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(株)リクルート 門野友彦 1985年リクルート入社。企業内教育研修などの営業、企業向け組織人事コンサルティングを担当した後、リクナビNEXTの前身であるリクナビキャリアや、スカウトシステムの開発、運営に携わる。現在は、新たな人材マッチングサービスの企画・検討に注力。転職活動カウンセリング経験も豊富。 |
2010年12月15日

![]() 野上保さん |
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理系の大学、大学院を卒業後、精密機器メーカー、電子部品メーカーなど6社で電子回路設計やデジタル信号処理、半導体の設計などに携わる。11月に前職を退社し、経験が活かせる新天地を探しているが、書類落ちが続き悩んでいる。 | |
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今まで精密機器メーカーや電子部品メーカー、電気メーカーなど6社で、電子回路設計、デジタル信号処理、半導体の設計・検証などに幅広く関わってきました。顧客企業の開発現場に常駐したことも多く、経験は豊富で知見も広いと自負しています。しかし、書類選考で落ちてばかりで、全く面接に進めません。
今までに何社ぐらいに応募しましたか?
1カ月ほど前に転職活動を始めたので、まだ8社ぐらいです。
8社は少ないですね。経験が当てはまる募集には、どんどん応募していかないと、面接の確率も上がりませんよ。
それはそうなんですが…。先日、VHDLによるFPGA設計の募集に応募したんです。この分野の経験は豊富で、本当に即戦力として活躍できると思ったのですが、書類であえなく落ちてしまいました。せめて面接には進めると踏んでいたので、書類落ちがショックで…。この先どうしたらいいのかわからなくなってしまいました。
なるほど。落ちた原因はどこにあると思いますか?
そうですね…。41歳という年齢と、6回もの転職経験が原因ではないかと。なかでも直近の会社は、わずか1カ月で退職を余儀なくされたので、印象がよくないと思います。急激な環境変化で参加するはずだったプロジェクトが中止になったため、退職勧告を受けた、といういきさつを書類にしっかり書き記しているのですが…。
うーんそれは災難でしたね。…しかし野上さんの職務経歴書は長いね!読むのが大変だ。
今までの経歴と、手掛けてきたこと、持っている技術力をまとめたら9枚になってしまったので、かなり削ったのですがそれでも6枚。でもこれ以上、削れないんです。やっぱり、長すぎますか?
はい。しかも、技術的なことばかりがただ羅列されているだけという印象です。技術者が読めばピンとくるのかもしれませんが、そこまで詳しくはない人事担当者が見た場合、「いろいろやって来た人みたいだけれど、経験年数の割に何が強みなのかわからない。そもそもこの人、転職回数が多いから、面接に呼ぶのは止めておこうかな」となってしまっているケースが多いのではないかな。
では、どう直せばいいのでしょう??
今の応募書類からは、野上さんの売りや強みが非常に読み取りにくいんです。経験職務や技術の内容が羅列してあるだけで、レベルもわからない。経験が長い割には薄っぺらい印象です。読み手のことを考え、初めに強みをアピールしておくべきです。…野上さんは、何に一番自信を持っていますか?

さまざまな企業、現場、プロダクトを経験してきたので、新しい情報、技術をキャッチアップするスピードはだれにも負けないと思っています。同じプロジェクトに配置された20代のエンジニアに比べると、2倍3倍のスピードで習得していると思いますね。そのため、どんな現場に行ってもすぐに力を発揮できます。
なぜそんなに早くキャッチアップできるの?
電気電子分野の経験が長いし、ロジックに関しては中学生のころからいじっていました。新しい規格については、英語の原版を取り寄せて内容を理解しています。和訳されたものは内容が微妙にズレているケースが多く、原版のほうが早く正しく理解できるんです。これらの理由から、ドキュメントを理解するスピードが人より速いのだと思います。
なるほど。では今後、どういうエンジニアになりたいと思いますか?
ロジックの専門家として、いざというときに周りに頼られる存在になりたいですね。
いざというときって、例えばどんな時?
不具合がでたとき、でしょうか。過去、原因不明の不具合に遭遇したことが何度かあったのですが、どうにか原因を突き止め、解消してきました。さまざまな職場で知見を広げてきたし、海外の技術情報などを収集するのも得意なので、社内にリソースがないものであっても、さまざまな情報をもとに仮説を立てて、短期間で解決に導くことができました。
それこそ野上さんが企業にアピールできる「強み」では?どんな開発現場においても、不具合は発生するものです。「ロジック経験が豊富なので、どんな不具合でも原因を付き詰めて解決してきました。不具合対応ならば自信があります」と伝え、あわせて、実際に解消してきた不具合例を挙げれば、それが「不具合対応ができるという根拠・裏づけ」になります。そうすることで、野上さんの強みが明確になり、書類に一本筋が通ります。
確かに、それは自信を持ってアピールできます。
野上さんは経験が豊富なので、応募書類が長くなるのはある程度は仕方ありません。でも、その前に「これらの経験の中でも特に何が得意で、何が活かせるのか」を明確に伝えて、読み手に野上さんを印象づける必要があります。先ほどの強みを、職務経歴書の初めに要約してまとめれば、この分野で力を発揮できる人なんだとすぐに伝わり、「一度会ってみようか」となる率が高まるでしょう。
冒頭でまとめておくことが、大切なのですね。ほかに入れるべき要素はありますか?

「何ができるのか」「できるという根拠」に加えて、「転職回数を重ねてきた理由」を一緒にまとめるといいですね。まずは現場経験が豊富だからこそ不具合対応力が高いことを示し、次に不具合解消の実績をいくつか挙げて根拠を示す。そのうえで、「今まではさまざまな現場で設計経験を積みたいと思い、転職を重ねてきたが、一通りロジック分野の技術を網羅できたと思っている。今度は今までの経験をベースに不具合解決の立場から新製品の開発に力を発揮したい」などと伝えてはどうですか。
なるほど、おっしゃる通りです。さっそくまとめ直してみます。
ぜひ!人事担当者にも野上さんの強みが伝わりやすくなるし、面接に進んだときにはこの最初の部分に質問が集中しますから、答えに迷ったり、つっかえたりすることもなくなるはずですよ。…野上さんは、転職先の企業規模にはこだわりはない?
ええ。経験が活かせれば、どこでも頑張りたいと思っています。
野上さんは現場で経験を積んできたスペシャリストなので、大手は向かないかもしれませんね。大手の場合は、41歳にはどうしてもマネジメント経験を求めますから。中堅、中小をメインターゲットにするといいと思いますよ。あとは、社長がエンジニアの中小企業を狙うのも一つの手ですね。人事が応募書類を見るのではなく、社長が直々に選考に関わっているような。そういう企業ならば、より野上さんの技術力や豊富な経験を買ってくれるでしょう。
自分の経験をもれなくアピールすることばかりを考え、読み手の視点を考えていませんでしたね。レベルや強みを抽出し、わかりやすく伝えることの大切さに気付きました。効果的な構成方法がわかったので、もう一度転職活動に前向きに臨んでみます。(野上さん)

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