自分なりの営業スタイルを確立したいと思い続けて数年。毎月１〜２万円もかけて、『できる営業マンになる方法』といったような自己啓発本を買ったり、セミナーに通ったり。努力はしているつもりなんですが、なかなか勉強が身につかず、営業成績にも結びついていないんです。だんだん、自分を変えたいと思うパワーも保てなくなってきました。こんな情けない自分を叱ってください！（営業・30歳）

そんな勉強はもうしなくていい

いい大人になってさ、何やってんの。こういう勉強はもうさんざん学校でやってきたんでしょ。それでもまだ勉強したいんだったら、ずっとお金払って大学でも大学院でも通い続けてたら？　社会勉強はそういうものじゃないでしょ。

自己啓発本を読んだりセミナーに行ったって、人の歩んできた道筋を見たり聞いたりしてるだけ。役に立ちゃしないって。それを聞いて引き出しに入れておくだけならいいよ。入れておいたものを後々取り出して、自分流にアレンジできることはあるからね。すぐに活かせることは、多分ないと思うよ。だって、他人の過去の話だし、自分とは違うんだから。

僕も講演会では、いつも「これは僕の人生の話であって、あなたたちには関係ない。参考にも何もならない」って最初に断っておくんだよ。ただ、こういうことをやってきたヤツの話を聞いて、自分も何かやってみようと感じ取ってくれればいいと思って話してるだけなんだよ。

あなたはさ、人様の過去とか文献とか、そんなことばかりに目が向いてる。そういう勉強をすることで逃避してるんだよ。そんなことはもうやらなくていいんだって。仕事のやり方じゃなくて、人と会って、人の生き様ってものをもっとたくさん見てみることだよ。その辺の営業マンの小賢しい真似なんかじゃなくてさ。「すごいなコイツ」って人にも会って話してみる。たくさん人と会って経験を重ねていけば、生きるための勉強になるんだから。

すべては人を通して学ぶこと

この年になってつくづく思うんだけど、やはりすべては人なんだよ。僕も昔は馬鹿なことをさんざんやったけど、それがあったからこそ、今ここに来ることができたんだな、って思うんだよ。それはすべて人を通して学んだこと。あなたも人を好きにならなきゃ。

僕は巨乳の女の子だけで20年やってきたけど、確信なんてずっとなかったからね。何とか生きていこうとやってきた。社員が１人か２人の時でも、食わしていかなくちゃ、って必死だったわけ。家族は多少の不義理にも目をつぶってもらえるけど、社員は他人。不義理をしたらどこかに行っちゃうからさ。一緒にやってほしくて頑張るわけだよ。でも、やり方は苦し紛れの思いつきだったんだ。

たとえばね、お金って簡単に機械から借りるけど、返す時は人間が取り立てに来るんだよ。そこで居留守使っちゃダメなの。「すいません！」って言えばいいの。機械じゃ謝ったって聞いてくれないけど、人間なんだもん、逃げないでこちらから出向いて話してみればいいんだよ。

いろんな仕事があるけど、誰も同じ人間だし、同じ日本人。言葉は通じる。ただ、仕事の手段が違うだけ。脅かしてカネもらう商売もあるんだよ。イヤな話ができるのも人間だから。そういうことも、本を読んだだけじゃわからないでしょ。

どうしても本から勉強したいんだったらさ、役に立つのは「漢和辞典」「四字熟語」「ことわざ辞典」だね（笑）。中国から始まる歴史や人の生き様が、ものの見事にすべて入ってる。僕たちは東洋人なんだから、東洋のことを深く知れば気づきがあるんだよ。そこからひとつでも興味のある言葉があったら、裏を調べる。すると初めて理解ができるんだ。僕はうちの女の子にも辞典を渡してるよ。

10年以上前に読んだ徳川家康の小説も、今また読み直して「なるほど」と納得してるとこだよ。自分の引き出しに入れたものは、10年くらい経たないと活かされてこないからね。自分の中にいったん入れ、熟成させてから使うんだよ。目の前に置いて、すぐ使おうとしたって無理なの。あなたも貴重な時間とお金を使って、セミナーに行ったのだから、熟成させていつか元くらいは取りなさいよ。