まず同業の店で練習をして仮説を立ててみましょう
あなたが本気で北欧の雑貨を売りたいのなら、どうすればうまくいくのか、仮説を立てて考えてみることでしょう。僕が中学生のときにこんな先生がおりましてね。生徒からの質問にすぐ答えずに、「おまえはどう思うか考えてごらん」って聞き返し、「じゃあ、その仮説でやってみよう」と、必ず生徒に試させるわけです。中学生の僕にとって、「疑問に感じたら、まず考えて仮説を立ててみる」という方法を知ったのは衝撃でした。
ところが、大人になってもこれをちゃんと実践している人は、なかなかおらんのです。例えば、脱サラしてラーメン店を開きたいと、ラーメンチェーン本部の説明を聞きに行く人がいますが、それより土日にラーメン店で練習としてアルバイトをさせてもらって、1日に何人の客が回転して、業者はいくらで麺を納入しているか、実際に目で見て体験したほうが絶対にいいでしょ。そこで自分がオーナーになったらどうなるか、ある程度の仮説を立てることができる。
あなたも自分で店を経営するのなら、同業の店で練習をしてみること。そして、毎月の売り上げに関係なく必ずかかる家賃や光熱費を固定費というんですが、それがいくらかかるか、その金額から売り上げ目標や仕入れの原価率をいくらに押さえるかを計算する。2年ごとの更新料も毎月の家賃に換算しなくちゃいけません。そして、どんな商品をどんな人たちにどう売れば、固定費を払って売り上げ目標額になるかを考えないとならんのですよ。
僕が自由が丘で古道具屋をやろうとしていたころ、ちょうどバブル期で保証金1000万円以上なんて店舗物件ばかりでしてね。少しでも安い物件を探して、へんぴな裏路地にある家賃16万円の店を借りたんです。固定費は32万円。つまり、毎月32万円分を売り上げてからがゼロスタート。不便で人目につかない立地のハンディがあったので、隠れスポット的な特別感のある店として取材してもらおうと、いろんな雑誌に連絡したんです。あなたも安い物件を見つけたようですが、何かしら理由があるから安いわけで、それを逆手に取ってでも商売ができるかが大事なんですよ。
商売は時代の流れに合わせて先手を打つ
古道具屋だって、僕はいきなり始めたわけじゃありません。本をたどれば中学時代、勉強なんてどうでもいいくらいギターに夢中で、中学3年のときにはキャバレーのステージでギターを弾き、高額なステージ料をもらいましてね。仕送りがなかった大学時代はギター弾きや旅館のバイトをして、寮の食費以外を毎日郵便局に貯金していたんです。大学5〜6年目のとき、バイクを解体して組み立てて修理するスキルを身につけていたので、貯まったお金でバイク屋を開きました。
そのバイク屋で稼いだお金で、自由が丘に古道具屋を開業。そうやって1つずつ、自分がやれることを積み重ねていったんです。当時は解体業者が家を壊しては、軽トラック1台分のゴミを2万5000円で捨てとったんですね。僕はそれについて行って、アンティーク家具が解体現場から出てくるのを「はい!それ、僕のトラックに乗せます」と引き取った。なかにはすごい掘り出し物もありました。解体屋のオヤジには「処分してくれるのか、おまえいいヤツだな」って喜ばれる。そんな時代だからできた商売。今はもう古道具屋をやっても原価率6〜7割はかかるから儲からんのです。その時代に合った商売があるということです。
僕は古道具屋時代から、次は食のことで書く仕事をしようと、資料を集めて付箋をつけ、いろんなネタを書きためていた。そうやって時代の流れに合わせて先手を打ってきたからここまで来られたわけで、あなたの言う「貯金200万円でもなんとかなる」では、あまりに無計画で危険すぎると思うんです。もう少し慎重に仮説を立ててみましょうよ。