5年続ければ、見えてくるものがあります
私は、同じ仕事を5年やれば見えてくるものがあるんじゃないかと思っています。もちろん人それぞれなので、すぐに転職してうまくいく人もいますよね。でも私の場合、就職して2年間は戸惑いばかりで、3年目くらいからやっと慣れ、仕事というものがわかってきた。達成感を味わえるようになったのが4〜5年目。もっと器用な方なら、早く気づいたり決断もできるのでしょうが、私の経験からアドバイスできるのは、「5年は続けてみましょう」ってことです。
実は私も、なんとなくテレビ業界に入ってしまったタイプ。わからないことだらけの新人時代は、ただもうがむしゃらでした。不安になったり、「この仕事、向いてないんじゃないの?」と悩んだりしていました。失敗して落ち込んでいるときに、「まだまだ先があるんだから大丈夫」って、先輩に励ましていただくことはたくさんありましたが、この仕事を続けるかどうかは自分で決めることだと思って、誰にも相談せずに悶々としていたんです。
そんな新人時代は、不平不満も抱えていました。例えば、最初の仕事は夕方のニュース番組だったんですが、私の担当は、動物や食べ物に関する現場。「この猛暑で、動物園の動物たちもこんなにバテています」みたいなレポートをするわけです。その日のメインニュースとなる事故現場に行かせてもらえない。経験が浅いので、今考えれば当たり前のことなんですが、当時は「こんなレポートをするために報道をやってるんじゃない!」って不満を溜め込んでしまったんですね。そしてある日、先輩にそのことをこぼしてしまったんです。
つらさの先に達成感や満足感が待っている
するとその先輩から、「じゃあ、君に何ができるの?」って言われた。そのひと言で、はっと目が覚めたんです。「不満ばかりに目を向けてしまっていたけど、今の私が事故現場に行っても、きちんと伝える能力や技術はまだないんだ」って気づいて。それから、与えられた仕事はすべて一生懸命にやって、自分で満足できるレベルにまで高めなくてはと思うようになったんですね。
その後スポーツ担当となって、入社5年目にアテネオリンピックがあったんです。スポーツ選手にとって4年に一度の大舞台ですが、私も気合いを入れて、どんなことがあってもベストを尽くそうと現地レポートに向かいました。食事や睡眠もままならない環境と灼熱の太陽の中、選手と一体になるくらいのテンションで必死のレポートを続けた最終日、感極まって涙が止まらなくなってしまったんです。いきなり力が抜け、その後しばらくは、「燃え尽き症候群」になったんじゃないかというくらいでした。
そんな状態になるほど、仕事に情熱を傾けることができたんです。5年続けて、つらいことや悩んだことより遥かに上回る達成感と満足感を味わえた。初めて「ああ、この仕事をやっていて本当によかった。向いていたのかも」って思えたんですね。そんなふうに、どの道を進むべきかは、自分の足で踏み出して進んで行かないとわからないし、進みながら考えても遅くはないはずです。20代半ばで自分の道がはっきり見えている人なんて、そんなにはいないと思います。今は目の前にある仕事をやりながら、道を見つけてみてはどうでしょう。