言いたいことがあるならそれに集中する
ズバリ言わせてもらうと、あなたは人の目ばかり気にして、本当に言いたいことがないんだよ。話の輪に入ろうなんて考える以前に、「何で発言するか」の方が重要でしょう。肝心なのは、話の輪に入ることじゃないはずだよ。
プロジェクトでも会議でも、その内容に対してあなた自身が真剣に考え、異論を持ったり、言いたいと強く思うことがあれば、周囲の人たちを自分に引き寄せるくらいのエネルギーを持って、発言できるはずなんだ。多分、あなたは「話すこと」に重点を置きすぎで、会議の内容そのもののほうに情熱を持っていないんだと思うよ。それじゃあ仕事に対しても本気で考えてるかどうか、怪しいぞ。
もしも、言ってみたいことがあるのに、あなたの性格や思考がついていけないと感じるのなら、会議中は周囲との空間をすべて閉ざしても、自分が言いたいこと、それだけに集中してみようよ。自分がパフォーマンスするのは、本気で考えている時なんだと僕は思う。
僕は、常に誰かに何かを伝える芝居を仕事にしてるからね。演出家が言うことを違うと思ったら、「僕はこう思う」と必ず伝えるし、演じることでわかってもらうようにもしてる。最後は、演出家と自分と、どちらがより言いたいことを持っているかなんだ。
しかも、現実にはない偽りの世界を、ホンモノのように誠心誠意で演じて見せることが仕事だから、舞台では本気で集中するしかない。僕にとって、人生のうちの9割は、この舞台に立つ1割だけのためにあるようなものなんだよね。日常生活はもちろん、マスコミに出ることも9割のうち。それだけ1割の舞台には全身全霊を賭けてる。だって、そのくらい自分が熱意を持って動かなければ、周囲のスタッフもお客さんも集まってくれないし、動いてはくれないよ。
周囲を気にせず自分を信じる
若い頃は、僕だって周囲にレベルが追いつかなくて「もうダメだ」と思ったことがあったよ。恩師から場を与えてもらえたけど、周りは実力あって面白い役者さんばかり。舞台経験のなかった僕は、どうしても勝てなくてさ。次第に周囲の空気も冷たくなってきて、口をきいてもらえなくなっちゃって。
そしてある日、もう才能も終わりだと腹をくくって、ふっきれた。「よし、これを最後の舞台に芝居を辞めよう」って。それで、頭の中をすっかり真っ白にして、即興で芝居をした。お客さんに受けてるかもわからないほど、舞台で初めて集中できたんだ。終わってから、「面白かったよ!」って褒められて、ハッと我に返った。周囲に変な気を遣わないで、ただ自分を信じて集中できたことで、僕は変われたんだよ。
どんな仕事でも同じなんじゃないかな。自分が引けちゃうのは、他人の目ばかり気にして、自分を信じきれていないから。いかに自分のやることを信じるかが大事なんだと思うよ。前に出ようとする気持ちよりも、ひとつのことを信じることが、前に出るためのエネルギーになることってあるんだよ。