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(株)リクルート 門野友彦 1985年リクルート入社。企業内教育研修などの営業、企業向け組織人事コンサルティングを担当した後、リクナビNEXTの前身であるリクナビキャリアや、スカウトシステムの開発、運営に携わる。現在は、新たな人材マッチングサービスの企画・検討に注力。転職活動カウンセリング経験も豊富。 |
2010年8月4日

![]() 大塚奈津子さん |
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高校卒業後、信用金庫に入庫し窓口業務を担当。その後、さまざまな業界で事務、総務経理、データ入力などを手掛ける。経験業務の中で一番適性があると感じた経理を専門にしたいと考え転職先を探しているが、なかなか書類が通過しない。 | |
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(書類を見ながら)職務経歴、長いですねー!
高校卒業後に信用金庫に入庫し、窓口業務を3年間担当しました。その後、システム開発会社や医療法人などさまざまな会社で、主に総務経理や一般事務、データ入力など事務周り全般を手掛けてきました。派遣社員として働いた3社を含めると、今までに9社を経験しています。
ほう、9社ですか。かなりの数ですね。次はどういう仕事を希望されているのですか?

経理職です。高校時代に簿記2級を取っていますし、今まで幅広くいろいろな業務を経験してきたので、そろそろ専門分野を持ちたくて。今まで経験した仕事の中で、一番私に向いていると思うんです。とはいえ、経験してきた経理業務は補助的なものがほとんどで、決算を締めた経験もないので、小規模ですが経理全般を任せてもらえるという会社に2カ月前に入ったのですが…。お金の管理がずさん過ぎて、社員の給与は社長がそのつど自分の財布から出してくるというどんぶり勘定ぶり、伝票すら社内になくて驚きました。一から入出金の体制を整え、ようやく一息つきましたが、社長だけでなく社員全員がルーズな環境に慣れ切っているのが嫌で、再び転職を決意したんです。
うーん、なかなかひどい環境ですね…。転職活動を再開してから、何社ぐらいに応募しましたか?
5〜6社に応募して、1社面接に進みました。面接では話も弾んで、雰囲気的には「すぐにでも来てほしい」という感じだったのですが、落ちてしまって…。前の転職活動の時も、この傾向があったんです。盛り上がったのに、落ちるという。転職回数が多いせいなのか、派遣経験が多いせいなのか。正社員の時はもちろん、派遣の時も重要な仕事を任されていたし、何でもやれる自信はあるのですが。
職歴が多いのは、やはり印象がいいとは言えません。そして、正社員に応募するならば、派遣経験ばかりをあまりアピールしすぎないほうがいいでしょう。正社員と派遣では、役割が違うからです。派遣は、確かにスキルは高いのですが、「そのスキルをフルに活かしてもらってアウトプットを得る」のが社員の仕事ですからね。
現在は職務経歴欄で、派遣も含めて1社ずつ時系列に説明しているのですが、それを見直したほうがいいですか?
うーん、大塚さんの場合は、ほかに見直すべき大きなポイントがありますね。そこを直せば、職務経歴はこのままでもいいと思いますよ。
え?どこでしょうか??
大塚さんの職務経歴書では、1枚目で志望動機、退職理由、自己PRを載せていますね。そしてそのあとに、職務経歴を説明しています。この順番はいいのですが、退職理由は丸ごと削除していいと思います。6行も割いて説明していますが、ネガティブワードだらけだからです。経営不振、同族によるワンマン経営、先行き不安、セクハラ…どれも退職理由として事実なのでしょうが、すべて「他責」にしているように見えてしまって損ですよ。…先ほど、「面接で盛り上がったのに落ちてしまった」とおっしゃっていましたが、人事はたくさんの人と面接しています。いいなと思った人が複数いた場合、きっと応募書類を再び見直すでしょう。そのときにネガティブワードが目についたら、「大塚さんではなく、前向きなAさんを採用したほうが安心だな」って思いますよね?転職は、未来を見据えて行うもの。「次に向かう理由」を全面にアピールすべきです。

これだけ転職回数を重ねてきているので、ある意味「いいわけ」のつもりで詳しく退職理由を説明したのですが…逆効果だったんですね。
大塚さんの職務経歴書に一番必要なのは「ストーリー」です。今のものは、「今までの経験を踏まえてどこに向かいたいのか」がわかりません。職歴が多くて1社当たりの期間も短いと、どうしても1つ1つの経歴が断片的になり、細切れに見えてしまうので、まずは「いろいろな仕事を経験してきたからこそ、○○を目指したいという気持ちが固まった」というストーリーを明確に示すことが大切です。
なるほど…。
経理の仕事の、どんなところが自分に向いていると思うの?
私、性格的にルーズなことが大嫌いで、何事もキッチリやらないと気が済まないタイプなんです。もともと信金出身というのもあるのでしょうが、1円まで責任を持ってしっかり管理しますし。いろいろな仕事を経験しましたが、一番自信を持って取り組めるのが経理の仕事だと感じています。
今のお話し、とても筋が通っていますね!そして、とても前向きです。それこそ一番にアピールすべき。自己PRとしてまとめましょう。…今の自己PRは、今までの経験の羅列に終始していて「いろいろやれます」としか伝わりません。こちらに差し替えましょう。
確かにそうですね、わかりました。
加えて、一番初めに「職務要約」を入れましょう。信金から始まり、各社で管理部門系のさまざまな仕事を経験してきたこと、そして今までの経験から経理として専門性を深めたいと思ったこと…。思いや熱意は自己PRで説明するので、ここではざっくりとした流れを示すだけで構いませんよ。このように職務要約を入れ、自己PRを変えれば、大塚さんの経験とキャリアプランを理解したうえで次ページの職務経歴に目を通してもらえるので、「ただ職歴ばかりが多い人」という印象は薄らぐと思いますよ。
なるほど、さっそく書き直します。

今のお勤め先、体制がまるで整っていないということで、キチっとしたい大塚さんとしては厳しい環境だと思います。でも、できるだけ辞めないで、勤めながら転職活動することを強くお勧めします。在職者と離職者だと、企業が持つイメージは全然違いますし、転職回数が多い大塚さんの場合はなおさら印象が悪くなります。ルーズな環境の中、一から経理の体制、ルールを作り上げる仕事は苦労も多いでしょうが、大塚さんの経理としての大きなウリになりますよ。
わかりました。できるだけ、頑張ってみます(笑)。
転職回数が多いので、「いろいろできる」ことをアピールするのがベストだと思い込んでいたのですが、そうではなかったのですね。退職理由の部分も含め、人事の視点に立って全面的にまとめ方を変えたいと思います(大塚さん)

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- 伊藤理子
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