転職トップ > 転職成功ノウハウ > Dr.門野の転活悩み相談 > 人事一筋17年。経験豊富にも関わらず書類落ちが続く
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(株)リクルートキャリア 門野友彦 1985年リクルート入社。企業内教育研修などの営業、企業向け組織人事コンサルティングを担当した後、リクナビNEXTの前身であるリクナビキャリアや、スカウトシステムの開発、運営に携わる。現在は、新たな人材マッチングサービスの企画・検討に注力。転職活動カウンセリング経験も豊富。 |
2014年9月10日

![]() 掛井明雄さん |
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中小企業、ベンチャーで一貫して人事全般の経験を積み、人事としてのキャリアは17年に上る。このほど、経験を活かして転職を目論んでいるが、書類落ち続き。すでに100社以上に応募しているが、1割程度しか面接に進めず、悩んでいる。 | |
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人事として17年間、経験を積んできました。勤務先は中小やベンチャーと小規模で、ほぼ一人で人事全般をこなしてきました。このたび、5年ぶりに転職活動を始めましたが、ほぼ書類選考落ちで悩んでいます。100社以上に応募し、通過率はわずか1割程度。面接に進んだところも、ほぼ一次面接で落ちてしまいました。

なるほど。ご自身ではどこに原因があると思われますか?
志望動機が甘いのだと思います。個社ごとに、「御社に応募した理由」をまとめなければならないとは思っているのですが、人事職であればほぼ片っ端から応募している状態。個社ごとの志望動機など考えられず、通り一遍のものになってしまっているのが現状です。
掛井さんは、在職中ですよね?そこまで転職を急ぐ必要はないのでは?ご自身の希望に合ったところに、じっくり応募をされてはどうでしょう。
いえ、実は一刻も早く転職をしたい事情があるんです。今の勤務先は、社員数30名程度のITベンチャーで、上司は社長です。その社長がとてもワンマンで、朝令暮改の指示にずっと振り回されてきたのですが、最近ではパワハラもひどくなって…。本当は今すぐにでも辞めたいですが、ブランクを作るのはよくないと思い、どうにか耐えている状況です。
そういうご事情でしたら、一刻も早く次を決めたいところですね。志望動機はどのように伝えているのですか?
今までずっと小さい組織にいて、一人で人事を任されてきたので、もっと大きな組織で、規模感のある仕事を手掛けてステップアップしたい…などとまとめています。もう社長直下の立場は嫌なので、「仲間と切磋琢磨できる環境がいい」とも伝えています。
うーん。ベテラン層の志望動機としては、少々頼りない印象を受けますね。「若手ならともかく、40歳の大ベテランに『うちでステップアップしたい』『仲間と切磋琢磨したい』と言われても」としり込みされているのかもしれません。
そうですか…。でも正直、自信を持ってアピールできるものがないんです。ずっと人事をやってきましたが、与えられた役割を淡々とこなしてきただけ。仕事にやりがいを感じたことはあまりなく、生活のためと割り切って働いてきました。だから、転職先に対しても、要望はほとんどなく、志望動機になるようなものがイメージできないんです。
なるほど…。しかし先ほどの志望理由は、ベテランらしさがなく取ってつけたような印象で、本音を言っていないことがありありと伝わってしまいます。掛井さんの場合は、本当の転職理由をズバリと言ってしまってもいいのではないかな。
え?社長がワンマンでパワハラを受けているということを、ですか??
ハイ。
人間関係を退職理由にすると、ネガティブな印象を与えてしまうと思うのですが…。
人間関係の悪さをそのまま伝えてしまっては、もちろんネガティブな印象になりますし、「同じ理由でうちも辞めてしまうのでは?」と思われる恐れがあります。でも、人間関係はあくまできっかけであり、「だからもっと自分に合った環境で働きたいと思った」と「入る理由」までしっかり伝えられれば、ネガティブな印象にはなりません。
どのように伝えればいいのでしょう?

その前に。掛井さんはビジネスパーソンとしてどんなことを大切にして、何を信条に、仕事に臨んでいますか?
うーん。自信を持って言えるような立派な信条はないのですが…こだわりといえば「やるべき仕事は、さいごまできっちり間違いなくやり遂げる」ぐらいでしょうか。どの仕事もそうでしょうが、人事も間違いが許されない仕事。採用業務は、応募者の人生を左右するものですし、会社の命運も変わります。給与業務は、大切な従業員の生活に関わるものであり、間違いや遅れは許されません。人材教育や研修も…。どんな小さな仕事でも、責任の大きさを理解し、まじめに取り組んできました。ちなみに、今の会社は私が入社した時はまだ創業して間もなくて、人事評価のテーブルもなかったのですが、私が一人で整備しました。ここが固まっていないと、社員のモチベーションは下がるし、採用もできないと思ったんです。
素晴しいご経験や、高い意識をお持ちじゃないですか。それを伝えればいいのですよ。つまり、「人事は、会社の成長や従業員の人生に大きな影響を与える重要な役割だと、プライドを持って取り組んできた。ワンマンな社長の朝令暮改の方針で、会社を支える人事戦略がコロコロと変わるのはよくないと思い、意見したところ、パワハラを受けるようになってしまった。しかし、これを機に、自分が活躍できる環境はどこか?と真剣に考えるようになった。ホームページ等を拝見したところ、御社は人事評価制度が整っていて、社員のスキルアップのための研修もさまざま用意されている。御社のような、社員を大切にする会社で人事として力を発揮したいと思った」などと伝えてはいかがでしょう?
なるほど、そう言われれば納得感がありますね。人間関係が嫌だから、ではなく、「これを機にこんな会社で働きたいという想いに気づいた」と伝えればいいのですね。

はい。「会社に注目した理由」は、人事制度以外にもいろいろな切り口がありますよ。「御社の商品、サービスの大ファンで、御社の根幹となる人事を支えたいと思った」「ホームページを拝見して、○○社長の理念に共感した。トップに共感できる環境で力を発揮したいという思いに気づいた」などでもいいでしょう。「出る理由」と「入る理由」が明確に伝えられて、かつそれに軸が通っていればいいのです。そのうえで、「正確さを意識して、どんな小さな仕事にも真剣に取り組むのが信条」「前職では、人事制度が全く整っていない状態からほぼ一人で整えた」などを自己PRとして伝えれば、掛井さんらしさが伝わりますよ。
わかりました。アドバイスをもとに、戦略を練り直してみます。
「人間関係を退職理由にするのはNG」という一般的なセオリーを忠実に守り、別の理由を一生懸命作っていました。しかし、それが逆効果とは…。「パワハラはあくまでキッカケである」という受け止め方ができていませんでした。今一度、出る理由と入る理由を整理したいと思います。(掛井さん)

- EDIT
- 伊藤理子
- DESIGN
- マグスター
- ILLUST
- もりいくすお
- PHOTO
- 平山諭