スタープレーヤーを支える仕事も必要
優秀な同僚に気後れしてのまれてしまっているのですね。こんな時は、他の人もけっこう劣等感を持って対応していることがあるんですよ。後で、「なーんだ、みんな同じだったんだ」などと笑えるようになるかもしれません。
しかし、自分の能力が他のメンバーより明らかに落ちると自覚しているなら、まずは、あなたが何故メンバーに選ばれたのかを考えてみて下さい。他のメンバーたちの力が上であると、率直に認める「強さ」をあなたは持っているわけです。そして、そのようなチームの一員として選ばれたのですから、例えば「接着剤」「調整役」「点検役」などの役割をあなたは期待されているのかもしれませんよ。自分の持ち分は何か、どこを担当するかなどを見極め、その役目を果たすことが必要ではないでしょうか。
逆に、他のメンバーの優秀さに気圧されながら、背伸びしようとしてチームの調和を壊し、あなた自身の個性をもつぶし、最終的に萎縮してしまうとしたら、それこそ問題です。チームの中には、スタープレーヤーを支える仕事も必要。そのように価値観を変えることから始めましょう。常に自分が一等賞になる必要はないと割り切れば、現実に即応できるのではないでしょうか。
それぞれの個性が混じり合って組織は成り立つ
私自身も、劣等感を持ち続けた職業人生でした。女性が歓迎されない司法界の中でも、とりわけ男性ばかりの検事の職場。猛者ぞろいの男性検事のチームで仕事をすることも多く、力不足を実感する日々でした。その中で前向きに仕事をするため、チームの調和を大事にすること、自分にできることを見つけ出し、ささやかな仕事もこつこつとこなしていくことなどを心がけました。地味で根気のいる裏付け捜査も率先してこなしましたよ。誰もが花形になれるのではありませんから、目に見えない実績を積み重ねる意識が大事。
そのうちに時代の流れが変わり、女性を登用すべきとの方針から、民事局付に抜擢されましたが、今度は刑事と全く畑違いの世界。しかも、優秀な裁判官出身者の中で気後れすることばかり。ゼロからの出発でした。それでも夢中で勉強するうち、仕事がおもしろくなり、検事時代の社会を見る目が、民事の法律作りの世界でも役立ちました。せっかくの民事局の経験を活かすため、弁護士に転進したのですが、その初仕事が住専の不良債権の回収。民事と刑事の両方を経験した私には最適の仕事でした。
つまり、人間、最初からできることなどないのです。また、実力も人それぞれ。それらの個性が混じり合って組織が成り立っているのですね。あなたの個性や善さを発揮し、全体として調和して、新たなものを生み出す力になれたら、こんなにいいことはないと思いませんか。