転職トップ > 転職成功ノウハウ > Dr.門野の転活悩み相談 > 業績悪化により早期退職の憂き目に。内部監査として再就職を目指す
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(株)リクルート 門野友彦 1985年リクルート入社。企業内教育研修などの営業、企業向け組織人事コンサルティングを担当した後、リクナビNEXTの前身であるリクナビキャリアや、スカウトシステムの開発、運営に携わる。現在は、新たな人材マッチングサービスの企画・検討に注力。転職活動カウンセリング経験も豊富。 |
2009年7月1日

![]() 河村優一さん |
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大学卒業後、先物取引会社で1年半営業を経験。その後、塾講師のアルバイトなどを経て、3年前にIT関連会社に入社。内部監査職として上場準備などさまざまな業務に携わるが、業績悪化による退職勧告で今年4月に退職。内部監査職中心に応募するが、内定が得られないでいる。 | |
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直近の会社では、社長直下で内部監査担当として働いていました。でも、不況による業績悪化で、従業員の半数近くが削減されることになって…。僕も、「内部監査を置く企業体力がなくなった」という理由で削減の対象になり、4月いっぱいで退職したんです。すぐに同職種で求人を探したのですが、なかなか案件がなくて。総務にまで広げて応募しているのですが、面接にもなかなかたどり着けないんです。
今までに何社ぐらいに応募したのですか?
約40社に応募して、書類を通過したのは9社です。その9社も、いずれも面接で落ちてしまいました。やっぱり内部監査の経験が3年弱と浅いのが原因でしょうか?

ほう、なかなかいい確率ですね。このご時世、かつ経験年数が比較的浅い中、書類通過率が2割以上というのは高い数字だと思っていいですよ。(今までに応募した企業のリストを見ながら)…かなり名の知れた大手企業をメインに応募しているのですね。
はい。中小で内部監査の部署を置いている企業は少ないので、どうしても大手がメインになってしまいます。今まで大手企業に勤めた経験がないので、一度ぐらいは大手で働いてみたいという気持ちもあるんです。
でも、前の会社は80人規模の会社なんですよね。そもそもなぜ、内部監査として入社できたんですか?職種未経験だったんですよね?
募集当時、株式上場を目指していたんです。そのため、プライバシーマークやISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)の取得や、IPO業務全般に関われる人材を求めていました。未経験ではありましたが、アルバイト時代に総務業務を担当したことがあったので、見込んでもらえたのでしょうか。私自身も、やりがいがありそうな仕事だと感じました。
先ほど、社長直下で働いていたとおっしゃいましたね?
ええ、小さな会社なので、内部監査担当は私一人。上司は社長でした。
なるほど、じゃあ実務はほぼ一人でやっていたのですね?
そうなんです。プライバシーマークについても上場準備に関しても、全く知識がないところから、独学して一つずつ進めていきました。一時期、他社との合併も検討したことがあり、合併に関する法手続きも勉強しました。
それは貴重な経験ですね!このような業務経験を持っている人、そうそういませんよ。
でも結局、上場も合併も、実を結びませんでしたからね…。そんなにいい経験とは言えないのでは?
いやいや、もっと自信を持ちましょう。あらゆる業務を、一人でこなしてきたんじゃないですか。経験年数が短いとはいえ、その密度は相当濃かったはず。今のレジュメだと、「プライバシーマーク取得業務」「ISMS取得業務」など、ただ手掛けたことを羅列しているだけで、この「濃さ」が伝わってきません。短いながらも「責任ある業務」を「一人」で、「任されて」きたことを、レジュメでしっかり伝えましょう。そうすれば、書類通過率も上がり、面接での会話の内容も変わってくるでしょう。
すべての人に言えることですが、自分の強みは何か、どういう経験が評価されると思うか、客観的に考えてみることが大切です。河村さんの場合は、上場準備中の伸び盛りにあった会社において、社長直下で内部監査に関わるあらゆる業務を手がけてきたこと…が一番の強み。なぜなら誰しもが経験できる業務ではないし、ほぼ一人でそれを担ってきたという実績があるからです。そういう環境ですから、当然指示待ちタイプではなく、自身で仕事を見つけ、どんどんこなしてきたのでしょう。ここをもっとアピールすべきです。今の河村さんの書類だと、大勢の中の単なる一プレイヤーに見えてしまって損ですよ。
なるほど…。確かに今の職務経歴書は、ただの業務の羅列だなあ…。でも、結局、上場も合併も、業績不振になったために実現できていないから、結果的に「仕事ができない人」と思われないでしょうか?

業績不振で成し遂げられなかったけれど、上場や合併を遂行するべく、腹をくくって一人で努力を続けてきたという「事実」が大切。やってきたことに自信を持っているならば、応募先企業も結果を問題視することはありませんよ。
小さい会社だし、自分はそんなに大したことをやってこなかったのでは?という思いが常にありました。しかし今、冷静に振り返ってみると、われながら一人でさまざまなことを手掛けてきたんだなあって思います。
だからなおさら、河村さんは、大手よりも小規模の会社の方が向いていると思うんですよね。大手は往々にして、組織の枠組みの中でいかに効果的に動くかが求められるもの。河村さんの強みが、あまり活かせるとは思えないのですがね。どうでしょう?
うーん、確かに。でも求人件数自体が少ないですしね…。もう30歳なので、今回の転職が大手で働く最後のチャンスのような気もしているんですよね。
わかりました。まずは内部監査職の求人には、企業規模の大小に関係なく、片っ端からどんどん当たりましょう!
ハイ。100社に落ちるまでは、落ち込むまいって決めているんです。で、夏が終わってもまだ決まらなかったら、先物取引会社での経験を活かして、営業職も視野に入れて探そうかと思っています。少し前のキャリアではありますが、営業として相当鍛えられましたからね。
おお、それも一つの方法ですね。こうやってお話ししていて、河村さんは会話のキャッチボールがきちんとできる、コミュニケーション力が高い人だと感じます。背筋も伸びていて、第一印象もとても爽やかでした。…実は、お会いしたときから、「営業職ならばすぐに内定がもらえるだろうなあ」と思っていたんですよね(笑)。大手志向が強いのであれば、営業職として入社し、ある程度実績を挙げた後に、社内異動で内部監査を目指すという道もあると思いますよ。
なるほど、その手もありますね!あ、でも「なぜ今さら営業に戻りたいのですか?」と言われたら、どう伝えればいいかな…?
そうですね…私が河村さんならば、「先物営業でも内部監査でも、目標に向かって任された業務をやり切ったという自負があります。その経験を活かして、今度は大手の看板を背負ってやり切ってみたい。もっと世の中に大きな影響を及ぼす会社で仕事がしたいんです」とぶっちゃけるかな(笑)。要は、「受かる話し方をしよう」と思っていると、いざ面接で伝えるときに話が上滑りしてしまいます。どんな志望動機であっても、自分の中で腹落ちさせてから言い切れば、その言葉がイキイキと、熱意を持って伝わるものなんですよ。
わかりました。もう一度、自身の気持ちを見つめ直してみます。
転職は、相性。いつかご自身にピッタリ来るところと出会えるはず。自分に自信を持ってくださいね。
言葉の選び方を変えるだけで、自分の経験やスキルがイキイキと伝わるものなのだなあと驚きました。今まで面接では緊張して硬くなっていたけれど、コミュニケーション力があると言われたので安心しました。これからは肩の力を抜いて挑もうと思います。(河村さん)

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- 伊藤理子
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