“辞書を片手”に作戦で会話してみる
3年間ほど、自分がアメリカで生活していたことを振り返ると、英語はできない、人見知りはひどいという状態で、よく会話が成り立っていたなあと思うんです。学校は行かずに現地での独学だったんですよ。向こうの人って道でジョギングなんかしていても、すごく気軽に周囲の人に声をかける。その一方で、答える場面では「イエスかノーかはっきりしろ」と言う。日本人ってすぐに「メイビイ」って曖昧にするから、向こうの感覚に慣れるまで、会話するのは恐怖でしたよ(笑)。
でも、こちらも意見を言っていかないと、いつまでもわかってもらえないし、圧倒されてしまう。そこで、自分が最初にやったことは、いつも辞書を片手に持つこと。相手に伝えたい単語を引いて指さし、ゼスチャーも加える。そうすると相手も辞書を指さして、わかりやすく話そうとしてくれるんですよ。辞書に載ってない単語は何度も聞き返したり、辞書がない時にはスペルを書いてもらって後で調べたり。そんなふうにずいぶんと努力して、やっと日常会話程度ならできるようになったんです。
言葉や文化圏の違いを言い訳にするのは逃げてるだけ
「わからないから」とか「しゃべれないから」って尻込んでしまったら、英語を話す相手すべてが苦手になってしまう。だからこそ、「積極的にしなきゃ」って言い聞かせながら、やり続けるしかなかった。本気で知りたい、伝えたいんだっていう一生懸命さが出ていれば、相手も同じような態度になるんです。やさしい単語に言い換えてゆっくり言ってくれるとか、それを繰り返してくれるとか。「英語が苦手だから誤解や行き違いが多い」って言うのは、単に逃げてるんだと思うんですよ。
知りたい、伝えたいって気持ちさえあれば、後はサッカーという共通言語があったので、何とか通じるんです。あなたも同じ仕事をしている相手なのだから、共通言語があるはずです。自分の場合、最初、監督なんて白板のボードに丸印を描いて、「This is you.」ってその丸印を指す。英語はたったそれだけ(笑)。あとはペンで自分の動きを描くことでわからせようとするんです。わからない時はチームメイトに聞いたり、実際にチームメイトの動きを見ながら「ああ、こうすることなのか」って理解したりしてました。
あなたにも会社にチームメイトがいるのだから、自分で全部やろうとしなくていいと思う。英語が話せる同僚とかに助けてもらうこともありだと思います。自分はすぐにチームメイトで仲のいい友人ができて、彼女から自分が言えないことを監督に伝えて助けてもらったことがありました。彼女はアメリカ人だけど、カナダに住んだこともあって、フランス語も話せた。彼女を見ていると、人をつなぐのに必要なのは「あなたと仲良くなりたい」という気持ちだけで、文化圏が違うことや言葉が壁になるなんて全然ないんだと思いました。そんな彼女を通して、自分も他のチームメイトと仲良くなったし、その周りのいろんな国の友人ができて、すごく楽しかったんです。あなたは、ただ焦って、一人で自分にプレッシャーをかけてるような気がします。周りの人に話してみることも、助けてもらうことも大事だと思いますよ。