大丈夫!同じ失敗を二度はしない
今は仕事がまともにできない状態なんだね。でも、大丈夫。ミスをしない人なんて、世の中にいないんだから。みんな何かしら失敗をして痛い思いをしている。そう考えるようにしようよ。そして、1回失敗をすると、全く同じ失敗はしないようになるんだ。あのね、僕もボクシングを始めてから、すごい失敗というか、挫折をしたことがあるんです。
初めての世界タイトルマッチの試合で、1ラウンド、たったの34秒でKO負けしちゃったの。これって、フライ級世界戦の最短記録。北海道にいる僕の親が初めてパスポートを取って、日本のファンの人たちもタイのバンコクまで来てくれて、みんなで「頑張れ!内藤」って応援してくれる中、試合開始のゴング直後にぶっ倒れてんの。僕はもう、みんなにどうしようもなく申し訳ない気持ちでいっぱいで、自分のことをずっと責めてた。しかも、ネット上に「日本の恥 内藤大助」とまで書かれたんです。
試合後、僕はショックから立ち直れずに、1週間くらい眠れなかった。薬を飲んでやっと寝つけるような状態だったんです。周りの人に「よくあのとき、ボクシングをやめなかったね」と言われるけど、「恥かいたままやめられるか!」と思ったんだよね。「冗談じゃねえ」って。一生、赤っ恥背負いながら生きるなんてイヤでしょ。だから、少しでも汚名返上しようと。そこからなんとか、ここまで這い上がってきたんですよ。
この僕よりはマシだと思ってほしい
もちろん、2回目の世界タイトルマッチのときは恐かったよ。34秒よりさらに短い時間で負けたらどうしようって不安でいっぱいだった。しかも、相手は1回目のときと同じチャンピオンだったからね。緊張したよ。でもさ、そんな過去の失敗に囚われていたらいけないって、開き直ったの。「今度は34秒より長く、1ラウンド以上は持たせればいい。そうすれば、とりあえず汚名返上はできる」。そう考えたんだ。結果、試合中のケガのために負傷判定で負けてしまったけど、7ラウンドまで持ったよ。
僕の話、今のあなたと比べてどうかな。「日本の恥」とまで叩かれたときの僕よりは、自分のほうがまだいいとは思わない?少しは気がラクになるでしょ。だから、僕のことを思い出して「日本中に恥をさらしたわけではないし、私のほうが少しはマシじゃん」って、開き直ってほしい。転職するにしても、少しでも今の職場で名誉挽回してからにしようって思ってほしいな。
僕は、中学のころにいじめられてたのね。だから、いじめられっ子たちにも「強い心を持て」じゃなく、「俺だって貧乏だったし、片親だったし、こんなふうにいじめられてたんだ」って話して、「内藤より自分はマシだから」と勇気を持ってもらいたいんだよ。そんな僕でも克服して強くなれたんだからさ。あなたもいつかきっと、「自分も失敗したことがあるけど大丈夫!」って、人に言える日が来る。失敗した後輩の気持ちがわかる先輩になれるよ。