転職トップ > 転職成功ノウハウ > Dr.門野の転活悩み相談 > スポーツトレーナーから異業種に転身したいが、書類で落ちてしまう
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(株)リクルート 門野友彦 1985年リクルート入社。企業内教育研修などの営業、企業向け組織人事コンサルティングを担当した後、リクナビNEXTの前身であるリクナビキャリアや、スカウトシステムの開発、運営に携わる。現在は、新たな人材マッチングサービスの企画・検討に注力。転職活動カウンセリング経験も豊富。 |
2011年3月30日

![]() 中江丈二さん |
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スポーツクラブのトレーナー職に就いて11年。トレーナーの指導育成や、セミナーやイベントの講師など幅広い経験を積んできたが、給与の低さと会社の経営不振を受け異業種への転身を決意。経験を活かせそうな職種に幅広く応募するが、書類選考で落ちてしまう。 | |
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スポーツトレーナーの仕事に11年間従事してきましたが、異業界・異職種に転職したいと考えています。現在は、スポーツクラブの会員の方にスポーツ指導をするだけでなく、若手トレーナーの指導育成や、スポーツ・健康をテーマにしたイベントの企画やセミナーの講師、他業種との業務提携に伴う営業活動など、さまざまな業務経験を積んできました。これらの経験を活かせそうだと思える職種に応募しているのですが、書類選考の段階ですべて落ちてしまっています。
11年も経験を積んだのに、なぜ全くの異業種に?
勤務先は小さなベンチャーで社会保険が揃っておらず、経営状態も芳しくないんです。昨年、子どもが生まれたこともあり、もっと高い給与をもらえる業界・職種に転身して、安定した生活を送りたいと考えました。とはいえ、「今の環境から逃げ出したい」というネガティブな思いではありません。「自分の経験が活かせる場所は、異業界にもたくさんある」と自信を持って転職活動に臨んでいるのですが、思いとは裏腹になかなか結果に結びつきません…。

どういうところに応募しているのですか?
可能性がありそうな職種には、どんどん応募しています。トレーナー育成やセミナー講師で培った「人に教える経験」が活かせると考え、人事職の人材教育担当者に応募しているほか、スポーツ・健康に関する知識とコミュニケーション能力を活かせそうな健康関連会社の営業職や企画職などが多いですね。イベントやセミナーは、今までに100回近くこなしていて、たくさんの一般のお客様と触れ合ってきたので、コミュニケーション能力には絶対の自信を持っています。このスキルはどの分野でも活かせると思っているのですが、書類でアピールするのが難しくて。
うーん、まず人事系職種は厳しいですね。人事職は社内マネジメントに直結する業務だけに、経験者採用が大半です。応募しても、戦う相手が経験者なので勝ち目はほとんどないでしょう。
やっぱりそうですか…。
今までのお話を聞いていると、「大勢の人の前で伝える、説明する」スキルを活かして、セミナーやイベントプロデュース、イベントコーディネーターを狙ったほうが確度が高そうですね。また、さすが講師経験が豊富なだけあって、中江さんは笑顔がさわやかですし、話し方、立ち居振る舞いも好印象ですから、営業職も向いていると思います。ただ、いろいろなところにアプローチするのはいいのですが、異業界・異職種にチャレンジするのですから、なぜその仕事に就きたいのかという「明確な転身理由」が必要です。それぞれの求人への志望動機を固めて、書類の段階で十分に伝える必要があります。
求人ごとにですか?
はい。中江さんの応募書類を拝見すると、トレーナー、指導育成、講師、企画、営業…とすべての経験を同じぐらいアピールしようとしているから、内容が散漫になってしまっています。採用担当者から見れば、「いろいろなことをやってきた人なんだ」という印象だけで終わってしまい、「その経験が当社で活かせそうだ」とまでは思えないんです。だから書類の段階で落ちてしまっているのだと思いますよ。
でも、「経験を活かせるところで働きたい」というのが一番の思いなので、志望職種がこれといって定まっていないんです。そのため、職種別の志望動機がなかなか思い浮かびません…。

中江さんはいろいろな経験をされていますが、「異業界でも活かせる一番の強み」は何だと自己分析していますか?
まずは、先ほどもお話ししたコミュニケーション力です。イベントやセミナーの講師として何百人もの人と接し、皆さんのカラダや健康に関する質問や不安など、リアルな声に触れてきました。この経験は、どんな仕事にも活かせると自信を持っています。また、「ネットワークを作る力」も、アピールできるかもしれません。うちは小さな会社ですから、イベントやセミナーで何かを発信しようとしても限界があります。そこで、常に他業界との連携による相乗効果を考えてきました。例えば、ある化粧品会社に対して、「化粧品による体の表面からアプローチする『美』と、運動による内面からの『美』の両面から、健康を考えよう」というタイアップイベントを提案し、多くの集客に成功しました。
それはいいエピソードですね!セミナーなどでたくさんのカスタマーに接し、カスタマーの本音やニーズをつかんでいるのは、中江さんの大きな強みです。また、自社だけでは限界があるから、他社と提携してより多くの人に情報発信してきたという「行動力」は、志望動機にもつなげられます。
本当ですか?
例えばですが、「美や健康に関するたくさんのカスタマーの声に触れてきた。今度はその声にこたえるために、より多くのカスタマーに商品やサービスという『価値』を提供する側に回りたい」ということはできませんか?もしこういう思いがおありならば、健康がキーワードになる会社はすべて応募ターゲットになります。企業側としても「体のこと、健康のことがわかっていて、カスタマーの声も理解している人ならば、安心して仕事を任せられる」と思ってくれるでしょう。…どうでしょう、当てはまりますか?

はい、確かにおっしゃる通りです。他業界との連携も、カスタマーの声にこたえたいからこそ積極的に行ってきました。
では、まずその志望動機を応募書類の始めに数行程度でまとめたうえで、応募職種に沿って職務経験をまとめましょう。今の職務経歴欄は、時系列ですべての経験を説明していますが、経験職務ごとにアピールする方法に変えたほうがいいですね。営業ならば営業の要素をメインに、イベントプロデューサーだったらイベント経験をメインにまとめ、アピールしましょう。
わかりました!まとめ直してみます。
中江さんは第一印象で好感をもたれるタイプですし、話のキャッチボールもうまいから、面接の機会が増えれば強みをさらに発揮できるはずです。あとはぜひ、自分がやってきたことに自信を持って、アピールしてください。小さい会社であらゆる業務を責任を持って手掛けてきたこと、たくさんのカスタマーの声に触れてきた経験が、必ず活かせると胸を張って言い切ってください。そうすれば、企業側も「異業種出身でも、彼ならばやり切ってくれそうだ」と安心感を持つことができるでしょう。
すべての経験をアピールしようと一生懸命でしたが、ポイントを絞ることが大切だと気付かされました。異業種への転身になりますが、カスタマーの生声に触れてきた経験は、ほかの人にはない強みだと思っているので、自信を失わず前に進みたいと思います。(中江さん)

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- 伊藤理子
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