転職トップ > 転職成功ノウハウ > Dr.門野の転活悩み相談 > 家業を畳み心機一転、経理職に就こうと就職活動をするが、なかなか内定が得られない
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(株)リクルート 門野友彦 1985年リクルート入社。企業内教育研修などの営業、企業向け組織人事コンサルティングを担当した後、リクナビNEXTの前身であるリクナビキャリアや、スカウトシステムの開発、運営に携わる。現在は、新たな人材マッチングサービスの企画・検討に注力。転職活動カウンセリング経験も豊富。 |
2009年5月20日

![]() 小笠原真一さん |
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高校卒業後、家業である自動車修理会社に入社し、約10年間現場経験を積む。5年前に経理業務を中心に経営業務に移り、会社運営を担うが、業界全体の不振を受けて自主廃業。昨夏に廃業手続きを終え、経理職の求人を探すが、なかなか内定にたどりつけずにいる。 | |
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高校卒業後、従業員10人の自動車修理会社を継いで、16年間働いてきました。初めの10年は修理の現場でベテランの職人に技術を叩き込まれ、30歳からいよいよ会社運営全般を担う業務に携わりましたが、業界全体の不振もあり廃業に追い込まれました。経理の経験を活かして就職したいと思っているのですが、なかなか書類が通らないんです
なるほど(書類を見ながら)…今までにどれぐらいの企業に応募したのですか?
60〜70社には書類を送りました。そのうち、面接に進んだのは7社。3社は最終面接まで進んだのですが、残念ながら落ちてしまいました。
なるほど。7社面接を受けて3社最終に進んだのは、すごいことですよ。
でも、書類選考落ちが多いのが悩みです。なんとか書類通過率を上げて、チャンスを増やしたいんです。

では、なぜ書類で落ちてしまうのでしょう。ご自身ではどのように分析されますか?
うーん…34歳で、経理の経験は5年のみなので、やはりスキルの問題なのでしょうか。ある企業では、連結決算の経験がないことを指摘されました。加えて、家業の経験しかないのも、マイナスイメージなのかもしれません。今さら外で働けるの?などと思われているのかもしれませんね。あとは…ブランク期間がすでに10カ月になろうとしている点でしょうか。経験不足をカバーすべく、簿記2級を取得し、現在は簿記1級の勉強をしながら活動を続けているのですが…。
おっしゃるように、ブランク期間が半年を超えると厳しいですね。簿記の勉強をされているならば、履歴書や職務経歴書に「簿記1級取得に向けて勉強している」という事実は書き入れたほうがいいでしょう。そして確かに、家業を継いだ人に対して「なんとなく継いだのではないか、仕事に対する意識が甘いのではないか」と思う人は、少なからずいるでしょうね。実際、今の小笠原さんのレジュメは、少しアッサリしすぎています。手掛けてきた業務を並べているだけなので、「単に実家を継いで、修理業務と経理業務に携わった人」にしか見えません。
決して、甘い気持ちで継いだわけではないのですが…。大学に進まなかったのも、高校時代に将来を熟考して、「いずれ家業を継ぐならば、大学の4年間はムダではないか。それよりも早く仕事を覚えて企業運営を学び、強固な組織を作り上げよう」と決めたからなんです。
それ、すごくいいお話ですね!その「家業を継いだ決意、覚悟」はぜひ、書類の段階でアピールしましょう。そのうえで、まずは現場を経験し、この手で会社組織を作り上げるために経理を中心とした経営実務業務に移った…と説明すれば、「単に『家に入った』人ではない。ほかの二代目とは違う」と思ってもらえるはずですよ
なるほど。…でも、経理の現場でのスキル不足については、どのように対応するべきでしょうか。
小笠原さんは、5年前に現場での修理の仕事から、経理業務に移ったんですよね?どのようにして業務を覚えたのですか?
それまでは母が担当していたのですが、会社組織としてもっと強固な経営を目指すべきだと思ったので、税理士事務所にサポートしてもらいながら一からきっちりと経理業務を覚えました。全くの未経験分野だったので初めは苦労しましたが、3年目からは一人で決算業務までこなせるようになりました。
その事実も、書類に書くべきですね。5年の経理経験は、一般的に見れば短いかもしれませんが、ゼロから経理業務を覚え、直近の3年間はたった一人で手掛けた。5年といえども「濃い」じゃないですか。さらに、小笠原さんは、会社の廃業手続きまで経験しています。変な言い方ですが、めったに経験できる業務ではありませんよ。廃業手続きの中では、何が一番大変でしたか?
やはり、廃業を決めるまでの折衝ですね。社長である父、そして母への説得と、従業員とのやり取り…どれも辛いものでした。その一方で、通常の仕事もこなさねばならない。モチベーションを保つのに苦労しました。
大変なご苦労だったと思いますが、廃業手続きをやり切る中で、数々のことを学ばれたのではないでしょうか。自主廃業の決断、業務の調整、人間関係の調整、金銭管理、実際の廃業手続き…。これをすべて一人でこなしたのは、小笠原さんの大きなアピールポイントですよ。どんなことも乗り越えられる、やり切れる自信がついたのでは?
はい。ちょっとやそっとの苦労は、厭わない自信があります。…しかし、このことが自身の売りになるとは、思ってもみませんでした。

覚悟を持って、家業を継いだ。そして現場からたたき上げて、経理実務を一人で身につけた。残念ながら家業を畳むことになったが、廃業手続きをすべて一人でやり切り、自信もついた。これらの経験を、貴社の経理業務で活かしたい。そのために簿記の勉強も続けている…。今教えていただいた一連のことを、自己PRとして簡潔にまとめましょう。すごく筋が通っているし、小笠原さんという人の魅力が伝わります。一度会ってみようと考える人事担当者が、ぐんと増えるはずですよ。
なるほど、面接の機会が増えるのはありがたいことです!…ただ、今までに、3社の最終面接に落ちているんですよね…。高卒であることが響いているなんてこと、ありますか?例えば、ほかの候補者と比べて、そこがネックになって落とされたとか…。
小笠原さん!もっと自分に自信を持って!小笠原さんは笑顔がとてもさわやかだし、話し方もハキハキしていて快活です。第一印象で好感を持たれるタイプだから、本来ならば面接でこそ強みを発揮するはずなんです。それでも落ちてしまったということは、今までの面接では小笠原さんの自信のなさが見えてしまい、企業側もあと一歩の決断が下せなかったのでしょう。これからはもっと胸を張り、堂々と自身の経歴をアピールしてください。それだけの経験を積んできているのですから、コンプレックスを感じる必要は全くありませんよ。
わかりました。今度こそ自信を持って、選考に臨みます!
一生懸命自己アピールしていたつもりが、伝わり切っていなかったんだと気付きました。自分にしかない経験を、もっと伝えるべきですね。周囲の人とは経歴が少し異なることを一番気にしていたのは、自分自身だったのかも。もっと自信を持って前向きに取り組みます。(小笠原さん)

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