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(株)リクルートキャリア 門野友彦 1985年リクルート入社。企業内教育研修などの営業、企業向け組織人事コンサルティングを担当した後、リクナビNEXTの前身であるリクナビキャリアや、スカウトシステムの開発、運営に携わる。現在は、新たな人材マッチングサービスの企画・検討に注力。転職活動カウンセリング経験も豊富。 |
2012年10月3日

![]() 森尾佳織さん |
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昨春に大学を卒業し、教育関連会社に入社。英語講師兼営業として勤務し、好成績を収めるが、激務に耐えきれず1年後に退職。英語力を活かせる仕事がしたいと、貿易事務に照準を絞って転職活動しているが、なかなか希望通りの会社から内定が得られない。 | |
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激務に耐えきれず、初めの会社を1年でお辞めになったのですね。どんなお仕事だったのですか?
学習塾で、中高生向けの英語の講師をしていました。講師の仕事は夕方から夜にかけてなのですが、朝から授業の予習や生徒の答案添削、その後は新規勧誘のためのロープレや電話営業ととても忙しく、毎日深夜まで働いていました。休日も説明会などに駆り出されることが多く、ひどいときには13連勤、月の残業は150時間を超えまして…。

それはあまりにハードですね…。なんでその会社を選んだの?
大学時代に1年間留学していたのですが、戻ってきたのが大学4年の12月だったんです。それから就職活動を始め、初めに内定をもらえたのが前職でした。英語が活かせそうだし、何より内定が得られたことにホッとして、すぐに決めてしまいました。入社後、すぐに「もっとよく考えて決めればよかった…」と思ったのですが、「せっかくなら成果を残してから辞めよう」と思い直し、1年間、講師の仕事も新規勧誘の仕事も、手を抜かずに頑張り抜きました。その結果、年間の新規会員獲得数で100人中5位に入ることができたんです。それで「もう限界だ」と今年の春に退職しました。
厳しい環境の中、よく頑張り抜きましたね。そして、次はどんな仕事に就きたいと思っているのですか?
英語力を活かせる仕事に就きたいと思い、貿易事務を中心に応募しています。でも、書類は5割がた通るのですが、面接がうまくいかなくて…。
どんな質問をされることが多い?
一番多いのは、「なぜ貿易事務に転身したいの?」ですね。「留学先で、日本製品を目にする機会があり、輸出入に興味を覚えた。貿易実務を勉強して、日本と外国のパイプ役になりたい」と答えていますが、反応が悪くて…。やはり貿易事務の経験がないとダメなのでしょうか?
経験は関係ありませんよ。森尾さんはまだ25歳。ポテンシャルが評価される年齢です。厳しい環境で頑張り抜いた経験も高く評価されるでしょう。しかし、いかんせん志望動機が弱いですね。「出る理由」と「入る理由」を明確にしないと、面接はうまくいきませんよ。
出る理由、入る理由…ですか?
まずは「出る理由」。これは、前職を辞めた理由です。書類の段階で、この説明がされていないのが気になりますね。森尾さんの場合は、留学のために十分な就職活動ができなかった、入社後に方向性の違いに気づいた、労働環境が厳しすぎた…という「出る理由」が明確なのですから、書類でしっかり書いておきましょう。
辞める理由を書くと、ネガティブに捉えられませんか?

森尾さんは厳しい労働環境の中で、やり切って成果を出したという「実績」があります。これが何よりの強みです。決して「逃げの転職」ではないのですから、書類の段階で書いておいたほうが、面接がスムーズに進みますよ。やりたいことがわからぬまま、英語力が活かせるというだけで就職先を決めた。でも、労働環境があまりに厳しく、事前の研究不足だったと入社後に気づいた。しかしその中、自分なりに1年間頑張り抜き、成果も挙げることができた。だから次のステップに進もうと決意した…。このように記しておけば、出る理由が明確に読み手に伝わります。
確かに…。
次は「入る理由」を明確にしましょう。つまり「志望動機」のこと。英語を使う仕事はたくさんありますが、なぜ貿易事務がいいと思ったの?
英語の読み書きは得意なのですが、ビジネス会話はまだ不安があるので、外資などでバリバリ働くイメージは湧きません。そして、いくら英語を活かせても、営業は労働時間が長いイメージがあるので避けたいと思っています。今持っている力で、無理せず長く働けそうな仕事…と考えたら、貿易事務だったんです。
うーん、自分の中で無理に折り合いをつけているように感じますね。そもそもなぜ、仕事で英語を使いたいと思うのですか?
海外の人とコミュニケーションを取るのが、純粋に楽しいからです。日本人同士だと、なかなか本音で話しにくいものですが、海外の人は違います。本音をバシバシ言うし、歯に衣着せずに批判も言うけれど、今まで気付かなかった視点を得られるし、刺激を受けるんです。前職では、相手に合わせ、周りに合わせて、自分を抑えながら頑張り抜いてきました。だから今度は、海外文化に触れられる環境で刺激を受けながら、自分を殺すことなく、イキイキ働きたいと思ったんです。
なるほど。そう言われたほうが納得感がありますね。「このような環境で、仕事がしたい。だから、得意の読み書きを活かせる貿易事務を志望しました。ゆくゆくは、海外に関わるどんな仕事にもチャレンジし、スキルアップしていきたい」と伝えれば、立派な志望動機になります。ぜひこれを、書類の段階で書いておきましょう。先ほどのように「今の力が活かせる範囲で…」などと言われると、森尾さんの年代の最大のウリであるポテンシャルが伝わりませんからね。今は会話に不安を感じていても、入社後にどんどんいろいろなことに挑戦して成長していきたい!という意欲を伝えることが大切ですよ。
…成長したいという思いはもちろんあるのですが…実はそれを言葉にするのがすごく不安なんです。成長するためには、また過酷な仕事に耐え、乗り越えなければいけないのではと思うと、本当にこわくて…。またあんな毎日を経験するぐらいならば、成長したくないとすら思ってしまいます。

1年間、本当にお辛い中、頑張って来られたのですね…。ただ、企業側から見れば、成長意欲のない人に何年も同じレベルの仕事をされては困ってしまいます。成長意欲に欠けると思われてしまっては損ですよ。それに、どんな仕事にも、その仕事ならではの成長の仕方があります。例えば、毎日同じ伝票処理の仕事だったとしても、「質の向上」や「時間の効率化」に務め、それを実現したときに「成長」があります。どうか成長という言葉を怖がらないでください。それに、過酷な労働を強いる会社は、今のご時世、ごく稀ですよ。たとえ、森尾さんが別の会社の営業職に就いたとしても、「ああ、前職より楽だ」って感じるのではないかな(笑)?
そうですか?(にっこり)
いいですね。面接でもぜひ、その笑顔でいきましょう。次の環境に構え過ぎることなく、肩の力を抜いて。「今が本当の就職活動期間なんだ」と考え、いろいろな企業を見てみるのもいいかもしれませんよ。
自分でも、「こんな志望動機でいいのか」とモヤモヤしていましたが、今回Dr.門野に指摘されて明確になりました。出る理由と入る理由の部分も、とてもわかりやすかったです。書類に書いておくことで、面接でも話しやすくなりそうですね。もう一度、仕切り直して頑張ってみます。(森尾さん)

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