文句を言わずに礼を尽くすのが最良の方法
確かに、課長の立場からすると面白くないだろうね。部下であるあなたのほうが優秀なのだから。だけど、あなたはひとつのことだけ、守ればいいんだと思うよ。それは、「課長に礼を尽くしなさい」ということ。たとえ自分より能力が低くても、立場が上の人であったら、絶対に口答えをしたり、悪口を言ってはいけないんです。図々しいと言われたら、「私、少し出過ぎましたでしょうか。大変失礼しました」と言えばいいんです。
何も、あなた自身を変えることはないんだよ。そのまま今の仕事を一生懸命していればいい。そうすれば、いつか引き抜かれて、この課長よりも上の立場になるでしょう。「出る杭」は打たれるんじゃない。引き抜かれるもの。でも、そうなったときに課長の恨みを買ってはいけないんです。もし、図々しいと言われて、あなたが「私は図々しくないと思います」と言い返したらどうなる?課長は腹を立てるでしょ。「はい、そのとおりです」と腰を低くしていれば、相手も怒りようがないわけです。
僕も若いころ、単独世界一周のレースに出るって話しても相手にされず、「できるわけないのに生意気だ」って言われていたんだ。僕の師匠が、一緒に回るレース中に亡くなったときも、「お前のせいだ」ってさんざん責められました。でも僕は絶対に反論しなかった。ひたすら黙ってた。ところが、単独世界一周に成功したとたん、僕を非難していた人たちの態度が、「こーちゃん、よかったね」って、一変したんですよ。それでも僕は「あんなひどいことを言ったじゃないか」とは言わない。「はい、ありがとうございます」と言っておく。それが最良の方法なんです。
自分に吹いた追い風を、つかめる実力を養おう
人の怒りというのは時間が経てば収まるんだ。でも、恨みというのは時間とともにつのるもの。人から恨まれることを避け、必要以上に注意を払わなくちゃならないんです。このことは、『論語』にも書かれています。「敬って遠ざけなさい」と。そうすれば、恨みを買わずにすむ。このことは、あなたがこれから生きていくうえでも、心に刻んでおいたほうがいいですよ。世の中にはいろんな人がいて、簡単に自分の思い通りにはいかないのだから。
スポーツ選手たちもそうです。100メートルを10秒台で走る人がどんなに偉そうなことを言っても、9秒台で走る人がいたら、明らかにタイムの上回る人が評価されるよね。そういう実力の世界を経験して社会に出た選手たちは、能力が低くても肩書の立派な人がたくさんいて驚くらしい。でも、社会で生きていく中で上司は選べないでしょ。だから、自分に追い風が吹くときを待てばいい。向かい風のときは、おとなしくして、無理に船を回さない。いつかチャンスという追い風が吹いたときに、その風をぐっとつかめる実力を養っておけばいいんです。
もし、あなたが課長の悪口を言ったり、文句を言ってしまったりしたら、「あの課長にして、あの部下だな」と、2人とも同じレベルで見られてしまうからね。そんなことをしたら、上から引き抜かれないよ。人はちゃんと見ているものです。クレームの多いクライアントを任されても、「望むところです」という気持ちで、文句を言わず、淡々と仕事をこなしていくことです。そんなあなたなら、否が応でも周りは評価するでしょう。大丈夫ですよ。