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(株)リクルート 門野友彦 1985年リクルート入社。企業内教育研修などの営業、企業向け組織人事コンサルティングを担当した後、リクナビNEXTの前身であるリクナビキャリアや、スカウトシステムの開発、運営に携わる。現在は、新たな人材マッチングサービスの企画・検討に注力。転職活動カウンセリング経験も豊富。 |
2011年9月14日

![]() 上浦政人さん |
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ゲーム会社で、ゲームバグを見つけるデバッグ業務を5年間担当。その間、ゲーム演出や効果音の作成など業務範囲を広げてきたが、経営不振によるリストラで昨年末に退職。同業でデバッグ担当の仕事を探しているが、書類の段階でほとんど落ちてしまう。 | |
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昨年末まで5年間、ゲーム会社に契約社員として勤務していました。「デバッグ」という、コンピュータプログラムのバグを探して取り除く役割を担当し、ゲーム全体の精度をチェックし向上させる立場に誇りを持っていました。そのうち、ゲーム演出の一部や、効果音の作成も任されるようになり、忙しくも充実した日々を過ごしていたのですが、会社の経営不振で契約社員全員がリストラに遭ってしまいまして…。今年に入って職業訓練を受け、春以降ずっと転職活動を続けているのですが、なかなか内定が得られません。
どういうところに応募しているのですか?

ゲーム業界です。経験がストレートに活かせるデバック担当の募集があれば、すかさず応募しているのですが、なぜか書類で落ちてしまいます。経験の浅いゲーム演出や効果音作成に応募しているのであれば、書類落ちになるのもまだわかるのですが、デバッグは経験も長いし自信も持っている分野なので、せめて書類は通ってもいいんじゃないかと思うんです。なぜダメなんでしょうか?
では、今の職務経歴書の内容に、何らかの理由がありそうですね。…上浦さん、自分が応募先企業の社長だと思って、この職務経歴書を見てみてください。どんな印象を持ちますか?
えっ!?社長として、ですか?うーん、難しいな…。文字がびっしり書かれているので、ちょっと読みにくいと思うかな。あとは…年月日を揃えて項目を整理して書いてあるので、まじめな人で、形式ばったモノが作れそうだという印象を持ちますね。
どんな仕事なら、任せられそうだと思う?
デバッグの経験が長いようなので、ある程度の業務は任せられそうかなと。
なぜ「ある程度」だと思ったんでしょう?
うーん…(熟考)。文字が細かいので「デバッグ」というキーワードにしか目が行かなかったですね。デバック担当としてどんな業務を行っていたかという、細部まで読み込む気になれませんでした。
採用側の視界で書類を見ると、自分ができること、やりたいことが伝わっているかどうか判断できます。上浦さんは、「デバッグがある程度できて、形式ばったモノが作れる人」という印象を与えたいわけではなく、「デバッグなら自信がある、任せろ!」と伝えたいんですよね?でも、今改めて読んでみて、そういう印象を得られなかったならば、今の書類では思いを伝え切れていないことになります。私が読んだときも、同様の印象を受けました。何が上浦さんの一番の売りなのか、伝わってこないんです。
なるほど…どうすれば、うまく伝えられるのでしょう?
その前に、いくつか質問させてください。バグをこつこつ見つけ出すデバッグの仕事って地道でしんどいという印象があるのですが、上浦さんはどんなところに面白味を感じているの?

確かに、客観的に見れば地味で面白みがない仕事に思えるかもしれませんね(笑)。ゲームの初めから終わりまですべてをチェックし、不具合を見つけては開発部署に報告するのですが、それが修正され、完璧な形でまた戻って来たときに何とも言えない喜びを感じますね。自分の発見によりバグがなくなった姿を見ると、「ああ、これで自信を持って世に出せる」と心から満足できるんです。
いい話じゃないですか。この価値観が、上浦さんの強みだと思います。デバッグ担当がいないと、いいものは生まれないし世にも出せない。だからデバッグにこだわっているんですよね?
はい、その通りです。仕事をするうえで、人間誰しも失敗や間違いをすることはあります。でも、私を通して出すゲームでは、絶対にバグは出しません。「デバッガーがバクをスルーしてどうする!」といつも思っています。…こだわりの強さのせいで、ミスしまくりの新人に厳しく教育しすぎて、嫌われたこともあるんですけどね(苦笑)。
今の「デバッガーがバクをスルーしてどうする!」っていうの、いい言葉だなあ!すごく気持ちがこもった言葉でしたよ。今話してくれたような「デバッグの楽しさ、やりがい、こだわり」が書類に一切書かれていないのが残念です。この部分は、志望動機にもつながります。「デバッグ業務にやりがいを持って取り組んできたし、バグを見すごさない自信も持っている。自分が関わることで、御社のソフトをさらに磨けると思うし、今よりもっと品質を高めることに貢献できる」と伝えられれば、非常に信頼性があるし、話に筋が通りますよね?
そうです、その通りです。こう書いてあれば、私らしさが伝わりますね。
特に得意な分野なども、入れられるといいですね。挙げられるものはありますか?
全般的に自信はあるのですが…CG作成の経験があるので、絵のチェックは得意ですね。二次元のCGを見て、この部分のパース図は何かおかしい…などと気付くことができます。本を読むのも好きなので、テロップなど文字の誤字脱字チェックも強いです。
ぜひ、それも書き入れましょう。もし応募先企業が、CGや文字のミスに少なからず課題感を持っていたら、「会ってみたい」と思うでしょう。
はい、私が社長だったら絶対そう思います。
「デバッグができる」だけしか書かれていないと、デバッグ経験者すべてがライバルになりますが、「できる」だけでなく「こんなこだわりがある」「こんなスタンスで臨んでいる」「こんな分野に特に強みがある」まで説明されていると、書類を見るだけで上浦さんのイメージが明確に湧いてくる。この人が入社したら、こんな活躍をしてくれそうだという想像ができるようになるんです。
わかりました!さっそく、まとめ直してみます。

書類に書かれていれば、面接でもこの「こだわり、スタンス、強み」をベースに会話ができます。上浦さんの得意分野だから、質問されてもきっと自信を持ってスムーズに答えられますよね?要は、書類に「自信があるから聞いてほしいこと」を盛り込み、ワナを張っておくんです。上浦さんは演出もやっていたそうだから、得意でしょ?(笑)
(笑)今までの面接では、仕事に関してほとんど聞かれず終わることもありました。なぜだろうと思っていましたが、何を質問すればいいのか、書類の中に手がかりが見つけられなかったのですね。
その通りです。書類を見直すことで、書類通過率だけでなく、面接通過率も高まるはずですよ。先ほどの「こだわり、スタンス、強み」を、職務経歴書の始めにサマリーとして数行程度でまとめておきましょう。そうすれば、上浦さんという人を理解したうえで、職務経歴というファクトを読み進められるから、よりスキルの理解度も深まりますよ。
なぜデバッグ担当の募集でも書類落ちするのだろう…と疑問に思っていましたが、その理由が明らかになり腹落ちできました。書類のできが面接にまで影響するとも思っていませんでした。さっそく自分のこだわりや強みを書類に盛り込み、再挑戦します。(上浦さん)

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