初めて、肝心の「想い」が抜けていることに気づきました。初めての転職活動なので、フォーマット通りに書かなければという意識が強すぎたのだと思います。次のステップに強い想いを持って転職活動に臨んでいることを、エピソードとともに伝えたいと思います。(柳沢さん)

- EDIT
- 伊藤理子
- DESIGN
- マグスター
- ILLUST
- もりいくすお
- PHOTO
- 平山諭