転職トップ > 転職成功ノウハウ > Dr.門野の転活悩み相談 > NGO団体から一般企業への転身を目指しているが、書類落ちが続く
![]() |
(株)リクルートキャリア 門野友彦 1985年リクルート入社。企業内教育研修などの営業、企業向け組織人事コンサルティングを担当した後、リクナビNEXTの前身であるリクナビキャリアや、スカウトシステムの開発、運営に携わる。現在は、新たな人材マッチングサービスの企画・検討に注力。転職活動カウンセリング経験も豊富。 |
2013年9月11日

![]() 原みのりさん |
![]() |
---|---|
大学卒業後、NGO団体に就職して丸7年。主に広報活動や機関誌の編集業務などに携わる。厳しい給与体系による将来不安などから、一般企業への転身を考えている。経験を活かせそうな広報や編集職へ応募しているが書類選考で落ちてしまう。 | |
![]() |
|
|
大学卒業後、あるNGO団体に就職。主に広報業務や、パンフレット・チラシなどの編集業務に関わってきました。約7年間勤務しましたが、このほど一般企業への転身を目指して転職活動を始めました。経験が活かせそうな、広報職や編集職に応募していますが、書類の段階で落ちてしまいます。
今までにどれぐらいの企業に応募しましたか?
約20社に応募し、面接に呼ばれたのは5社のみです。広報職、編集職のほか、広報としてマスコミや各種団体の窓口業務をしてきた経験が活かせると思い、営業職にもいくつか応募しました。結果的には、書類通過したのは営業職のみ。希望する広報、編集は全滅です。やはり、NGOという非営利団体から、一般企業というのは、難易度が高すぎるのでしょうか…すっかり自信をなくしています。

いえ、必ずしもそうは言えませんよ。現に、営業職ならば5社から面接に呼ばれているのですよね?原さんの経験はポテンシャルは十分に評価されていますよ。…そこでおうかがいしたいのですが、そもそもなぜ就職先にNGOを選んだのですか?
実は…恥ずかしながら、特に高尚な意識を持って選んだわけではなくて…。大学の卒論をまとめる際に、テーマに沿っていたNGOにいくつか話を聞かせていただいたのですが、そのうちの一つが今の団体でした。「もし興味があるなら、うちに来ない?」と言われて、確かに興味はあるし、数年間この分野で知識を高めるのもいいかなと思ったんです。そして、2〜3年勤めたら、一般企業に転職するつもりでした。
でも、気づいたら7年間になっていたわけですね。
はい。直属の上司が、とても熱血漢で仕事ができる人で、彼から学ぶことがとても多かったためです。入社してしばらく、私は仕事に対してとても受け身だったのですが、自分がこの団体を担っているという「当事者意識」を持つことを叩きこまれました。おかげで、自らやるべきことを見つける能動的な姿勢に転換できたと思います。また、それまでは、物事をストレートに受け止めてしまうタイプで、周りの意見をうのみにするきらいがあったのですが、「一つのことを多角的に見て判断する」姿勢も徹底して教えられました。学生の延長線上で安易に入社した私を、社会人として鍛えていただき、本当に感謝しています。
ではなぜ今、一般企業に転職したいと思ったの?
ちゃんとした組織を知りたい、そして利益をしっかり生み出せる環境を経験したいと思ったからです。NGOは、基本的に利益を出すことに価値を置いていません。うちの団体は特にその傾向が強いため、NGOの中でも給与水準が低く、せっかくスキルを積んだとしても「生活できない」という理由で人がどんどん辞めていくんです。団体の顔として活躍してきた有能な人も、家庭を持つことを考えると辞めざるを得ない。これってもったいないことだと思って。利益を生むって、社会生活において必要なことなのでは?でも、NGOにいる限りはそれを実現するのは不可能なこと。一般企業に行けば、それが叶えられると思ったんです。
なるほど…すごくごもっともな意見だとは思うのですが、自分ごとに聞こえないのですよね。本音を言っていないように感じてしまう。それに、「NGO=安定していない、一般企業=安定している」と言われているようで、違和感があります。そのあたりを、応募先企業は敏感に感じ取っているのではないかな。
そんなつもりはなかったのですが…。
転職活動では到底言えませんが、本音を言うと、私自身が「このままでは生活できない」と感じているのが大きな理由です。年収は額面で200万円ほど、いくら頑張ったところで、非営利団体にいる以上は大きな収入増は望み薄です。30歳が目前に迫り、もう少し収入面からの生活の安定を求めたいと思っています。それに、すべてのNGOがそうだとは思いませんが、稼ぐことが目的の団体ではないためか、組織管理、経営管理がゆるい部分があります。制度も人事も役割もなあなあで決まることが多いし、勤怠管理もずさん。永続的に残る団体とは思えず、一般企業に移ってビジネスの厳しさを体感しないとビジネスパーソンとして認められなくなるのでは?という危機感があります。
なるほど。すごく納得感がある理由ですよ。言い方は少し考えた方がいいですが、それを書類に書けばいいし、面接でも言った方がいいのではないかな。
お金のことなんて言って、マイナス評価になりませんか?

お金のことをストレートに伝えるわけではありません。お金をきっかけに、自分で利益を稼ぎ出す経験をしなければという危機感を抱いたのですよね?ならばお金のことから切り出した方が、話に筋が通ります。…NGOでの活動を通じて、自分で価値を生み出し、利益を上げる経験をしないと、これ以上のスキルアップも収入増も望めないという危機感を持った。転職した方がいいとはうすうす思いながらも、7年間も過ごしてしまったのは甘えがあったのかもしれないが、一人で広報活動を担い、自ら団体を担っているという当事者意識や、一つのことを多面的に捉えて広報する重要さは徹底的に叩きこまれた。その経験をベースに、新しい環境で一から自分を鍛え上げたいと考えている。…私ならばこのように、転職したいと思った理由と腹決めと覚悟を伝えるでしょう。このほうが、筋が通りませんか?
なるほど、確かにおっしゃる通りです。これらを書類にも書き入れた方がいいということですね。
はい。始めにサマリーとして入れておくと、担当者の目に留まりやすいですし、原さんの覚悟が伝わります。あと、職務経歴も少し手直しした方がよさそうですね。編集経験のアピールとして、「月1回の機関誌発行、マスコミ向けのプレスリリース作成」などが挙げられていますが、「作った」だけでは何のアピールにもなりません。何を伝えるため、どのように工夫して作成したのか、その結果どんな反響が得られたのかまで記すことです。これは、広報活動をアピールする場合も同じこと。ただ「やった」だけでは評価のしようがありませんが、「どういう問題にどう着目し、どう工夫を凝らしたのか」という経験は汎用スキルとなり得ます。

確かに…!今のままでは、単なるやってきたことの羅列ですね。すぐに書き直します。
…原さんの転職理由をうかがっていると、広報や編集職よりも、営業を目指した方が筋が通っているのではないかな。営業は、クライアントとコミュニケーションをとって課題を見つけ、自社の商品やサービスを用いて課題解決することで、自社に利益をもたらすという仕事です。さまざまな人と接し、正しい情報を伝えることに尽力してきた経験は、営業の仕事に活かせるし、「利益を生み出したい」という原さんの思いにも合致している。そもそも書類選考も通っていますし、そこを目指すのが近道なのではないでしょうか?
…興味はあるのですが…私に務まるでしょうか?少し自信がなくて。
ビジネスパーソンとして一から自分を鍛えたいという思いがあるなら、チャレンジして損はないと思います。一般企業の営業職として「自分の手でしっかり稼ぐ」という経験を積んだら、その後、企業の中で広報職などのステップアップを目指すのもいい。広告や印刷業界の営業という、より広報や編集というキーワードに近い業界を選んでもいいかもしれません。原さんはハキハキ快活に話すし、会話のキャッチボールもうまいから、向いている印象を受けますから、内定も近いのではないかな。もちろん、本当に編集をしたいのであれば、編集プロダクションなど「初心者歓迎」の会社に飛び込み、修業を積むという方法もありますよ。この二軸で転職活動を進めてみてはどうでしょう?
わかりました!
書類落ちばかりが続き、きっと書類のどこかが甘いのだろうと思いつつ、それが特定できずにいました。そもそもの私の覚悟や腹決めが足りなかったから、本音が伝わらずにいたのですね。もう一度自分の本音に向き合い、心からの思いを書類にぶつけてみたいと思います。応募先についても、キャリアプランとともに練り直してみます。(原さん)

- EDIT
- 伊藤理子
- DESIGN
- マグスター
- ILLUST
- もりいくすお
- PHOTO
- 平山諭