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(株)リクルート 門野友彦 1985年リクルート入社。企業内教育研修などの営業、企業向け組織人事コンサルティングを担当した後、リクナビNEXTの前身であるリクナビキャリアや、スカウトシステムの開発、運営に携わる。現在は、新たな人材マッチングサービスの企画・検討に注力。転職活動カウンセリング経験も豊富。 |
2009年4月1日

![]() 三好孝明さん |
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食品メーカーで営業を務めて20年。新規開拓営業を中心に手掛け、マネジメント経験も積んだ。このほど外資系企業に転職が決まり退職したが、金融不況の影響による日本法人の撤退で白紙に。やむなく転職活動を始めるが、ほとんど書類選考の段階で落ちてしまう。 | |
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新卒で入った食品メーカーで、20年働いてきました。ずっと営業畑一筋で、卸会社向けの営業だけでなく、ここ数年は新しい販売チャネルの開拓などにも注力してきました。マネジメント経験もあるし、営業力にも自信を持っているのですが、書類選考すら通過できないんです。
では、応募書類を見てみましょうか。なるほど、新規開拓を中心に頑張ってきたということ、そして数字を着実に挙げてきたことは伝わりますね。いま、どういう業界に応募しているのですか?
同業界の求人は少ないため、原料メーカーなど関連する業界の営業職にも応募しています。顧客とコミュニケーションを取り、課題を見つけて解決策を提案するという営業スタイルだったので、それを活かせそうなところを中心にアプローチしています。でも、なかなか先に進めなくて…。食品業界の経験しかないので、応募できる企業も限られてくるし、困り果てています。やはり年齢がネックなのでしょうか。
このご時世、年齢がある程度ハンディになるのは仕方ありません。同じ経験者の応募だったら、20代の人を採用するという会社は、どうしても多いと思います。ただ、20年も営業で頑張ってきたんですから、年齢のハンディを打ち消すぐらいのアピールポイントも持っていらっしゃるはず。まずは三好さんが今まで何をしてきて、何が売りになるのか、整理してみましょう。今までのお仕事内容を、もう少し詳しく教えてもらえますか?

はい。卸会社向けのルート営業が主体の会社ですが、それだけだと売り上げは頭打ちになるので、この10年ほどは新しい販売チャネルの開拓に積極的に取り組んできました。卸会社を飛び越えて流通会社と直接やりとりしたり、同業他社にPB商品の生産を持ちかけたり、さまざまな可能性に挑戦しましたね。
なるほど。こう直接お話をうかがうと、三好さんはご自身の経験に自信を持っていると感じます。でもそれが、書類からはあまり伝わってこないですね。
え?そうですか…?
新しい販路開拓に注力し、会社の売り上げに貢献してきたこと。転職したら御社でもチャネル開拓に注力して業績向上に貢献できること。この2点を前面にアピールしてはどうですか?
実は、先日ある食品メーカーで書類が通りまして、面接に臨んだんです。そして今、Dr.門野がおっしゃった「今までの経験を活かして、御社においても販路拡大に貢献できる」ということを実際にアピールしてみたんです。そうしたら、「うちの会社は販路が違うから難しいよ」と言われ、何も返せなくて。このアピールは的外れだったと痛感したんですよ。
いやいや、そんなことはないですよ!三好さんが新規開拓に注力していることは、現状の応募書類であっても、中身をじっくり読めばわかります。そのうえで、面接に呼んだんですから、的外れなんかではありません。おそらく「販路が違うから難しい」との否定的な言葉に、自信を持って「新規開拓という共通点があるので、御社においても力を発揮できると思います」などと言い返してほしかったんだと思いますよ。新しいチャネルを開拓してきたんですから、「販路が違う」なんてこと、何の問題もないはず。そこを「できます」と言い切れなかったことが、敗因です。
そうか…なぜそこで言い切れなかったんだろう。否定されたことでがっくりきてしまって、次の言葉が出てこなくなっちゃって。
もっと自信を持ちましょう。新しいチャネルの開拓は、そう簡単にはできないものですよね?
そうですね。まずは卸会社へのルート営業で培った人脈をベースに、そこからさまざまな情報をもらい、取り引きの可能性が少しでもあるところには飛び込みました。その結果、空振りも多かったですが、そこでも人脈を築いて情報交換をして、次の顧客につなげるようにしましたね。そうやって少しずつ、今までにない販売チャネルを一つ一つ作り上げてきたという感じです。まぁ、要は人と会って話すのが好きなんですよ。
なるほど、「人脈」か…。それはいいですね。その人脈を三好さんのアピールポイントにして、異業界にどんどん売り込んでいきましょう。
え、でも、食品メーカーの人脈ですから、ほかの業界では使えませんよ。だから応募先探しに困っていたんですから。
いや、そんなことはありませんよ。「食品メーカーの人脈に、食品を売る」という発想だと当然、ターゲットは狭まります。しかし、「その人脈自体が顧客になる」と発想を切り替えてみると、どんな商材にも当てはまりますよ。相手先は企業ですから、企業に売り込めるものならば何でもアリでしょう。OA機器でもオフィス用品でも、コーヒーベンダーでも、オフィス用インテリアでも、BtoBのものであれば、今の人脈をベースに売り込むことができますよね。BtoCにまで目を向けたら、保険営業だってあり得ます。
そうか…!そういう発想はなかったなあ。同業界か、それに近い業界ばかりに目を向けていたから、応募先がなくて困り果てていたんです。

転職活動を始めて3カ月ぐらい経つのに、応募社数が15社というのは明らかに少ないです。ましてやもう離職されているのですから、早く転職先を見つけるためにも、視野を広げてどんどん応募していきましょう。
わかりました。応募書類はどのように構成し直せばいいですか?
採用者側の目線に立ってみれば、たとえ営業経験が豊富であっても、異業界経験しかない人はやはり不安ですよね?その不安を払拭すべく、現在持っている人脈と、人脈を構築する力、そして新規開拓能力を書類の一番初めにアピールしましょう。
なるほど…!
職務経歴の前にサマリーとして、これらのアピールポイントを数行でまとめれば、採用担当者の目に真っ先に入ります。前職では、自ら新規顧客の開拓に注力し、10年間で○○社の担当者と人脈を築きました。新規開拓力、人脈構築力には自信を持っており、御社でも新しいチャネル開拓、売り上げ拡大に貢献できます――などとまとめれば、採用担当者の不安を払拭でき、「一度会ってみよう」と思ってもらえる確率が高まるでしょう。
わかりました。ただ、異業界に応募するのであれば、一社一社に合わせて自己PR内容を変えなければならないですよね。書類作成に時間が掛かりそうだなあ。
一社一社に合わせて自己PRを書き換えることは確かに大切ですが、それではなかなか応募数が増やせません。三好さんの場合は、アピールポイントは「人脈」「新規開拓」ですよね?これは、どの業界の営業にも通用するスキルですから、企業ごとにすべてを書き換えなくても大丈夫ですよ。8割方はベースを決め、あとの2割は、応募先企業が求めている人物像に合わせて書き換えるといいでしょう。
わかりました。早く家族を安心させるためにも、視野を広げてもっと数を当たります!
異業界だけでなく、企業規模が比較的小さい企業にも目を向けてみましょう。三好さんのように一から営業基盤を築いた経験は、特に営業力に欠ける中小企業では歓迎されるはずですよ。このご時世ですから、不採用になってもその都度落ち込みすぎないようにね。自信を失わず、前向きに臨めば、三好さんの人柄が伝わりますよ。
人脈を武器にするという視点はまるでなかったので、目からうろこです。確かに、前職で築いた人脈と、新たに人脈を構築する力には自信がありますので、そこをアピールしていきたい。業種を広げて、めげずにどんどん応募したいと思います。(三好さん)

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