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(株)リクルート 門野友彦 1985年リクルート入社。企業内教育研修などの営業、企業向け組織人事コンサルティングを担当した後、リクナビNEXTの前身であるリクナビキャリアや、スカウトシステムの開発、運営に携わる。現在は、新たな人材マッチングサービスの企画・検討に注力。転職活動カウンセリング経験も豊富。 |
2009年9月30日

![]() 古屋朝子さん |
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建築事務所2社で設計アシスタントを務めた後、リフォーム会社で現場監督、設計事務所で企画設計を手掛け、3年前から大手ゼネコンで派遣社員として設計に携わる。しかし、今さらながら「このままこの道を進んでいいのか」悩み、別職種に転身すべきか考えている。 | |
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古屋さんは、ずっと建築関連の仕事に関わっているのですね。…ほう、今までに5社も経験されているのですか。今までの転職のいきさつを、ざっと教えていただけますか?

はい。短大を卒業後、小さな建築事務所に設計アシスタントとして入りましたが、2年で倒産してしまって。その後勤めた建築事務所もやはり2年ほどで潰れてしまいました。その後、「現場を理解したい」と思ってあえて一度設計から離れ、リフォーム会社で現場監督と技術営業を担当。2年後に設計事務所に転職し、分譲マンションや病院などの事業物件の企画設計を3年間手掛けました。ただ、この会社はあまりに激務で、昼夜ない生活に疲弊して退職。現在は派遣社員として大手ゼネコンの設計部に勤めています。時間に少し余裕ができたので、勉強して1級建築士の資格を取りました。…転職回数、やっぱり多すぎますよね。
初めの2社は倒産だったのですね。自身の意思ではなかったのですから、そんなに気にし過ぎる必要はないでしょう。
でも、2社続けてなんて、なんか縁起悪いですよね(苦笑)。印象も決して良くはないし。結果として2年タームで職を変わっているのが、すごくコンプレックスなんです。
小さい建築事務所を選んできたのは、あえて?
大手に受からなかったというのもありますが、「あえて」という思いも強いです。就職活動のときは、「ゆくゆくは設計者として独立したい」という思いがあったので、すぐに仕事を任されそうな環境を求めていました。…でも、今は、この道で本当にいいのか、正直迷っています。
それはなぜ?
設計アシスタント、現場監督、設計職…と一貫して突き進んできましたが、年齢の割には場数が足りず、スキルが不足していると自覚しています。今の会社は大手ゼネコンなので、大手ならではの仕事のスケールの大きさ、クオリティの高さは非常に勉強になるのですが、派遣社員なので始めの基本設計の段階しか携われず、設計者としての今後を考えると、絶対に転職すべきなんです。でも、36歳になってマネジメント経験もありませんし、いろいろなところを転々としてきたので、同年代で設計を究めている人とのスキルの差はあまりに大きくて。どうしても応募に躊躇してしまうんです。だからいっそ、別の道に進むべきかと…。とはいえ何がやりたいというわけではないのですが。
迷っているとおっしゃいますが、誰がどう見ても古屋さん、この仕事が大好きでしょ(笑)。勤務先が倒産しても同じ道を選び続けて、勉強して1級建築士まで取って…。この道しかないと、僕は思いますよ。「スキル不足」というけれど、1級建築士は胸を張って世に示せる難関資格。しかも一貫したキャリアの軸もあるし、机上だけでなく現場も経験している。もっと自分に自信を持つべきですよ。
うーん…そうでしょうか…(悩)。
「ご自身のスキルやキャリア評」はいったん置いといて、古屋さんご自身がこれから何をしたいのか、整理しましょう。そのうえで、今までの経験をどうアピールすればいいか、考えていきましょう。
…とはいえ私程度の経験やスキルがどれほど評価されるものなのかわからないし…迷ってばかりいます。
では、そこから整理していきましょうか。古屋さんは組織で働きたい?それとも独立したい?

昔は独立も考えていましたが、今は組織がいいですね。建設業界で一人でやっていくのは大変だし、大きな案件に関われるのは組織に属しているからこそだとも思うし。
そのお答えは、必然的に「同業界同職種で転職する」ということになりますね。「スキル不足」という自己評価で見えにくくなっていましたが、やはり古屋さんは別業界ではなく、この道で頑張りたいと思っているのですよ。「転職活動」について、本腰を入れて考えるべきです。
確かに…。
では、次は自分の中で、「自分には何ができて、何が足りないのか」を整理してみてください。即戦力として力を発揮できることと、足りないから今後勉強して身につけていきたいことを、応募先企業に伝えるためです。
え?プラス面はいいですけれど、36歳にもなって今さら「足りないから勉強する」とは言いにくいですよ。
いえ、企業側の立場で考えれば、プラスとマイナス両方を知ることは大切なこと。「この人に任せたいポジション」を、イメージしやすくなるんですよ。例えば、「まず即戦力となり得る○○のプロジェクトに入れて経験を積んでもらおう。そしてゆくゆくは未経験分野の△△も任せてみようか」など、入社後のプランを具体的に思い描くことができる。…そもそも「組織で働く」んだから、なにも一人が全部できなくたっていいんですよ。
そういう側面もあるのですね…。
足りない部分をさらすことを、マイナスに取る企業もあるとは思います。でも、設計の仕事は専門職。事務系職種などほかの職種に比べて、そこまで年齢が重視されることはないですよ。応募書類では「自信を持っていること」と「経験が浅く、今後強化したいと思っていること」を整理してまとめたうえで、手掛けてきたことはできるだけ具体的に説明しましょう。これぐらいの規模、金額の物件を、何物件手掛けたとか、設計の中のこの部分をメインに手掛けたとか、「読めば仕事の内容が見えてくる」表現を心がければ、採用担当者がより具体的なイメージを膨らますことができる。

なるほど。
もちろん、業界全体が冷えているし、ラクな転職活動とはいかないでしょうが、あなたには「この仕事が好きという気持ち」「だからこの世界で10年以上働いてきた」「1級建築士も取った」という、「戦える武器」がある。このブレない軸を、もっとアピールしましょう。まずは、興味を惹かれた求人には、一通り応募してみませんか?古屋さんの今までの経験が、どんな企業で評価されるのか、見極めましょう。応募書類はご自身の広告。広告を打たないことには、反響も何もわかりませんよ。
応募すること自体に躊躇していましたが…何とか頑張ってみようという気になってきました。
市場価値は世の中における「相対価値」ですから、スキルに自信がない、市場価値がわからないと一人で考え込んでいても何もわからないし、先には進めませんよ。古屋さんは市場価値を確認するのがこわいと思っているのかもしれませんが、そこまで怖がることはないでしょう。でも、このまま時間が経てば、今よりも厳しい結果になります。現状を変えたいという思いがあるならば、自分から市場価値を確認しに行きましょう。
どうやって一歩を踏み出せばいいのか本当にわからず、迷ってばかりいました。自分のスキルにも自信が持てなくて…。でも、動いてみなければ何も変わらない。とりあえず前に進んでみようという気持ちになれました。(古屋さん)

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