今いる環境や仕事を好きになるほうが容易
ダメな人ばかり残っていることよりも、「どうしても一緒に働きたくない」と思う人が側にいるのだったら、辞めたほうがいいと僕は思う。特定の人が原因で退職して、その人がいない転職先では、伸び伸びと仕事ができることはあり得るからね。だけど、仕事や組織に関して「あっちのほうがいいかも」といった気持ちで転職するのだったら、今の会社で働いていた方がいい。
なぜなら、仕事や組織って、どこもそれほど大きな違いはないものだと僕は思うから。仕事や会社の良し悪しよりも、自分自身が仕事や会社をどう思うかという、好き嫌いの振れ幅のほうが大きいんだよ。つまり、今以上のものを新たに見つけるより、今やっている仕事を好きになることのほうが、遙かに簡単なことなんです。より幸せになるために、あなたが今いる環境や仕事をベターに変えていくことができなければ、どの会社に行っても同じことなんです。
仕事量が多いことはより良い仕事への近道
仕事の負担に耐えられないと言うけれど、負担は大きいほうがいいと僕は思ってます。ゴールドマン・サックスに勤めていた時、他社では、デリバティヴ(金融派生商品)を扱うベテランが大勢いるのが常識だったのを、僕の会社は後発にもかかわらず、若い未経験者ばかり、しかも少人数でチームをつくった。そのことで、一人当たりの仕事量が増え、いろいろなことが早い段階でキャッチアップできたんですよ。
仕事って、やればやるほど経験値が上がって、その道にも詳しくなる。さらに結果が出ることで、より多くのことを見渡せる仕事を任される。だから仕事が多いことは幸せ。喜ぶべきことだと思うんです。
あなたも、忙しい状態が、自分に力をつけてより良い仕事や給与が上がる近道と思えるように、切り替えてみてはどうだろう。仕事は工夫して続けていれば、だんだん上手くなるものだし、上手くなれば好きになってくるはずだよ。もしも、どうしても今の仕事が好きになれないと言うのなら、自分より不幸そうな人と話をしてみるのも効果があります。人間って、自分より不幸な人の話を聞くと「この人より自分はましだ」と安心するものだからね。
それには、仕事をX軸、組織をY軸に取って、あなたの幸せを表す座標を書いてみるといい。どちらもマイナスに感じていたら、いろんな職種のたくさんの人から話を聞いて、「この人よりは自分の方がいい」とサンプリングして次々と書き込んでいく。すると、自分の座標が次第にプラスの領域へ移動して、最初よりいい位置と思えるようになるかもしれない。カーナビだって、周辺の地図を見るから自分の位置が確認できる。車の中にいるだけじゃ、わからないでしょう。自分が幸せかどうかの現在地点は、自分の視点だけでは、わからないものです。