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(株)リクルートキャリア 門野友彦 1985年リクルート入社。企業内教育研修などの営業、企業向け組織人事コンサルティングを担当した後、リクナビNEXTの前身であるリクナビキャリアや、スカウトシステムの開発、運営に携わる。現在は、新たな人材マッチングサービスの企画・検討に注力。転職活動カウンセリング経験も豊富。 |
2014年2月12日

![]() 篠塚玲子さん |
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派遣社員として5社の経理業務を経験した後、正社員としてメーカーの経理職を6年間経験。昨年、今の会社に転職したが、ワンマン経営の社長に疲れ転職を決意。働きながら数社に応募したが、「転職歴が多い」などを理由に落ちてしまった。 | |
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派遣社員として5社の経理業務を経験した後に、5社目の会社に正社員登用され、約6年間勤務しました。マネージャーとして5名のメンバーを束ねるまでになったのですが、経営不振を受けて今の会社に転職しました。しかし、設立間もないベンチャーのためか、社長が非常に個性的で、ワンマン経営なんです。業務での苦労が絶えず、転職したいと思っているのですが、なかなか決まりません。
面接の場など、入社前には気づけなかったのですか?

はい…面接ではとても人当たりが良く、ワンマンだとは予想できませんでした。今の会社を選んだ理由は、地元にあるので落ち着いて長く働けそうだと思ったのと、小さい会社であればより経営者の近くで責任ある仕事を任されるからスキルアップできそうだと思ったからなのですが、実際は毎日がトラブル続きでバタバタ。社長の発言は絶対で、どんなに朝令暮改の指示でも対応しなければならなくて、社員の多くが疲れ切っています。それに、普段はワンマンで言いたい放題のくせに、言いにくいことがあると各部署とやりとりがある私に頼ってくるんです。まだ若い会社なので業務フロー自体が確立しておらず、その仕組み作りまで任されるし、そんな状況下なのに、社長に新経理システム導入プロジェクトの責任者を任命されるし…大誤算です。
なるほど、それは大変そうですね…。何社ぐらいに応募しているのですか?
忙しい業務の合間を縫っての活動なので、まだ10社程度です。そのうちの3〜4社から面接に呼ばれましたが、いずれの面接でも「転職回数が多いですね」と言われました。転職といっても、派遣社員時代のことですから多いのは当たり前ですし、しかも10年近く前のこと。何でそんな前のことを言われるのかわからず、毎回絶句してしまいます。
うーん、変な指摘ですね。そこは黙ってしまうのではなく、「派遣社員として経験を積んだ後、前職に正社員として採用され、6年のキャリアを積みました。マネージャーとして責任ある業務を任され、今も正社員として業務の中核を担っています」などと堂々とキャリアを主張したほうがいいですよ。…人事も、篠塚さんのそういう主張を聞きたかったのかもしれません。
なるほど。今のキャリアには自信を持っているし、さらにステップアップしたいという意欲もあるので、今度同じことを聞かれたら、しっかりと主張したいと思います。…でも、面接に落ち続ける過程で、転職していいのかどうかわからなくなってきてしまいました。というのも、今の会社に転職してまだ1年経っていないので、辛抱が足りないと思われてしまわないか不安ですし、今一緒に働いているメンバーはいい方ばかりなので、私が辞めることで迷惑をかけてしまうのも心苦しくて。とはいえ、社員みんなが社長の顔色をうかがっているという環境は何とも居心地が悪いし、もう41歳なので転職するならば早いほうがいいという思いもあって…。
今のご意見をうかがって思ったのですが…我慢できる範囲であれば、もう少し今の職場で頑張ってみてはどうかな?篠塚さんのキャリアのためにも、そのほうがいいと思いますよ。
そ、そうですか…!?
無理に続けろとは決して言いません。本当に辛くて、体を壊しそうなのであれば、すぐにでも転職をお勧めしますし、篠塚さんのキャリアであれば内定は近いと思います。でも、今の環境は篠塚さんの志向に合っているような印象を受けるのです。

そうでしょうか…。
まず、これは篠塚さんご自身も実感されていると思いますが、経理システムの全面入れ替えに、しかも責任者として関われる機会はそうそうありません。将来マネージャーの立場を目指すうえでも、経理のプロとして生きていくうえでも、経験しておいたほうがいい業務です。また、社長に振り回されているということですが、「業務フロー作りまで任される」「新プロジェクトも任せる」「言いにくいことを言うときは頼ってくる」など、篠塚さんのことを高く買っていることがわかります。「経営者に近い位置で、責任ある仕事を任されたい」という志向には、とても合っているのでは?
確かにその通りなのですが…ちょっとわがままで個性的過ぎて(苦笑)。
ベンチャーの社長というものは、多かれ少なかれそういうものですよ。立ち上げ期の今、自分が頑張らないと会社が立ち行かなくなると思っているので、不安だし、孤独だし、主張も激しくなりがちです。そういう社長をうまく「いなし」ながら、業務を回していく経験を積んでみてはどうかな。社長をうまくいなすには、経営者の目線に立つことが必要になります。設立間もないベンチャーの社長の視界に立ちながら、うまくサポートをして業務を円滑に回し、業務フローの整備やシステム導入を成功させた経験は、どんな会社においても高く評価されますよ。それに、居心地が悪い環境であれば、篠塚さんの働きで居心地のいい環境を作っていくという方法もあるのでは?もちろん、簡単にできることだとは思いませんが、上に立とうという人にはそれぐらいの気概が必要だと思いますよ。
なるほど…。確かに、今の環境はしんどいですが、「絶対に乗り越えられない壁」とまでは思いません。もう少し、頑張ってみたほうがいいのかな…。

「今の環境は、自分を成長させてくれる。市場価値を上げてくれる」と前向きにとらえてみてはどうかな。そして、まずは今から半年間頑張ってみて、そのときに半年前の今を振り返ってみましょう。きっと「今のほうがマシになっているな」と思えるはず。少しずつでも、篠塚さんの働きで現状が改善できていることがつかめたら、それが自信につながりますよ。
わかりました。もう少しだけ頑張ってみます。…でも、正直言って、経理業務には自信がありますが、業務フロー整備やシステム導入の責任者は初めての経験で…。途中で挫折してしまったら、転職難易度は上がりますよね?
そんなことはありませんよ。一生懸命未経験分野に取り組んだ経験は、篠塚さんの血となり肉となるはず。設立間もないベンチャーで経営者に近い立場で奔走した経験は、それだけで貴重だし、苦労を積んだ分だけ「面接の場でも自分の言葉で語れる」ようになります。面接担当者の心に響くアピールができるはずですよ。
少し勇気が湧いてきました。今の環境で、もうちょっと頑張ってみます。
転職活動はしていましたが、心のどこかに「今飛び出していいのか?」という迷いがありました。「社長が苦手、社内の雰囲気が辛い」という思いが強くて、実は自分の志向に合った環境であることを完全に見失っていました。しんどくなったら、「今を乗り越えたらスキルアップできる。ラッキー!」ぐらいに思うようにしたいと思います(笑)。(篠塚さん)

- EDIT
- 伊藤理子
- DESIGN
- マグスター
- ILLUST
- もりいくすお
- PHOTO
- 平山諭