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(株)リクルート 門野友彦 1985年リクルート入社。企業内教育研修などの営業、企業向け組織人事コンサルティングを担当した後、リクナビNEXTの前身であるリクナビキャリアや、スカウトシステムの開発、運営に携わる。現在は、新たな人材マッチングサービスの企画・検討に注力。転職活動カウンセリング経験も豊富。 |
2009年12月23日

![]() 上岡崇文さん |
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新卒で家電量販店に入社。接客販売、クレーム処理、フロア管理などを幅広く手がける。フロア責任者を任されまでになるが、会社の倒産に伴い退職。販売系職種を中心に積極的に応募しているが、書類がなかなか通らず、苦戦中。 | |
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新卒で家電量販店に入社し、11年もの間、顧客対応、店舗管理、人材育成、新店の立ち上げなど、あらゆる業務に関わってきました。フロア責任者として売り上げアップにも貢献してきたつもりですが、この夏に倒産してしまって…。以来、販売接客業を中心に応募しているのですが、なかなか面接に進めないんです。もう40社ぐらい受けているのですが、書類落ちがほとんどで。失業期間も長くなっているので、何とか早く転職先を決めたいんですが…。とはいえ同業他社には将来性を感じないし、飲食も体がきつそうなので、それ以外の販売業に絞って応募しています。
わかりました。では応募書類を見てみましょうか。…うーん、文字がぎっしりですねえ。
以前、ハローワークにも同じことを言われて、書き直したんです。だからこれでもかなり減らしたんですが、やはり読みづらいですか?

読みづらいというよりも、やってきたことをただひたすら表にまとめているという印象です。手がけてきた業務の範囲が広いということは伝わりますが、何が上岡さんの得意分野かわからないし、上岡さんの介在価値が見えない。
そうですか…でも本当にありとあらゆる業務を経験してきているんです。だから自分のスキルも、とても中途半端な気がしているんですよね。自分の業務領域以外にも、別のフロアの人手が足りなかったら駆り出されることが多かったし、そのほかにも…。
業務範囲が広いのはわかりました。では上岡さんが得意な業務は何か、教えていただけますか?
いくつかあります。まずは店内の展示展開。売り上げアップ、業務効率アップのため、効果的な展示展開を考え、実行に移し売り上げアップを図ってきました。スタッフのシフト管理とメンタル管理、クレーム処理も得意分野です。特にスタッフ管理には気を配りましたね。仕事でいっぱいいっぱいになると、どうしても能率は落ちるし、チームの連携も悪くなる。だから、どんなに忙しくても休みは取らせる、残業も極力させないよう努力しました。時間帯ごとの来店客数や売り上げから、最低オペレーション人数をはじき出し、シフトをきっちり組みました。その結果、スタッフのモチベーションが上がり、業務改善アイディアなども挙がってくるようになったんです。
なるほど。今の話もいいですが、何か実績を数字で示せるものがあるといいですね。
それでいうと、店舗運営の効率化には常に気を配り、改善案を提案してきました。大きなものとしては、商品の予約管理システムの再構築が挙げられますね。以前からあったシステムなのですが全く稼働しておらず、みんなが使いやすいように手順を再検討してマニュアルを作りました。それにより、予約キャンセル率がそれまでの40%から20%に減り、前金をもらうようにしたので実質的な金銭ロスは15%に減らせました。応用が利くシステムなので、全店で使ってはどうかと本社に提案し、ほぼ全店で活用されるようになりました。
へえ、それはすごいですね。
確かにその当時は、我ながら頑張ったな、いい効果出したなと思いました。でも、考えてみれば前の会社の体制が遅れていただけなんですよね。競合店はどこもIT化が進んでいるのに、うちはアナログ。私がやったことなんてよそでは当たり前のことにすぎなかったんだと、会社が潰れたときに痛感しました。実は大したことやってなかったんだなあと。
でも、ロス率を大幅に減らすなど、目に見える効果を自社で出したじゃないですか。
それはそうですが、いくら効果が出たとはいえ、会社自体はなくなってしまいましたからね。結局はたいした効果ではなかったということですよね。アピールしても、無駄な気がしてしまいます。
そこでしり込みをしてどうするんですか?転職活動においては、自分の強みは何か、それを御社でどう活かせるのかを語らねば始まりません。他と比べるのではなく、上岡さんご自身が一生懸命頑張り、成果につなげてきたことをアピールしましょう。でないと、選考を勝ち抜けるはずはありませんよ。
確かにそうなんですが…。
上岡さんは年齢が高めではありますが、転職経験がなく1社でずっと頑張ってきたのは大きなウリです。そして、1つの売り場を任される中で、問題点を見つけては改革の必要性を提言し、実際に実行してきた。そして、予約キャンセル率を減らして金銭的ロスを減らすなど、実績も持っている。これらが、上岡さんが伝えるべきこと。今の応募書類だと総花的すぎて、単なる1プレイヤーにしか見えず損ですよ。業務範囲が広いのはよくわかりますが、一人で走り回っていたような印象です。37歳なんですから、もっと問題解決力やマネジメント力をアピールしましょう。

そうか、だからなかなか書類が通らなかったのか…。やってきたことをとにかく伝えなければと肩に力が入りすぎていたんですね。構成から、考え直さなければいけないですね。でも、倒産の事実はマイナス評価になりませんかね?
確かに会社はなくなったけれど、ご自身の担当していた売り場は売り上げが上がったのでしょう?もちろん倒産の事実は真摯に受け止めるべきですが、上岡さんなりに努力を続けてきたことをアピールしましょう。今まで話を聞いてみて、上岡さんのアピールポイントは、店舗オペレーションの無駄を日々チェックしてロス率を下げてきたこと、スタッフのモチベーションアップと効率化を進めてきたこと、売り場展開を考え売り上げアップに貢献してきたこと、この3つだと感じます。書類でも面接でも、この3つに絞ってアピールしてはどうですか?
わかりました。見直してみます。
これで、書類通過率はかなり上がると思います。面接の機会も増えると思いますが、面接では、もっと話し方に気を配ったほうがいいな。

え?どこがまずかったですか??
上岡さんの話を何度か途中でさえぎったこと、気づきました?上岡さんは、話し始めると止まらなくなる傾向があるんですよ。いろいろな業務を手掛けてきているから、「とにかくそれを全部伝えないと!」って焦ってしまうのでしょう。でも、企業が知りたいのは、「採用したらこの人はどう活躍してくれるんだろう」という1点。「ここなら任せてください!」とポイントを絞ってアピールすべきなんです。
そうですか…指摘されるまで気付かなかったな…。
面接で自己PRするときは、「私の強みは3つあります」と結論から始め、そのあとに3つを簡潔に伝えるといいでしょう。言うべきことを整理して、応募書類にまとめることで、余計なことまで話さなくて済みます。話が脱線するリスクも減るはずですよ。
わかりました。まずは書類を整理することで、自分自身のアタマも整理します。
初めての転職活動ですから、面接に慣れていないという部分もあるのでしょう。今は業界を絞って応募しているとのことですが、とにかくたくさんの企業に応募して、面接現場に慣れることも必要かもしれませんよ。
1つの分野に特化していないから、逆に幅広い経験をもれなくアピールしないと!とやっきになっていたようです。その考え自体、間違っていたのですね。端的に強みを伝える方法を教わったので、さっそく書類も話し方も見直してみます。(上岡さん)

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