転職トップ > 転職成功ノウハウ > Dr.門野の転活悩み相談 > 一度は離れた建築の世界に戻りたい。しかし一次面接で落ちてしまう
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(株)リクルート 門野友彦 1985年リクルート入社。企業内教育研修などの営業、企業向け組織人事コンサルティングを担当した後、リクナビNEXTの前身であるリクナビキャリアや、スカウトシステムの開発、運営に携わる。現在は、新たな人材マッチングサービスの企画・検討に注力。転職活動カウンセリング経験も豊富。 |
2011年2月2日

![]() 佐竹和真さん |
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新卒で建築事務所に入社して設計担当として働く。経営不振を受け転職を目指すが、同業では転職先が決まらずコールセンターに入社。2年間勤務したが、建築の道に戻りたいと転職活動を再開。しかし一次面接の段階でほとんど落ちてしまう。 | |
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つい先日まで、テレマーケティング会社に勤務し、コールセンターのSVを担当していました。でも、以前勤めていた建築業界に戻りたくて退職。現在、転職活動をしているのですが、なかなか一次面接を突破できず、悩んでいます。
テレマーケティング会社の前は、建築業界だったのですか?

そうです。大学卒業して、最初に勤めたのが建築事務所でした。ディベロッパーからの発注で、戸建住宅やマンションの設計を1年ほど担当していました。しかし、会社の経営が急速に悪化。もともと給与水準が低かったのですが、給与の遅配が発生してしまい、「このままでは生活ができない」と退職したんです。すぐに転職先が決まるだろうと楽観視していたのですが、ちょうどリーマンショックが起こってしまって…。どこも決まらず、半ば場つなぎ的に飛び込んだのが前職だったんです。
なるほど。場つなぎのつもりが2年の勤務になってしまったと。
はい。前職に転職して、給与水準がぐんと上がり、生活が安定したことが理由です。コールセンタースタッフのマネジメントという責任ある仕事を任され、「このままここにいてもいいかな」と思うようになったんです。不況ですし、もう建築の道はあきらめようと思い、この2年間はSVの仕事に没頭しました。しかし、少し前に以前の同僚に会い、建築の道で頑張っている姿を目の当たりにして、後悔の念が急激に沸き起こったんです。建築への思いが再燃し、「戻るならば今しかない」と。…でも、2年のブランクは大きいですね。面接でも、なかなかいい反応をもらえなくて。
書類通過率はどれぐらいで、どういう会社に応募しているの?
書類通過率は7割程度でしょうか。次は設計ではなく、設計の前段階である「建築企画」に携わりたいと思っているので、ディベロッパーを中心に応募しています。
7割はすごい!非常に高い通過率ですよ。
でも、一次面接で落ちてばかりで…。建築企画の知識が全くないわけではないし、知識が活かせると思うのですが、やはり経験がないと難しいのでしょうか。
いえいえ、書類は通っているのですから、佐竹さんに可能性を感じてはいるんですよ。まるっきり可能性のない人を面接に呼ぶはずはありません。この人ならば活躍してくれるかもと思って呼んでいるんです。だから、面接で落ちている理由は経験不足のせいではないし、2年のブランクのせいでもないはず。どこか別のところに原因があるはずですよ。
そもそも、一度は離れた建築業界に、なぜ今戻りたいと思ったの?
それ、面接でも必ず聞かれます。もともとぼくは「家」が大好きで…離れていた2年間も、住宅建築の雑誌は買って読んでいました。みんなが温かく生活できる場所を提供するという仕事は、とてもやりがいがあると思っています。元同僚の話に刺激を受け、住む人が癒されるような住まいをもう一度この手で造りたいと思ったのが、最大の理由です。

うーん、佐竹さんの思いは分かりましたが、その「温かな住まいを作りたいという思い」と、「建築企画の仕事に就きたい」というのがどうもつながらないんだよね。ディベロッパーの建築企画って、「癒される住まいづくり」とは方向性が違いますよね?どうやってこの敷地を効率的に使い、できるだけ高い利益を挙げるかに知恵を絞る仕事でしょう?筋が通っておらず、違和感があるんですよ。
…そういえば、面接でよく「やりたいことはわかったけれど、ウチに来ても物足りなく感じるのでは?設計に行ったほうがいいのでは?」とよく言われます。
ですよね。この人は建築企画をやりたいと言っているけれど、どうやら本気じゃなさそうだ…と判断されているのですよ。佐竹さんは2年のブランクがあるのですから、「どうしてもこの世界に戻りたい」という「本気度」を企業は見たい。でもそれを面接で確認できなかったために、落ちているのだと思いますよ。
そうですか…一体どうすればいいのでしょう。企画の仕事に就きたいという気持ちにウソはないのですが。
なぜ建築企画がいいの?設計に戻るほうが自然な気がするし、設計事務所に応募したほうが可能性が高いと思うけれど。
建築業界に戻るからには、本腰を入れてさまざまな知識を習得し、将来的には独立したいと考えています。そのためには、設計だけでなく、企画も含めトータルに建築全般の知識と経験をつけることが必要だと思っています。ディベロッパーの企画に入れば、企画職の視点を養いながら、ゆくゆくは設計にも関われ、総合的なスキルが身につけられると考えているんです。
なるほど、独立という将来的な目標に向けて、企画のスキルも設計のスキルも上げていきたいということですね。そう言われれば、企画を目指す理由も明確になりますし、話に筋が通ります。ならば、その気持ちをストレートに、面接で伝えればいいじゃないですか。
でも、「将来独立したい」なんて言ったら、マイナス印象になりませんか?どうせいつか辞めちゃうんだと思われません?
とはいえ、「設計が好き。でも今は企画がやりたい」という思いを、ほかに説明する方法はないでしょう?独立という夢は、伝えたほうがいいと思います。ただ、「長く務める気がある」という姿勢は、示したほうがいいでしょうね。例えばですが、「この業界に戻るからには、ゆくゆくは独立したいという大きな夢を持っています。だから設計の経験をベースに、新たに企画のスキルを磨きたいと考えています。でも、御社に入社して経験を積む中で、企画の仕事が天職になり、御社にずっと勤め続けられれば本望だと思っています」などと伝えるのはどうでしょうか?

それって、今の自分の正直な気持ちです!今度から、そういう表現で思いを伝えたいと思います!
応募書類にも、書いておいたほうがいいですよ。こんな目標を持っているから、建築企画を目指したい。それが書類の段階に明確に書かれていたほうが、面接がスムーズに進みますよ。また、建築企画は「このスペースを活かして、どうやってもうけるか」を考える仕事ですから、設計職時代に「どうすればもっと魅力的な住宅になるか」すなわち「売れる住宅になるか」を実現する設計にこだわった…などと入れられたら、さらに建築企画職向けの書類になりますよ。
わかりました!さっそく書類を修正します。
これで書類通過率も、面接突破率も上がると思いますが、もしも、どうしても建築企画に通らなかったら、設計職にもアプローチしたほうがいいですよ。ブランクのある佐竹さんの場合、まずは「建築業界に戻る」ことが先決です。過去の経験を活かして設計に戻り、感覚を戻しながら、また建築企画に挑戦するのも一つの方法ですよ。
企画職に就きたいとの思いを自分の中でうまく消化できず、建築業界に戻りたいという気持ちばかり空回りしていたようです。面接で突っ込まれ、自分の考えを伝えられず意気消沈していましたが、今後はヘタに飾らず、正直にキャリアプランを伝えたいと思います。(佐竹さん)

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