転職トップ > 転職成功ノウハウ > Dr.門野の転活悩み相談 > 俳優への夢をあきらめ、営業として就職を目指すが、うまくいかない
![]() |
(株)リクルートキャリア 門野友彦 1985年リクルート入社。企業内教育研修などの営業、企業向け組織人事コンサルティングを担当した後、リクナビNEXTの前身であるリクナビキャリアや、スカウトシステムの開発、運営に携わる。現在は、新たな人材マッチングサービスの企画・検討に注力。転職活動カウンセリング経験も豊富。 |
2013年7月10日

![]() 清水友樹さん |
![]() |
---|---|
大学卒業後、俳優を目指して養成所に入り演技の勉強を続けてきたが、オーディションを通過できず、30歳を前に断念。求人数が多く、未経験にも門戸を開いているところが多い営業職にターゲットを絞り、応募を続けているが、書類選考を通過するのは1割程度。 | |
![]() |
|
|
現在29歳ですが、この春までずっと俳優を目指して勉強していました。大学卒業後に俳優養成所に入り、運送会社のアルバイトで生計を立てながら暮らしていました。しかし全く芽が出ず、30歳が目前に迫ったことを期に夢をすっぱりあきらめ、就職活動をしています。でも、全然決まらなくて…。
どういう職種に応募しているのですか?
営業職です。本当は、事務などの地道な裏方業務が向いていると思うのですが、「29歳、未経験で事務は難易度が高い。未経験にも比較的門戸を開いている営業職に照準を絞っては?」とアドバイスされ、応募職種を変えました。でも、今までに20社以上に応募しましたが、面接に呼ばれたのは数社で…。自分で営業の素養があると思えないので、面接でもうまく自分をアピールできず、盛り上がらないまま落ちてしまいます。

確かに、未経験だと事務は競争率が高いですね。(応募書類を見ながら)職務経歴書では、アルバイト経験をアピールしているのですね?
はい。職歴と呼べるものはそれだけなので…。作業の効率化やチームワークなどをアピールしていますが、実際はほぼ一人でもくもくと荷物の仕分けをやっていた感じで。自信を持ってアピールできることがないんです。
なるほど。では、俳優を目指していたときのことを少し教えてください。
…え?は、はい。俳優養成所には、約7年間通っていました。その間、何度もオーディションを受けましたが、なかなか合格せず…。30歳が目前に見えてきた今年の春に、「次のオーディションでダメなら、俳優の道はスッパリあきらめよう」と決意し、今までのすべてをかけて臨みましたが…やっぱりダメでした。そこで踏ん切りがついたんです。
俳優の仕事の、どういう点にやりがいを感じていたのかな?
人の心を動かせたと感じたとき、でしょうか。養成所の先生に、「今の演技は心に響いたよ」と褒められたり、仲間に「このセリフに、こんな解釈の仕方があるんだね」と感心されたりすると、嬉しかったし、もっと頑張るぞ!と思えましたね。
「人の心を動かす演技」をするために、清水さんご自身はどんな努力や工夫をしてこられたのですか?
台本をしっかり読みこみ、与えられた役とトコトン向き合い、役になり切る訓練をしました。養成所の先生には、「台本は100回読み込め」と教えられましたし。
なぜ100回も?それだけ読み込むと、何が変わってくるのですか?
うまく言えないのですが、何度も読むと、役柄のとらえ方が明らかに変わってくるんです。台本に、文字で書かれていることの裏に隠れているものまで見えてくるというか…。役柄に対しての理解が深まるのを感じますね。
なるほど、よくわかりました。清水さんの場合、アルバイト経験よりも、俳優養成所時代のことをアピールしたほうが、営業としてのポテンシャルを感じさせることができるはずですよ。
ええっ?養成所時代のこと、ですか…?
確かに、7年にわたり打ちこんできたことではありますが、養成所経験は仕事にはあまり関係ないのでは?学んでいただけで、稼げていたわけではないですし…。

いえいえ、清水さんが7年もの間、魂を込めて打ち込んできたことでしょう?アルバイトよりも、たくさんの努力や苦労をして、たくさんのことを学び、吸収してきたのでは?
その通りではありますが…でも、何をどう言えば?
先ほど清水さんがおっしゃっていたことを、少し整理してみましょう。台本を読み込み、あらゆる役に入り込み続けてきたのですよね?役柄の立場、視界に立って、モノを考えるという訓練を徹底してきた。これは、ほかの人には経験できない、清水さんならではの強みです。しかも、その役柄の人が、どういう状態に置かれているのか、台本に書かれていない「セリフの裏」まで読み込み、どんな思いでこの言葉を発したのかまで、意味を考え続けてきたのですよね?
はい、その通りです。
営業は、単なるモノ売りではありません。「お客さんの課題を解決する」人です。例えば、マンションのモデルルームに来た人は、「マンションが欲しいから買いに来た」わけではありません。子どもが生まれて今の家が手狭になったから、通勤が楽な環境に移りたいから…など、それぞれの課題を解決する手段として、そのマンションに興味を持ったわけです。だからこそ、営業職には、お客さんが表に出していない「心の中に抱えているニーズ」までリーチできる力が重要。「相手の気持ちになり切り、セリフの裏まで探る努力をし続けてきた」清水さんは、十分に営業の適性があるといえます。

適性については、にわかには信じがたいですが…。役柄になり切り、役柄を正確にくみ取るトレーニングを続けてきたことは事実ですし、自分では自信を持っています。
いいですね。胸を張って言えることは、ぜひアピールすべきです。また、芝居は自分一人でやるものではなく、一つのシナリオを、演者みんなで協力しながら、形作っていくものですよね。周囲と協力し合い、調和を図りながら、一つの作品を作り上げた経験も、プラスに伝えられるはず。
確かに、チームワークには心を配ってきました。…アピールできることを、もう一度自分自身で考え、書類をまとめ直してみます。
ぜひ、そうしてください。単に「営業をやりたい」では、相手に思いは伝わらないし、清水さんの経歴では「消去法で応募している」と捉えられる恐れがあります。「営業しかないから」ではなく、「分野は違えど、今まで打ち込んできたことが営業に活かせると分析できたから」では、受ける印象は全く変わりますよ。
俳優養成所時代の経験がアピール材料になるとは、全く考えていなかったので、正直言ってまだ頭が整理できていません。でも、自分が打ちこんできたことに自信は持っているので、冷静に自己分析し、書類をまとめ直してみたいと思います。(清水さん)

- EDIT
- 伊藤理子
- DESIGN
- マグスター
- ILLUST
- もりいくすお
- PHOTO
- 平山諭