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(株)リクルート 門野友彦 1985年リクルート入社。企業内教育研修などの営業、企業向け組織人事コンサルティングを担当した後、リクナビNEXTの前身であるリクナビキャリアや、スカウトシステムの開発、運営に携わる。現在は、新たな人材マッチングサービスの企画・検討に注力。転職活動カウンセリング経験も豊富。 |
2011年8月31日

![]() 町田佐織さん |
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大学卒業後システム開発会社に入社し、発注事務とシステム監視業務を担当。3年間勤めた後に退職し、公認会計士の勉強に専念。しかし、4年にわたり挑戦したが合格できなかったため、今年6月より就職活動を開始。未経験OKの経理に応募しているがすべて書類で落ちる。 | |
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新卒で入社したソフトウェア開発会社を3年で辞め、公認会計士の勉強を丸4年間続けました。でも合格には至らず、今年6月の試験結果を見て断念。就職活動をスタートしました。未経験OKの経理事務職に応募していますが、今のところ書類の段階で全敗です…。
なるほど。そもそもなぜ、会社を辞めてまで公認会計士の勉強をしようと思ったのですか?

「利益構造、コスト構造を把握することで、企業の体質改善、業務改善に貢献したい」と思ったからです。――前職では「発注事務」という、発注書や請求書の作成に携わる部署にいたのですが、そのときにふと自社ソフトウェアの原価率について興味を覚えたのがそもそもの始まりでした。当時、会社の業績低迷が続いており、各社員に徹底したコスト削減が命ぜられていましたが、具体策までは下りてきませんでした。全社的に業務自体は忙しく、これ以上の人員削減や残業時間の大幅な短縮は難しい。となると、抜本的な対策としては、原価を削るしかない。そこで自社ソフトウェアの利益構造や、開発にかかるコストを独自に調べ始めたんです。とはいえ、いち事務職ですし、利益構造改革の提言までには至れませんでしたが、これを機に原価計算やコスト管理などの経理業務の面白さに気付き、もっと勉強して会社の体質改善に役立ちたい!と思うようになったんです。
ほう、それはすごい!事務業務から、そこまで深く探求していく力は素晴らしいですね!
前職で働きながら経理を目指すことも考えたのですが、その後プログラマーへの異動を打診されまして…。一からプログラミングスキルをつける労力を、経理の勉強に割きたいと思い、思い切って会社を辞めました。
それで4年間、頑張ってきたのですね。公認会計士は、経理系の資格の中でも難易度が高いですからね。
ええ…4年間チャレンジし続けましたが、ダメでした(苦笑)。たとえ合格しても就職先がない「会計士浪人」が増えているという現状もあり、「これ以上頑張っても仕方ない」とすっぱりあきらめました。もう29歳。30代になったらますます再就職が厳しくなると思ったんです。でも、書類落ちばかりで…気落ちしています。
4年も頑張った道をすっぱりあきらめ、就職する。その腹決めは立派だと思います。29歳でしたら、ギリギリですがまだポテンシャルを買ってもらえる可能性があります。また、合格しなかったとはいえ、4年間も公認会計士の勉強をし続けるには、強い志と向上心が必要です。この点も、評価材料になるでしょう。加えて、先ほどおっしゃっていた「利益構造、コスト構造を把握することで、企業の体質改善、業務改善に貢献したい」という思い、これこそ大きなアピールポイントです。経営者だったら、こういう考えを持った人に働いてほしいと思うでしょう。なのに、応募書類にはひと言も書いていない。これがもったいないな。
思いを、書くのですか??
職務経歴書を拝見すると、4年も前に退職したソフトウェア開発会社のことしか書かれていません。4年もブランクがあるのに、そのことは「2007年7月から2011年6月までは、公認会計士試験の合格を目指して勉強していました」の一文で説明しているのみです。
でも、結局は合格できていないので、アピールしても意味がないのでは?

4年間も一生懸命勉強し続けたのでしょう?もっと自信を持っていいことです。それに、町田さんは「利益構造、コスト構造を把握することで、企業の体質改善、業務改善に貢献したい」という高い志を持って勉強を始めたのではないですか。
確かにその通りですが、志をアピールしても、実績が伴っていないし…
今の応募書類から伝わるのは、システム開発会社での業務内容と、公認会計士の勉強により4年間のブランクがあるという事実だけ。「なぜ前の会社を辞めたのか」「なぜ公認会計士なのか」そして「なぜ未経験の経理職を志望しているのか」…とさまざまな疑問が生じます。でも、先ほどの「志」が説明されていれば、どんな思いで最初の会社を辞め、4年もの間勉強に打ち込めたのか、そしてなぜ一般企業で経理職に就きたいのか…が明確に伝わり、書類に一本軸が通ります。どうでしょう?もし町田さんが企業の社長だったら、このように書いている人のほうが魅力的に感じませんか?
確かにそう感じます!経理一人にできることは限られるかもしれませんが、社員一人ひとりがコストを意識するだけで、仕事に取り組む姿勢がガラリと変わると思うんです。経理の立場から、コスト意識を社員全員に持ってもらうように働きかけることで、会社の体質が今よりさらに良くなればと思っています。
いい話じゃないですか!今の話もぜひ、書類でも面接でもアピールしましょう。職務経歴書の冒頭にサマリーとして、会社を辞めた経緯と、志に向かって勉強に打ち込んできた事実、そして経理の仕事にかける思いを3〜4行でまとめるといいでしょう。初めに町田さんのキャリアのストーリーがわかるので、4年のブランクの「意味」も理解できます。
わかりました。さっそく書類を見直します。…でも、一つ不安なのが、面接の場で「うちでは経理に業務改善まで求めてないんだよね」と言われたらどうしようかと…。そもそも経理経験がないですし、4年ものブランクがありますし、素人の甘い考えだと反論されませんか?

ありえますが、そこは志を貫き通すべきです。例えば私ならこう言いますね。「経理こそ、会社のコストをすべて把握しているのに、もったいないとは思いませんか?会社の体制的に、すぐに実行に移すのは難しくても、私は粘り強いタイプなので皆の意識を変えて、皆と一緒にコスト構造を改革すべく努力し続けたいと思います」。面接担当者全員の心に刺さるかどうかはわかりませんが、ハッとさせられる人は多いのではないかな。
なるほど!志を持って会社を辞め、勉強を続けてきたのですから、これからも思いを貫き通したいと思います。
ぜひ(にっこり)。あとはできるだけ一度にたくさんの企業に応募して、面接のチャンスを増やしましょう。書類が通った企業は、ブランクを気にしていない会社ばかりですから、自信を持って堂々と臨んでください。まずはどこかの企業の経理に入って2〜3年も働けば、もう立派な「経理経験者」です。そこからさらに、志を実現できる環境に移ってもいいでしょう。
応募書類で「志を踏まえストーリーを語る」というのは思いもしませんでした。個人的な思いを書いてはいけないと思っていましたが、今のままではなぜ私がこの道を選択したのか全く伝わらないですね。さっそく書類を修正し、自信を持って応募します。(町田さん)

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