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(株)リクルートキャリア 門野友彦 1985年リクルート入社。企業内教育研修などの営業、企業向け組織人事コンサルティングを担当した後、リクナビNEXTの前身であるリクナビキャリアや、スカウトシステムの開発、運営に携わる。現在は、新たな人材マッチングサービスの企画・検討に注力。転職活動カウンセリング経験も豊富。 |
2013年12月11日
浦崎芳美さん |
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美術大学4年生から新聞社の編集アシスタントのアルバイトを3年間続ける。大学卒業後は母校の研究室助手も務め、Wワークが2年間続く。2年前に退職し、イギリスに語学留学。今夏に帰国後、美術・芸術分野で就職先を探しているが、求人が少なく困っている。 | |
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大学4年生のときから3年間、新聞社の編集アルバイトを手掛けるかたわら、大学卒業後は通っていた美術大学の研究室助手としても働き、2年間ダブルワークをしていました。2年半ほど前に2つの職場を辞めて、語学留学兼アートの勉強のためにイギリスに留学。半年前に帰国し、転職活動を始めたのですが、難航しています。
どういう分野に応募しているのですか?
アルバイトはしていましたが、正社員として勤務した経験がないので、私がアピールできるのは美術やアート、デザインに関する知識。でも、美術系の求人がほとんどないんです。美術館の学芸員や、芸術系の財団法人などの求人を見つけたので応募しましたが、応募が殺到したようで、書類選考であえなく落ちてしまいました。これ以上ブランクを長引かせたくないので、美術系以外にも目を向けなければと思うのですが、何を目指せばいいのか見当もつきません…。
ちょっと話がそれますが、なぜダブルワークをしていたの?
大学時代は、マスコミ志望だったんです。でも、就職試験ですべて落ちてしまったので、アルバイト募集に応募しました。「たとえアルバイトでも働いてみたい!」と思ったんです。ただ、週3日ペースの勤務だったので、卒業後に母校から研究室助手のお誘いがあったときに「新聞社に出社しない日を埋められる」と思い、ダブルワークを決めました。
そんなにマスコミに進みたかったのですか!それはなぜ?
学芸部や文化部の、美術記者になりたかったんです。私は学生時代にデザインを専攻していて、通常パターンですと広告代理店や制作会社などを目指すのでしょうが、授業で美術やデザインに触れるにつれ、「今までの知識を売り上げや利益につなげるのではなく、人の心を豊かにする活動につなげたい」と思うようになりました。美術記者になり、力があるのにまだ注目されていない若きアーティストに光を当てて、世に送り出すような仕事ができたら、こんなに嬉しいことはないと思ったんです。自分が関わることで、相手が輝くような、そんな仕事が理想でした。
自分が関わることで、相手が輝く。いい言葉ですね!では、3年間のアルバイトも、学芸部や文化部系の部署で?
はい。希望通りの職場で働くことができました。やっていたことは、スケジュールを管理したり、記事に使う美術の文献や資料を集めたり、記事内容の裏づけを取るなど、デスクや記者のサポート業務ですが、とてもやりがいがありました。3つのグループにわかれていて、初めは1グループのアルバイトだったのですが、ほかの2グループのデスクからも「手伝ってほしい」と言われ、最終的にはすべてのグループのサポートを任されていましたね。週3日勤務が週5日になり…研究室助手のバイトもあったので、毎日休みなしで働いていました(笑)。
素晴らしい。そんなに必要とされるなんて、よほど仕事ができたのでしょうね!
でも、ほかでは活かしづらく、潰しがきかない経験だと実感しています。一から新しいキャリアを築き直すしかないのでしょうか?
プラスにならない経験など、一つもありませんよ。浦崎さんの今までの経験が、活かせる場所はいくらでもあると感じています。
本当ですか?
そもそも、美術やデザインの感覚は、あらゆる場面で活かせるものです。事務職であれば、資料のまとめ方や職場レイアウトなどに、営業職であればプレゼン資料作りなどに大いに活かせるはず。実際、浦崎さんもアルバイト先で能力を発揮されていたのでは?少し変わった例を挙げれば、介護の世界でもそうです。先日、高級アパレル会社の店長から介護施設に転職した男性にお会いしましたが、イマイチだった介護スタッフの制服をおしゃれに刷新してスタッフのモチベーションアップにつなげたり、入居案内パンフレットのデザインを見直して見やすさを向上させるなど、美的センスをいかんなく発揮されていました。美術とは程遠いと思われがちな環境であっても、美的センスは仕事の能率、効率を向上させるものです。まずはぜひ、ご自身のバックグラウンドに自信を持ってください。
そういう例もあるのですね…!
加えて、浦崎さんの仕事ぶりには、信念が感じられます。光が当たっていない人に光を当て、輝かせる仕事がしたいとマスコミを志望したのですよね?そして、新聞社のアルバイトでは、複数のグループから求められるぐらい、高い働きをされたとのこと。「自分が関わることで相手を輝かせたい」という、浦崎さんの基本スタンスがフルに発揮された結果なのではないかな?どうですか?
新聞社では記者やデスク、大学研究室では教授など、仕える相手がいかに仕事をうまく回せるか?に心を配ってきました。1を求められたら、できるだけ2や3で返すことを心がけました。その結果、皆さんがいい成果を挙げられたときに、やりがいを感じていましたね。…だから重宝がられたのかもしれません。
「自分が関わることで相手を輝かせたい」という基本スタンスをもとに、相手の立場に立って自分が何をすべきかを自然に考えることができる。しかも、求められたもの以上で返そうと努力する。これは浦崎さんの強みであり、アピールポイントです。これらをぜひ、応募書類の段階で自己PRとしてまとめてください。できれば、「自分が関わったことで、こんな成果が挙がった」というエピソードをつけ加えられれば、「縁の下の力持ち」としてより強くアピールできますよ。
なるほど…仕事に対するスタンスがアピールできるのであれば、応募先の視野も広がりそうです。
自分が関わりたいか、関わることでより良くできそうか。こういう視点で求人を見ていけば、「応募してみたい」と思えるものに気づけるのではないかな。そして、応募書類の冒頭で、サマリーとしてまとめましょう。「仕事で大切にしてきたスタンスを活かして、御社の業務をよりよく回せるようにしたい。かつ長く美術やデザインを学んできた美的感覚もこんな場面で活かせるのではないかと思っている」などと伝えれば、「会ってみたい」と思われる確率も高まりますよ。
わかりました!今までかなり視野が狭くなっていたようです。
浦崎さんは、話す時の言葉選びが的確で、話し方にも説得力があるから、日々のスタンスが仕事にしっかり活かされてきたことが伝わります。面接のチャンスが得られれば、内定も近いと思いますよ。ぜひご自身の経験に自信を持って臨んでくださいね。
アルバイト経験しかないこと、ダブルワークをしていたこと、そして直近2年は職に就かず留学していたこと…自分の経験がどれも中途半端に感じ、何をどうアピールすればいいのかと悩んでいました。今回、自分の強みに気づくことができ、気持ちが晴れました。仕事に対する基本スタンスを大切にして、再び転職活動に臨みたいと思います。(浦崎さん)
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