出世は手段であって目的ではありません
今のあなたに必要なのは、いきなり見えなくなってしまったという、“目標”について考えてみることでしょう。本来出世することは、何か目標を達するための手段であって目的ではないはずです。手段と目的が逆になってしまっているんです。なぜ今の会社に就職しようと思ったのか、何をやりたかったのか、自問自答することが重要だと思います。
例えば、あなたが思い描いている事業を会社で成し遂げるという目的があるとしましょう。出世しなくては事業に着手できないのであれば、先に出世した同僚が辞めて起業しようが、あなたには関係はないはずです。今の会社で働く意味が明確になっていないから、周りのことが気になって動揺してしまうのではないでしょうか。
出世競争に一生懸命だったことを悪いとは思いません。会社の仕事にやりがいを感じているのなら、迷わず出世を目指されればいいでしょう。ただ、そこが自分の人生を懸けて競争したいフィールドであるかが大事です。とりあえず目の前にあるグラウンドで1番になろうという考えだと、1番になった瞬間に目標がなくなってしまいます。また、社内で尊敬されたいからとか、大学時代の同期の中で一番早く管理職になりたい、といった単純な理由だけで出世競争に勝とうとしても、長く続けるのは辛いでしょう。
これを機に働く意味をクリアにしてみよう
起業する同僚がうらやましいとのことですが、まだビジネスが始まったわけではありませんよね。彼の実力が問われるのはこれからです。会社を辞めるというのは誰もが持っているオプションです。しかし一度、そのオプションを行使してしまえば、会社には戻れません。辞めた翌月から仕事のプランがあるか、その準備が整っているのかが重要になってきます。
私の場合、尊敬していた作家の方たちが新聞記者出身だったので、小説家になるという目的を持って新聞社に就職しました。退社後はすぐ小説家になれたわけでなく、フリーライターをしていましたが、苦労の連続。フリーは会社の看板がなく、取引先に信用してもらうのに根気も時間もかかる。失敗しても会社が助けてくれるわけではないし、経費だって自腹です。支払いを先延ばしにされることもありました。会社を退社して十数年間はそういう状態。外で道を切り開くというのは、たやすいことではないと思います。
退職や起業はしなくても、こうやって疑問を持ったことを機に、あなたにとっての働く意味とは何か、働くことは生活の中でどのくらいの価値があるか、そしてご自身の人生の目標は何なのか、考えてみるのはとてもいいことだと思います。世の中の価値観はどんどん多様化して、課長や部長になるばかりが目標という時代ではなくなっています。仕事に打ち込む人がいる一方で、仕事は仕事と割り切って土日のオフを優先する人もいる。そのうえでやはり出世を目指すのか、もしくは自分らしく生きる方法を見つけるのか、ここで一度クリアにしてみてはどうでしょうか。