




数多くのドラマ・映画で
活躍する北村一輝氏。
19歳で上京し、試行錯誤の末、
徐々にいい仕事に巡り合えたという。
どのようにして人気俳優と
なっていったのか。

反対して止まるようだったら、やめたほうがいい
俳優には小学校のころからなりたかったですね。でも俳優だけになりたかったわけではなく、内装業を営んでいた父の仕事の影響から家具職人になりたいと思っていた時期もありました。子どものころから部屋の壁紙を全部張り替えたり机やソファをつくったり、そういうことをいっぱいやっていたので。ただ、映画はよく観ていましたね。『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』にすごく惹かれて、主人公のインディアナ・ジョーンズみたいになりたいと思ったり……。時代も大きかったと思います。スピルバーグ作品をはじめとする80年代ハリウッド映画というのはとにかくすごかったですし、本当に夢があるような映画が多かった。そういう素晴らしい作品を観て育ったというところが大きいと思います。日本の映画では『蒲田行進曲』。中学生くらいの時に観て「やっぱりいいなぁ」と。そんな風にいろんな映画を観ていく中で俳優になりたいという思いが強くなっていったんでしょう。
その一方で、世界中を船で回りたかったという思いもあって。「ああ、海賊とか格好いいなあ」と憧れの気持ちがあったので、高専(商船高専)に進学しました。
いろんなものに触れる中でさまざまな可能性を自分で考えていて、その中でふるいにかけたのだと思います。その結果、一番なりたかったのが俳優だった。理由は一つには絞れませんが、純粋に好きだったんでしょうね、俳優が。それで19歳で上京しました。
周囲の反対ですか? 自分の人生ですからね。反対して止まるようだったら、やめたほうがいいと思いますよ。反対はみんなされるものですし「やめろ」と言われてあきらめられるのなら、好きではないということ。本当に好きだったら止まらないものでしょう? だから反対とか、僕はそういうのはあんまり気にはならないですね。
周りをどれだけ動かせる人間になるか、いつも考えていた
19歳で上京してもツテなんか全くない。だからまずは生活。食べることですよ。それですぐにアルバイトを決めることに。上京一日目は失敗したけれど、二日目で飲食店のアルバイトを決めました。その次は、寝る場所です。アパートなんてすぐ借りられないから、アルバイト先の店で寝させてもらうようにしました。その代わり時給は900円のところを500円で働かせてもらった。あえて時給500円にしてもらいました。まずは信用されることのほうが大事だから。それで時給500円で時給1000円以上の人よりも働きました。泊まらせていただく代わりに掃除も夜中に全部しておく。駆け引きではなく、本当にお世話になっていたので。だから自分でやれるだけのことはやりました。
そしたら店の人が「前借りするか?」と言ってくれて。でも「それはいいです」と断りました。それで、やっぱりちゃんと働いて……。そんな感じで働き続けて、時給もだんだん上がってきて、アパートを借りたのは上京して9カ月か10カ月後ですね。
でも時給500円で入っていたからこそ、時給が1000円になるのが早かったと思います。900円で入ったら1000円には簡単にならない。500円で死ぬほど働いていたから、「1000円にしてやろうか?」と言ってくれる。情ですね。そうやって人は動いていくんです。
立場もなかったですし、普通にやっても駄目だろうなとは思っていました。周りを動かせる人間にどうやってなるかということは、いつも考えていましたね。
そんななかでも俳優になれるという自信はありました。それはなれるまであきらめない自分を知っていたからです。でも、最初は事務所にも全然入れなかったから、エキストラから始めました。自分で営業もして。本当に立場がなかったから、そうするしかしょうがなかったんです。そのころは情報もなかったですから、事務所に入るために何とか必死でやっていました。
最初からプロダクションに入って、大きいチャンスをもらって、スターになりましたという人もいると思う。でも僕はタイプが全然違います。徐々に徐々に人に恵まれ、だんだん大きい仕事をさせてもらえるようになったというか……。
だから僕には転機とかそういうのはないですね。僕はもう、本当に「人」しかない。人とのつながりでここまでこられた。作品があって、プロデューサーがいる。その人が監督を紹介してくれる。そんなつながりが今までずっと続いています。



10月からは舞台『大逆走』が始まる。
真面目に生きているが、なかなか
うまくいかない男たちが出てくる話だ。
頑張っているのに
思うような成果が出せない人は
舞台の外にもたくさんいる。
そんな20代に北村氏は
どんなメッセージを送るのだろうか。

逃げるな。そこから逃げたら、また逃げる
20代は成功とか考えずにがむしゃらにやったらいいんじゃないかなと思います。いっぱい考えて、いっぱい悩んで、とりあえず何でもやってみればいい。失敗もしながらね。失敗したらやり直せばいいんです。20代は失敗しても、取り戻せる時期ですから。
今、うまくいってない人に何かアドバイスするとしたら、「逃げるな」ということでしょうかね。そこから逃げたらまた逃げますよ。辛いことはどこにいっても辛いままです。逃げたければ、それを乗り越えてから逃げたほうがいい。くせになるので。
結局、やろうがやるまいが自分にしか返ってこないってことです。後で笑いたければ今頑張ればいいし、後で泣きたければ辞めりゃいい。遊んでいたらいい。答えは自然と出てくるものだから。
後はもう、自分で考えるしかないんです。一人ひとりもともとの性格が違うんですから。例えば今、「どうやってやるんですか?」なんて聞く人は、成功できないと思うんですよ。自分で考えてやってみる。最初は10点しかできないかもしれない。次はもっと考えて20点とれた。そんな感じにどんどん自分で道を開いていくことが成功であって、人に聞いても成功はできないんだと思います。
答えはあるのではなく、自分でつくっていくもの
自分がこれまで守ってきたことをあげるとすれば、一番は感謝です。親から教えてもらったものです。「人に感謝することを忘れたら駄目だ」とか、人に対する礼儀とか。小さいころから教わっていたことですよね。でも若いころは親から教わったものだけでは駄目だと思ってしまう。やっぱり反骨心みたいなところもあるんでしょう。でも今はそれがすごく仕事に生きていたんだと思います。
あとは勇気ですね。持つのが難しいですか? 人ってどこに落ち着くか、この先どうなるかなんてわからないでしょう? なのに「どっちが正しいですか」なんて聞きますよね。そんなの誰もわかるわけがない。「まずその場所に入って、そこでどれだけするか」が答えなんですよ。答えはもともとあるのではなく、自分でつくっていくものなんです。
Aに行って失敗する人は B に行っても失敗するんです。Aに行って成功する人はBに行っても成功する。結局、「自分自身がどこまでやるか」ということしかない。どうなるかじゃなくて、どういう風に自分が行動するか、それだけです。自分でどうしていくかで人生は変わっていくものだと思います。


『大逆走』
いい年して大人になり切れないダメな男たちと、ひとクセある不思議な女たちが繰り広げる一夜の逃走劇だ。逃げる男たちを演じるのは、北村一輝、大倉孝二、池田成志。「演出家のイメージにどれだけ近づけていくかが大事」と語る北村氏。どんな主人公を演じるのか。そして物語の鍵を握る謎の女性を演じるのは、今回が舞台初出演となる吉高由里子という話題の舞台だ。
作・演出:赤堀雅秋 出演:北村一輝、大倉孝二、池田成志、吉高由里子、秋山菜津子ほか。
東京公演:2015年10月9日(金)〜10月25日(日)、会場:渋谷 Bunkamuraシアターコクーン 料金:S席10,000円 A席8,000円 コクーンシート5,000円
大阪公演:2015年10月29日(木)〜11月1日(日)、会場:大阪府 森ノ宮ピロティホール 料金:10,000円
- EDIT/WRITING
- 高嶋ちほ子
- DESIGN
- マグスター
- PHOTO
- 栗原克己


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