転職トップ > 転職成功ノウハウ > Dr.門野の転活悩み相談 > 機械設計の経験を活かしモノづくりの現場に戻りたいが、書類で落ちる
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(株)リクルート 門野友彦 1985年リクルート入社。企業内教育研修などの営業、企業向け組織人事コンサルティングを担当した後、リクナビNEXTの前身であるリクナビキャリアや、スカウトシステムの開発、運営に携わる。現在は、新たな人材マッチングサービスの企画・検討に注力。転職活動カウンセリング経験も豊富。 |
2011年6月15日

![]() 尾形加世さん |
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通信機器の筐体設計に5年間携わったのち、派遣エンジニアとして自動車部品会社でサスペンション設計、モーター設計などを担当する。その後、CADソフトメーカーに転職したが、モノづくりの現場に戻りたいと考え転職活動をスタート。しかし書類落ちが続いている。 | |
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工学系の専門学校を卒業後、さまざまな企業で通信機器や自動車部品、モーターなどの機械設計に携わってきました。3年前に、別の世界が見てみたいという思いとCADに詳しくなりたいという理由から、CADソフトメーカーに転職し、導入インストラクターを務めたのですが、あまりやりがいを見いだせず、どうしてもモノづくりの現場に戻りたくなって…。機械設計職に絞って5回目の転職活動を始めたものの、書類選考で落ちてしまいます。
ご自身では、書類で落ちている理由はどこにあると思いますか?
やはり転職回数が多いことでしょうか。機械設計の経験が長いとはいえ、いろいろな分野のものを扱ってきたので、統一性がなく、アピールしづらいんです。
なるほど。いずれにしても応募書類に何らかの要因がありそうですね。内容を拝見しましょう。…うーん、職務経歴がただ羅列されているという感じですねえ。社名と、手掛けた業務内容がたんたんと説明されているので、余計に「経歴がバラバラ」な印象を受けてしまいます。特にこの分野に強い、こんな状況に強いなど、「5社で経験を積んだからこそ培った強み」を明確に示しましょう。

培った強み、ですか…。正直、すぐには思いつきません。業界も職種も、扱った製品もバラバラなので、自信を持って言えるようなスキルを積み上げていないと思うんです。
いや、何らかの強みは、絶対にあるはずですよ。技術力だけがスキルではありません。例えばですが、仕事においてこだわってきたこと、譲れないことなどはありませんか?「仕事に対する姿勢」は、手掛けた製品や業務内容が異なっても、ご自身の中に軸として備わっているはず。それを自己PRとしてアピールする方法も有効ですよ。
今の自己PRのままではダメなんでしょうか?「どんな立場であっても、顧客のために有益なものを提供するよう常に心がけてきた」と、仕事に対する姿勢をアピールしてみたのですが…。
正直、わかりづらいですね。抽象的で紋切型な印象です。読み手に何をやってきたか伝わらないと、アピールにはなりません。この自己PRも含め、全体的にもっと読み手である採用担当者の目を意識して、まとめ直すべきですね。
先ほどの自己PRの内容ですが、もう少し具体的に説明していただけますか?

わかりました。…設計者として、顧客ニーズに沿ったものを提案するのは当然ですが、かかるコストや時間も考え、より効率的な方法を提案するように心がけていました。もともと、ムダが大嫌いで、できるだけムダのないように作業効率を考えてスケジュールを立てます。また、無用なトラブルこそがコストと時間のムダなので、早めの計画立案といざというときの対策をあらかじめ考えておくことで、自社にとっても顧客にとっても時間もコストもムダがないような仕事の進め方にこだわってきました。…それを表したつもりだったのですが、わかりにくかったですか。
今おっしゃったように書きましょうよ!顧客のために効率化を常に意識し、組織全体のマネジメントも考えつつ、計画性を持って業務を進めてこられたことがわかります。一方で、今書かれている自己PRは読み手が意図を汲まないと、今ご説明いただいたようには理解できません。もっと尾形さんの思いを、わかりやすく説明しましょう。
確かに、改めて読み返してみると第三者にはわかりにくいかも…。あまり長々と書くのもどうかと思い、一文にまとめたのですが、簡略化しすぎましたね。
業務においてはいいですけど、自己PRにおいてはムダを省きすぎないほうがいいですね(笑)。尾形さんのアピールポイントである「効率化」「計画性」の2点を軸に、アピールポイントをまとめ直すといいでしょう。もしあれば、尾形さんがプロジェクトのスケジュールを立てるようになってからトラブル件数が減ったとか、クレーム件数が減ったとか、周りのスタッフも影響を受けて個人の計画表を前倒しで作成するようになった…なんていうエピソードを入れると、尾形さんの影響力の大きさを示せますよ。
なるほど、影響力か…。思い出してみます。

あと、職務経歴書の冒頭に「略歴」をまとめておられますが、勤めた会社名と仕事内容が並んでいるだけなので、あまり意味はありませんね。逆に、転職回数が多く、キャリアがブツブツ切れている印象を強めるだけです。ここでは、簡単な略歴に加えて、「一度離れてみて、やはりモノづくりの現場に戻りたいと痛感した」という尾形さんの気持ちを交えたほうが効果的です。そうすれば、尾形さんの今までのキャリアのストーリーがわかり、これからどんな道を歩みたいのかが伝わります。それが自社に合うと思えば、面接に呼ばれます。今よりはチャンスが増えると思いますよ。
わかりました。でもうまく説明できるかな…。
モノづくりから離れてインストラクターになったことを少し後悔されているようですが、どんなキャリアもムダではなく、すべてに意味があります。エンジニア経験だけでは得られなかっただろうコミュニケーションスキルがついているはずですし、一度現場から離れたからこそ「やっぱりモノづくりの世界で生きていきたい」という強い気持ちに気が付いたのですから。経歴は変えられませんから、なぜそういうキャリアを歩み、今の気持ちに至ったのかを説明することで、経歴そのものに意味を持たせましょう。
「読み手にとってわかりやすい内容になっているか」という視点が欠けていましたね。設計者としてのキャリアが途切れたことを不安に感じていましたが、「現場に戻って機械設計に携わりたい」という今の正直な気持ちを伝えるため早速書類を書き直します。(尾形さん)

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