イヤなことだってすべては過程
好きなことって、そんな簡単でラクちんにできるわけないじゃん。我慢しなきゃいけないこともいっぱいあるし。だから、コミュニケーションがうまくできないくらいで、辞めたくなるなんて聞くと、「本当に好きなことじゃないんだ」って私は思っちゃう。
10年やってもうまくいかないんだったらしょうがないと思うけど、まだ1年くらいで、うまくいくと思ってるなんて、甘いんじゃないの。自分よりひとまわり以上も年下から怒られたりしたら、イヤな気持ちになるかもしれないけど、それは、自分が遅く始めたんだからしょうがないじゃない。協調性があれば、年齢なんて全然関係ないはずだよ。
歌いたいと思って芸能界へ入ることができても、すぐ歌える訳じゃないし、やっと歌を出せたからって、売れるとは限らないでしょ。やりたいことのためには、イヤなことや思い通りにならないことも、いっぱい乗り越えなきゃならない。でも、「好きなことをやる」っていうのが、自分の優先順位のいちばんだったら、それは、我慢じゃないし、つらくはないよ。すべてそこに行くための過程だから。
私もイヤなことはいっぱいあったけど、歌はやめようと思わなかった。高校の時にね、女の子4人でバンドを組んでて、ボーカルをやってたんだ。高校では人気があって、バンドの顔として、いい時はちやほやされたけど、悪い時も私がやり玉にあげられてた。知らない人から根も葉もない噂も立てられたよ。
それでね、悪口を聞くと「なんでそんなこと言うんだろう」ってつらくなっちゃうから、「私のことを気にしてくれてるから言うんだ」と思うように変えたの。その人にとって、私が何の存在感もなくて印象に残らなければ、話題にはならないから。悪口を言うってことは、それだけ私のことが心を占めてるってことで、「いいことなんだ」と思うようにした。
それに、悪く思われてると、ハードルが低くなって、私がちょっといいことをしただけで「意外と普通でいい子なんだ」って言われる。だから、だんだん悪口や噂を耳にしても「しめしめ」って感じになったんだ。「言われた者勝ちだぞ。もっと話題にして」みたいな。
釘が錆びたらメンテナンスを
だって、学校に行ってても、仕事をしてても、楽しい方がいいじゃない。もし、大事なコップが割れちゃったら、「悲しい」よりも「買い換えるチャンス」って思った方がずっといいでしょ。そうやって、同じことでも考えようで良くも悪くもなる。ぼけっとしてもつらいと思っても同じ24時間なんだから、たとえ無理矢理でも、暗示にかけても、すべて楽しいって思いたいし、ずっとそうしてたら、本当に何もイヤじゃなくなっちゃうと思うよ。
せっかく好きな世界に飛び込んだのに、やりたいことの本題とは関係ない、これくらいのことで悩んでるヒマなんてないよ。クリエイティブな仕事って、私もそうだけど、自分が資本の自営業みたいなものでしょ。身体だけじゃなくて、考えてることそのものだって資本だと思うのね。だから、自信をなくさないように、釘が錆びてきたら取り替えるみたいな、自分のメンテナンスをいつもしていないといけないんだと思う。
それでも自信がなくなっちゃってるな、と感じた時は、「みんながわかってないんだ」「みんな遅れてるなあ」って、自分が都合のいいように考えてるよ。私はね。考えるのはいくらでも自由なんだもん。