転職トップ > 転職成功ノウハウ > Dr.門野の転活悩み相談 > 営業から商品企画職に転身したいが、なかなか内定が得られない
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(株)リクルートキャリア 門野友彦 1985年リクルート入社。企業内教育研修などの営業、企業向け組織人事コンサルティングを担当した後、リクナビNEXTの前身であるリクナビキャリアや、スカウトシステムの開発、運営に携わる。現在は、新たな人材マッチングサービスの企画・検討に注力。転職活動カウンセリング経験も豊富。 |
2012年11月28日

![]() 古賀美幸さん |
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新卒で医療機器メーカーに入社し、営業として約5年間勤務。学生時代からの憧れだった商品企画職に就きたくて転職活動をしているが、面接に進んでも「営業のほうが向いているのでは?」と言われ、落ちてしまうことが多い。 | |
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学生時代からメーカーの商品企画職に憧れていました。とはいえ、いきなり企画の仕事に就けないことはわかっていたので、まずは社会人として経験を積もうと、医療機器メーカーに入社し、営業として5年間頑張ってきました。納得できる成績も収め、営業として現場の貴重な声を吸い上げて商品化につなげる経験もできたので、商品企画職へと転身しようと転職活動しています。でも、どうにも企業の反応が芳しくなくて…。

どういうところに応募しているのですか?
一般消費財や化粧品メーカーを中心に応募しています。以前から興味を持っていた業界ですし、商品イメージも湧きやすいので。でも、せっかく面接に進めても、「キャリアがもったいない。営業のほうが向いているのでは?」「うちの営業には興味はない?」などと言われることが多いんです。確かに、私は商品企画職は未経験ですが、5年間、営業として努力し続けた経験が商品企画に活かせるとようやく思えたので、応募をしているのに…。あまりに営業、営業と言われすぎて、気持ちが萎えています。
確かに商品企画には、現場の声が重要だとは思いますが、なぜ今、商品企画への転身を志したのですか?
小さいものではありますが、新しい商品を自分の手で企画し、世に出すことができたからです。看護士の方々の声を聞く中で、医療現場においても高齢者用の介助機器が必要だと感じ、経営陣に直談判したところ、ゴーサインが出たんです。他エリアの営業担当者も巻き込んで現場リサーチを行い、一から企画立案し、製造ラインとの交渉を重ねて、販売にこぎつけたときは本当に嬉しかったですね。普段私が売っている医療機器に比べると額はごくごく小さいのですが、現場の方々には喜ばれ、それなりに売り上げを上げることができました。「新しい事業の芽を生んだ」ということで、社長賞もいただきました。
すごいじゃないですか。それってもはや、未経験者ではなく、「商品企画経験者」ですよ。もっとアピールすべきではないですか?
書類にも書いていますし、面接の場でもアピールしています。それでも「営業が向いている」と言われてしまうのが、納得いかなくて…。
古賀さんは、ハキハキした話し方と、自信にあふれた表情で、第一印象がとてもいい。だからこそ、高い営業実績と相まって、「商品企画よりも、うちの営業に来てくれればすぐに成果を挙げてくれそうだ」と期待されがちだとは思います。でも、それよりも、狙っている応募先の筋が、古賀さんのご経験とは少し違うような印象を受けますね。だから、ほかの経験者に競り負けているのではないかな。
筋、ですか??

古賀さんが経験された商品企画は、「クライアントである医療現場の方が抱える問題点に気づき、それを改善するために、世の中にない新しい商品を企画する」という流れですよね。でも、古賀さんが志望している一般消費財や化粧品といったメーカーでは、「世の中にないもの」は、もはやほとんどありません。そういう業界における商品企画の仕事は、どちらかというと、競合他社がひしめく中で少しでも消費者にアプローチできるプロモーションを考え、CMを打ったり販促をかけたりといった方向に比重が置かれます。古賀さんの経験を評価して面接に呼んだものの、比較的近しい業界で商品企画としての経験を積んできた「メディアに精通している人」や「プロモーション経験が長い人」に競り負けているのだと思います。こういう人のほうが、即戦力ですからね。
確かに、そう言われると私は「筋」が違いますね…。
でも、古賀さんのご経験はとても貴重ですよ。現場の「不」を見逃さず、しっかりと拾い上げ、周りを巻き込みながら、その「不」を解消する商品を企画する。消費低迷の折、「プロモ型」の企画職よりも、新しいビジネスの芽を見つけられる企画職のほうが、評価されるはず。応募先を少し変えるだけで、企業の反応はガラリと変わるはずですよ。
なるほど…確かにそうですね。別の業界に切り替えようと思います。
「別の業界に切り替える」のではなく、「別の業界にも視野を広げる」でいいと思いますよ。確率は下がるとは思いますが、一般消費財や化粧品メーカーへの応募も続けましょう。ただ、そのときにお勧めしたいのは、「高齢者向け」というキーワードです。
高齢者向け?それが評価されるのですか?
5年間も医療機関への営業を続け、現場の看護士ともリレーションが取れている。そして、現場のニーズをくみ上げ、「高齢者向けの介助機器」を企画した。つまり、高齢者の医療現場について豊富な知見を持っているということですよね?
確かに、そうですね。医療現場はどうしても、高齢者が多いものです。営業で顔を出すたびに、高齢者を「介護しつつ看護する」看護士のさまざまな苦労を目の当たりにしてきました。また、新商品を企画したときには、高齢者の患者さんとコミュニケーションを取りながら詳細を詰めていった経験もあります。
少子高齢化による内需縮小により、どの企業も海外に活路を見出そうとしています。そんな中、国内における唯一といっていい「伸びしろ」は、高齢者。一般消費財や化粧品メーカーも、高齢者をキーワードにした新しい商品開発には力を入れているはず。そこを突くのです。…私なら、このようにアピールしますね。「私は5年もの間、医療現場を回り、高齢者を相手にする看護士の苦労を見続けてきました。実際に高齢者の方々とも多数触れ合ってきました。その結果、高齢者向けの新商品を企画し、世に出し、ヒットをあげることができました。この経験と人脈は、御社の高齢者向け商品企画・開発においても必ず活かせるはずです」。いかがでしょう?
なるほど!このような切り口がアピールになるとは思っていませんでした。視野を広げつつも、できることは何でもやってみます。

ぜひ。あと、応募書類も少し書きかえると、通過率がもっと上がるのではないかな。学生時代から商品企画を志しながらも、「まずは現場を知ることが重要だ」と思い、営業職に就いたのですよね?そこでしっかり経験を積んで実績も挙げ、「今ならば商品企画として力を発揮できる」と自信を持てたから、行動に移した。非常に筋が通っています。それを書類の冒頭に、サマリーとして記しておきましょう。そうすれば、単なる憧れで応募してきた人とは違うことが初めに伝わり、その後の経歴の見方もガラリと変わるはずですよ。
わかりました!書類ももう一度、見返してみます。
実は、商品企画の経験にはそこまで自信を持てていなかったんです。額も小さいですし、営業の合間に行っていたことなので。でも、貴重な経験だと言われて、自信が持てました。経験がフルに活かせる商材を探しつつ、今までの応募先にもアプローチ方法を変えて臨みたいと思います。(古賀さん)

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