転職トップ > 転職成功ノウハウ > Dr.門野の転活悩み相談 > 人事総務の経験を活かして管理部門を目指すが、書類落ちが続く
![]() |
(株)リクルート 門野友彦 1985年リクルート入社。企業内教育研修などの営業、企業向け組織人事コンサルティングを担当した後、リクナビNEXTの前身であるリクナビキャリアや、スカウトシステムの開発、運営に携わる。現在は、新たな人材マッチングサービスの企画・検討に注力。転職活動カウンセリング経験も豊富。 |
2011年7月27日

![]() 角田卓巳さん |
![]() |
---|---|
派遣社員として情報サービス会社で営業事務を1年間経験したのち、不動産会社で3年半、正社員として人事総務、営業事務に携わる。営業への異動の打診を機に今年3月で退職し、人事を中心とした管理部門への転職を目指すが、書類の段階で落ちてしまうことが多い。 | |
![]() |
|
|
今年の3月まで不動産会社で人事・総務の仕事に就いていました。主業務は人事だったので、次の勤務先では人事経験を活かしてスキルを伸ばしつつ、管理部門全体を一通り見られる立場になりたいと思っています。でも、なかなか書類選考が通らなくて…。正社員の案件が少ないので、今後は契約社員にも応募しようかと思っています。
うーん、正社員志望だったら、ブラさず正社員を目指したほうがいいのではないかな。角田さんは27歳とお若く、まだまだポテンシャルが買われる年齢です。そして前職で3年半、正社員として勤務した経験もありますから、応募書類を見直せばきっと通過率は上がるはず。安易に選択しないほうがいいですよ。

でも、日本の経済情勢を考えると、今後も正社員の雇用が増えるとは思えないし、正社員に就いても必ずしも安定は望めませんよね。そう考えると、契約社員として専門知識を磨いて、その道のプロになるというのも僕は大いにありだと思うんです。
もちろん、そういう方法もあります。でも、契約社員としての期間が長くなると、どうしても正社員には戻りにくくなります。しかも、契約社員は「契約」というだけあって期限があるので、手掛けている仕事が急になくなるリスクが常に付きまといます。いろいろな選択肢があるのですから、「角田さんが今後どんな働き方をしていきたいか」に合わせて考えましょう。
実は僕、前の会社を辞めたのは、急に営業に異動を打診されたのが理由なんです。不動産会社の営業だけに、「イケイケドンドンの体力勝負」という営業スタイルで、僕にはどうしても合わなくて。管理部門にいられたら辞めなかったのですが…。だから、一般企業の正社員だと、たとえ人事として入社しても、いつかはジョブローテーションで希望しない部署に異動させられるのではないかと不安なんです。営業への異動なんて全く予想していなかったから、ちょっとしたトラウマになっているのかもしれません。
正社員はどうしてもジョブローテーションの対象になります。「絶対に管理部門以外には行きたくない」ならば、おっしゃるように契約社員がいいのかもしれませんね。契約社員で人事に就き、この道をトコトン極めるぐらいの腹決めで臨めば、満足のいくキャリアを歩めるかもしれませんよ。
でも、やっぱり正社員のほうが、世間的な評価は高いですよね。30歳、40歳になって契約社員というのはどうかという思いもあったりして…。
かなり迷っていらっしゃるようですね(苦笑)。その角田さんの気持ちのブレが、企業に伝わっているのかもしれません。迷いの原因を、「世間の評価」や「ジョブローテーション」など、他責にしている点も気になります。厳しいようですが、このままではどこも通りませんよ。まずは気持ちを固めるところからスタートしましょう。
正社員と契約社員には、それぞれ役割があります。契約社員は、ある1部門の業務に専念できるというメリットがあります。でも、自身の業務範囲や責任の範囲は限定的です。一方の正社員は、ジョブローテーションはあるものの、「企業経営のコアメンバー」であり、各部門の基幹業務を担当する立場です。つまり、現場では正社員が基幹業務を行い、契約社員など非正規社員が専門業務を担うという構図になります。このように、程度の差こそあれ、契約社員は、正社員の指示を受けて業務を遂行する…というのが基本構造です。
ええ?本当ですか?契約社員でも、正社員の指示は受けず、プロとしてやっている人もいるのでは?
営業など、一部のプロフェッショナルはそうかもしれませんが、大半の場合は基本構造は変わりません。例えば人事の仕事であれば、給与や評価に関する業務は契約社員には任せられません。なぜなら契約社員と正社員では、評価体系に大きな差があるからです。このように、いくら本人がプロとして努力しても、組織構造上、どうしても越えられない壁があるのです。

なるほど…。何度も聞きますけど、やっぱり正社員はジョブローテーションの対象になりますよね?
はい。大半の企業では、正社員対象にジョブローテーションを行っています。なぜなら、皆が長く1つの仕事に従事し、周辺の環境も変わらなければ、どうしても組織の空気が滞ってしまうから。定期的な配置換えで新しい空気を送り込むことが、組織活性化、ひいては業績向上のために必要なのです。また企業は、正社員にはいろいろな部署、業務を経験してもらい、会社全体のことを理解したうえで一番その人に合った環境で力を発揮してほしい…と願っているものです。家族経営的な小規模の会社ならば話は別かもしれませんが、中規模以上ならばまずジョブローテーションの可能性はあると考えてください。
そうですか…。
何度もいいますが、大事なのは、角田さんが「将来どういう自分になりたいか」です。今までの話を聞いていると、自分の将来像をつかめていないことが、選考に落ちている根本の原因だと思われます。人事としてのキャリアを極めたいのか、それとも人事経験を足掛かりに管理部門全体で力を発揮できるようになりたいのか。まずは、そこを決めませんか?
うーん正直、まだ結論が出せないです。人事としてのキャリアを極めたい思いはありますが、契約社員でずっとやっていく勇気があるかと言われると…。一方のジョブローテーションも、人事以外の管理部門だったらやる気はありますが、営業など全くの未経験分野への異動を打診されたらと思うと、二の足を踏んでしまいます。もちろん、すべての営業職が、前の会社のようにイケイケドンドンなスタイルではないと思うのですが、せっかく人事のキャリアを積んでいるのに他部署に行くのはちょっと…と思っちゃうんですよね。でも一生契約社員というのも現実的ではないし…。
角田さんのお気持ちは、十分わかりました。では、「正社員で管理部門」と「人事で契約社員」の2方向で活動してみては?内定が出てから、じっくり仕事内容と雇用形態を見ながら検討する…というほうが、決めやすいかもしれませんね。そのためにも、今の応募書類は全面的に見直したほうがいいですね。
え?どのあたりですか?

手掛けてきた業務の説明部分です。「人事制度の改定」や「社員採用のための人材紹介会社との折衝」などはまだいいですが、「人事考課の入力業務」「研修補佐」などはどうでしょう。アルバイトや新入社員でもできそうなことですよね?とても「人事のプロを目指したい」人の応募書類とは思えません。また、自己PR部分に「採用選考にかかる時間短縮を実現」とありますが、数値が書かれていないのでどれぐらいの短縮に貢献できたのかわからず、角田さんの価値が全く伝わりません。どれぐらい時間が短縮できたのか、具体的に書きいれることが重要です。加えて、時間短縮により採用コストはどれぐらい削減できたのか、また本来の目的である採用成功率には影響があったのか書き入れると、角田さんの人事としての価値が伝わります。すべてのアピール項目に定量データを入れることを、心がけてください。
人事の仕事には思い入れを持って、主体性を持ってやり切って来たのですが、それが今の書類では伝わらないのですか…。さっそく、まとめ直してみます。
はい、ぜひ。数値を入れつつまとめ直せば、書類通過率は今よりぐんと上がり、面接の機会が増えるはずですよ。あとは、面接のときは「しゃべりすぎ」に注意したほうがいいですね。角田さんは饒舌で、話がどんどん横道にそれがちです。人事はコミュニケーション力を問われる仕事ですから、マイナス評価につながりかねません。相手の質問をよく聞き、何を求められているか理解したうえで、端的に答えるトレーニングをしたほうがいい。質問に対していきなり具体的に語らず、まずは端的に答え、再び突っ込んで聞かれたら具体的に説明していけばいいのです。
はっ!そうですか!それよく言われるんだよなー。面接の場ではできるだけ抑えるように努力しているんですけどね。
確かに今日は面接ではないですが、こういう場で少なからず「しゃべりすぎてしまう」ということは、面接の場でもうっかり癖が出てしまう可能性が高いです。日頃の会話の中で、相手がどんな答えを求めているかを意識するだけで、コミュニケーション力は磨かれますよ。
なるほど…気をつけます。
Dr.門野と話をする中で、自分の中の気持ちのブレを再確認しました。まだ正社員か契約社員か決めきれませんが、まずは応募書類を見直し、いろいろな企業にアプローチしてみたいと思います。話し方についても、一人で突っ走らないように気をつけます。(角田さん)

- EDIT
- 伊藤理子
- DESIGN
- マグスター
- ILLUST
- もりいくすお
- PHOTO
- TAKE