転職トップ > 転職成功ノウハウ > Dr.門野の転活悩み相談 > 書類は9割がた通るのに一次面接で落ちてしまう
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(株)リクルートキャリア 門野友彦 1985年リクルート入社。企業内教育研修などの営業、企業向け組織人事コンサルティングを担当した後、リクナビNEXTの前身であるリクナビキャリアや、スカウトシステムの開発、運営に携わる。現在は、新たな人材マッチングサービスの企画・検討に注力。転職活動カウンセリング経験も豊富。 |
2013年3月13日

![]() 江口友幸さん |
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システム開発会社、広告代理店など3社でSEを経験。さまざまなサイト開発やシステム開発などに携わる。2011年末に退職し、1年間アプリ開発で独立を目指したが挫折。再びSEとして就職しようと転職活動を始めたが、書類は高い確率で通るが面接がうまくいかない。 | |
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システム開発会社など3社で、SEとしてさまざまな経験を積んできました。前職の広告代理店では、大手クライアントの広告効果測定システムの開発プロジェクトをPMとして率い、実績を挙げました。スキルや経験には自信を持っています。しかし、書類通過率は約9割と高いものの、その後の一次面接が全く突破できないんです。

書類通過率9割ですか!それはすごい。なのに面接で落ちてしまうのは残念ですね…。ご自身では、落ちている要因はどこにあると分析していますか?
それが、わからないんです。いくつかの企業からは、落ちた理由を聞けたのですが、「まじめ過ぎるから」「スキルは申し分ないが、総合的に判断して不採用を決めた」などあいまいなものばかりで…。結局は私の人間性に問題があるのではないかと悩んでいます。
うーん、そんな印象は受けませんけどねえ…。面接ではどんなことを聞かれることが多いですか?
「自社でやってみたいこと」「数年後にどうなっていたいか」は多くの企業で聞かれます。私はユーザーの声をできるだけ汲んで、開発に活かしたいという思いを持っているので、主にそれを語っています。数年後については、「会社の根幹を担うような、裁量権の大きい仕事を任されるようになりたい」と話しています。技術面に対する質問も多いですが、「こういう案件ならば、これぐらいの工数でできる」など具体的な回答ができるので、感心していただけることが多いですね。
そのやり取りは、問題なさそうですね。(応募書類を見ながら)…職務経歴を拝見すると、前職をお辞めになってから1年ほど経っていらっしゃるのですね。この間は、どう過ごされていたのですか?
個人でスマートフォンのアプリ開発に勤しんでいました。パズルやゲームなど、娯楽系のアプリがメインです。スマホアプリのほうが、ユーザーの声を直接聞いてダイレクトにサービスに反映できると思ったし、「退職してアプリ一本に注力すれば、ビジネスにできるのでは」というもくろみもあったのですが…ダメでしたね。自分ではいいアプリだと思っているのですが、個人では多くの人に周知させるのは難しく、売り上げにつながりませんでした。
応募書類では、そのことに触れていませんが、面接で聞かれないのですか?
いえ、ほとんどの企業で聞かれます。そのため、どんなアプリを作っていたのか、プレゼン資料にまとめて、その場で説明しています。(資料を見せながら)この1年のブランクの説明になるので、アプリの魅力や工夫ポイントをまとめて、「自分にはこんなことができる」とプレゼンしています。
なるほど…なんとなく、江口さんが落ちてしまっている理由が見えてきました。
え?な、何が原因なんでしょうか??

今までの話から、江口さんがなぜ「再び組織に属して働きたい」のかが見えてこないんです。一度は独立の道を選んだのに、なぜまた、戻るのか。このエネルギーが伝わらないことには、企業は「うちで本気で頑張ってくれるだろうか?また辞めてしまうのではないか?」と不安になります。
理由はちゃんとあります。会社勤めのときは、開発メンバーだけでなく、営業やデザイナー、クライアント、ときにはユーザーなど、さまざまな人とのやり取りがあり、その中から新たなアイディアが生まれることもありました。一人になって痛感したのは、一人だと仕事に広がりがなく、斬新なアイディア、発想が生まれにくいということ。再び組織に属して、いろいろな立場の方々と意見交換し、切磋琢磨しながら、ユーザーの声に高レベルでこたえられるものを生み出したいという思いが強まったんです。
なるほど、そう言われれば、伝わりますね。…はっきり言ってしまえば、この1年、個人で手掛けてきたビジネスは失敗に終わったわけですよね?アプリ開発で成功するという夢に挫折し、「組織で働いてこそ新しいアイディアも浮かぶんだ」という気づきがあって、また戻ろうとしている。この一連の心の移り変わりを、企業は知りたいんだと思います。また、なぜアプリ開発が失敗に終わってしまったのか、「振り返りができているか」も知りたい。アプリの内容自体が問題だったのか、それとも周知の仕方に問題があったのか、購入者をハマらせる追加サービスに欠けていたのか。この振り返りをしっかり行ったうえで、例えば「この失敗経験で、○○の重要さに気づきました。御社では○○に注意しながらユーザーの声をしっかりつかみ、さらに良いものを生み出したい」と言われれば、話に一本の軸が通ります。
なるほど…。この1年を無駄な時期だと思ってほしくなくて、アプリのよさや、自分の努力、工夫点ばかりを無理にアピールしていました。

どんな結果に終わった過去であれ、過去に無駄は一切ありませんよ。さまざまな過去を積み上げた先に、今があり、未来があります。――江口さんのお話をまとめると、前職で働くなかで、もっとダイレクトにユーザーの声に触れたいという思いを持ち、独立する道を選んだものの、自分一人ではなかなか周知することができず、夢は頓挫してしまった。ただ、組織の中でさまざまな立場の人と意見交換することで、新しいアイディアや発想が生みだせていたんだと気づくことができた。だからこそ、ユーザーの声を大切にしていると思う会社に入社し、今までのプラス、マイナスすべての経験を活かしてよりよいものを生み出したいと思った。…こういう流れになりませんか?過去、今、未来、つながっていますよね?
おっしゃる通りです。こうやって整理していただくと、確かにストーリーとして一つにつながっていると感じます。私の今までのアピール方法だと、すべてがブツブツ途切れていた気がします。
書類は通っているのですから、経験やスキルには問題はないはず。おそらくこの「なぜ、再び組織に戻りたいのか。そしてなぜ、うちなのか」が伝わり切れていなかったことが、企業に二の足を踏ませたんだと思います。1年の経験を客観的に振り返り、今の想いとつなげて、企業に伝えてくださいね。
ブランクがあるからこそ、自分の強みを最大限アピールしなければと気負いすぎていました。今までのアピールの仕方だと、自分の行動に筋が通っていませんでしたね。自分では気づけませんでした。自分の過去を今一度じっくり振り返り、アピール方法を変えたいと思います。(江口さん)

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