「やりたいこと」と「適性」は違う
やりたいことにチャレンジするのは、いいことだと思います。ただしどこかの段階で、そのやりたいことが自分に向いているのかどうか、適性を見極めることが大切です。「やりたいこと」と「向いている」ことは違うことだと、知っておくべきです。
例えば僕がまだ22歳だとして、松井にライバル心を燃やしたとします。でも、僕に1円たりとも払ってくれる人はいないはず。「お金を払ってくれること」=「適性があること」なんです。
うちの会社に、制作をやりたいって入ってきた新人がいました。でも、彼女はいい作品が作れなくて、口角が下がりっぱなし。見るに見かねて、「つまらない作品を売らなきゃいけない営業の気分を味わえ」と言って、営業に異動させたんです。そうしたら、もうイキイキとして、成果は上がる、表情は変わる……「やりたいこと」と「適性」は必ずしも一致するものではないのです。
マスコミに憧れて、チャレンジしたところまではいい。どうしてもやりたいことは、一度チャレンジしないと未練が残りますから。でも、転職活動しても書類選考すら通らない状況ならば、評価してくれる人がいない、つまり適性がないということになる。そんな場合は、早くあきらめて、もとの道に戻ることがベストではないでしょうか。
頑張って評価されれば、仕事を好きになれる
マスコミの世界と、百貨店の世界は、共通点よりも違う部分のほうがずっと多いと思います。青いシャツを表現して誰かに伝えるにしても、百貨店の人であれば、「濃い青のシャツ」「深い青のシャツ」など、分かりやすい言葉を使うことが大切ですよね。でも、マスコミは多くの場合そうじゃない。どちらかというと「チベットの空の色のシャツ」って言ったほうが評価されたりするんです。多分、あなたは「濃い青のシャツ」と表現して、それによってお客様が望む商品を売って、喜んでもらってきたんだと思う。そこで評価されて、お金をもらってきたんだから、自分の適性はそこにあるのだ、と覚悟を決めたらいい。「自分にはマスコミは向かなかった」と分かっただけでも、転職活動は無駄じゃなかったと思う。
ここでキッパリ未練を断ち切る。前の業界に戻ったとしても「これが自分の天職」とわかったことで、今までよりも必死に打ち込めるし、必ず成果も上がる。頑張って、それが人に認められれば嬉しくなって、仕事が好きになる。僕も最初はAVという分野は好きじゃなかったけど、評価されたらだんだん面白くなってきたという経験があります。今は、会社を辞めてしまって回り道をしたと思うかもしれない。でも、10年のタームで見れば、間違いなく「いい選択だった」と思うようになれるでしょう。