若い人の空気に触れ、感化されてしまおう
できることは、ふたつあると思うんです。ひとつは、若い子たちと話をしてつながる時間を持つこと。どうしても、仕事をしてキャリアを積んでいく過程で、同じような立場の人や、より上の人と付き合おうとしてしまいますよね。それもいいけれど、若い人たちの考え方を吸収したり、流行り廃りを知るのも大切なことだと思うんです。流行を追いかける必要はないけれど、自分でマーケティングをしてみるという姿勢は大事なんじゃないかな。
役者という仕事柄、僕の周りには若い子がたくさんいるんですが、しょっちゅう自分から声をかけて食事に連れて行ったり、悩みを聞いてあげたりしてますね。年齢を重ねていくと、若い子に舐められまいと「あいつはまだ青二才だ」みたいな言葉を吐いて、なじまないようにしてる人が多い気がするんです。でも、逆に僕なんかは、若い子の芝居から「こういう感性もあるんだな」と、学び取ろうとしますね。若い空気に触れていると、必然的に自分のファッションも変化してくるし。
そうやって、嫌がらずにどんどん感化されてみることですよ。むしろ楽しんじゃう。もちろん、真面目に仕事や家族に向かうのも非常に素晴らしいことだけれど、それのみだと、音楽やファッションに対する感度はストップしてしまうと思うな。あなたもどこかの時点で止まったまま、今の流行のことがよくわからなかったりするでしょ?昔の好みから変化したものを身につけられるようになったら、同窓会に行っても「オヤジっぽい」とは言われないと思うんですよ。
若い子たちとは、慣れていないと話しにくいかもしれないけれど、言葉遣いをきちんとすればいいんです。隙を与え過ぎると調子に乗って不愉快な発言をされますから。「おい、おまえ」とかじゃなく、せめて「君、こうだよね」といった言い方をする。僕は若い子に対しても敬語を使います。そうすると、相手もこちらに敬意を払って話を聴くんです。自分が培ってきた殺陣のやり方なんかは率先して教えますね。技を継いでもらうことも大事だと思うんですよ。キャリアを積んでいる人って、自分だけの秘密にしてしまって、若い人たちにノウハウを教えたがらないことが意外と多いんですよね。
自分にとっての幸せに対して強い意志を持っているか
そして、もうひとつアドバイスできるとしたら、自分を維持しようとする意志を持つことかな。僕は長年、1日1食主義を実践しているんです。痩せようとしてやっているわけではなく、夕方1食だけにすると、それに合った胃の状態になるから自分もラクだし、結局、3食より体調がいいとわかったから続けている。もちろん、人間なので美味しいものは食べたいし、仕事で旅番組などに出ていい料理が3食続くと、次もまたほしくなりますよ。でも、そこは意志の力。抑えられるか、流されてしまうかはすべて自分の意志次第ということです。
「京本さん、ずっと変わりませんよね」とよく言われるけど、自分でオヤジっぽくなった、オバサンっぽくなったと嘆いている人は、ご飯を食べてすぐ寝ちゃったとか、絶対にしてるでしょ、よく自分で振り返ってみてよ、と思うんです。「先週は食べないで我慢したんだけどさ」って言っても、今週は食べている。つまり、大事なのは自分にとっての幸せは何かをちゃんと追求できているか、幸せに向かう強い意志を持っているか、ということ。オヤジとかオバサンと言われてへこむと、気分も顔つきも悪くなるけど、逆に「今日はいい顔してるね」って言われれば、その日一日気分がよくなる。毎日そのいい気分でいるために努力できるかは、その人の意志で決まるんです。